私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第208話

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ふた月は平穏な日々を過ごすことができることがわかった。頑として引き取りにくると言い張るの母国が『ベヒーモスが暴れても壊れないくらい頑丈な檻』の用意に手間取ったのだ。昨日、王都を出発したと地の妖精が教えてくれた。
その平和な時期に、アゴールは可愛い男の子を出産した。

《 ちっちゃーい! 》
《 カワイイー! 》

出産から十日後、アゴールの体調が回復してから赤ん坊を見せてもらいに行った。はじめての赤ん坊に、妖精たちは大喜びで赤ん坊の周りを飛び回った。ピピンから、無垢な赤ちゃんに触れるのを禁止されているからだ。
約束を破ったら『鳥籠の中に閉じ込めて倉庫の中に放置する』という罰を聞かされている。という期間が区切られていないため、一日かひと月か一年かはわからない。それもと言っているのだ。テント内ならまだいいが、涙石の空間と繋いだくらやみの妖精が作った空間の中に放置されたら、私は手を出さない。だって『私に知られていないはずの場所』なのだから。
助けてもらえないのを知っているから、誰も約束を破ろうとしていない。

「あれ? ダイバは?」
「仕事よ。父親になっても稼げないようなバカは家から叩き出すって母さんたちに言われたの」

笑って話すアゴールにフーリさんが頷く。

「アゴールったらもう仕事に戻るっていうのよ」
「じゃあ、ダイバに『アゴールを休ませたかったら、二人分しっかり働け~』ってお尻を叩いたら?」
「ああ、それはいいわね。アゴールを安心して休ませるにはダイバがアゴールの分も働けばいいんだわ」

アゴールのためだから、ダイバには頑張ってもらいましょう。
ちなみに、二人の周りにいたマイナス思考の男女たちは妖精たちからお仕置きをされ、ピピンとリリンに飲み込まれてマイナス思考を取り除かれた。
深~く反省した彼ら・彼女たちは、二人が改革した庁舎内を率先して維持している。次に二人が都長と補佐になったときに今よりも良くするつもりらしい。

「私たちに次の都長と補佐が回ってくるのって、順調にいっても二十年後よ」
「それでも、次に庁舎に入ったらまた悪い状態に戻っていた……なんてよりはマシじゃない?」
「そりゃあ、そうだけどな」
「……その前に、妖精たちが証拠を見つけて罰を与えるんじゃない?」

私の言葉にダイバとアゴールは顔を見合わせて息を吐き出した。

「やりすぎるなよ」
「一応伝えておく。たぶん、逆さ吊りにしたり。屋上から吊り下げたり。汚れた心をキレイにするつもりで巨大洗濯機に放り込んだり……」
「『それを受けたくなければ悪事を働くな』と言っておこう」

抑制力になりそうだが、妖精たちが聞いたら『お楽しみがなくなる~!』と残念がりそうだ。
そう話していたが、日次決算をせずに帰った部署は、翌朝は大掃除から始まる。妖精たちが該当者の机で遊ぶからだ。他の人達の机に問題は起きない。その代わり、課長や部長の机に開かれた帳簿が乗せられている。

『誰が何をのか』

それは言い逃れができない状態で部署内外に公開されることになった。もちろん、それで反省しなければさらに悪化する。
まず机とイスが廊下に置かれる。さらに机とイスが屋上に置かれる。そして机とイスが倉庫にしまわれた。
その職員は、仕事中に頭痛で苦しむようになった。薬も効かない。そしてストレスから抜け毛で苦しむようにもなった。

「妖精たちの罰じゃないか⁉︎」

そう言われたが、職員に関しては私たちはダンジョンに入っていたためそれはできないことが証明された。もちろん机とイスは妖精たちの仕業だ。それに関しては問題ない。

《 仕事をしない奴の机とイスはい~らない 》
「だってさ」
「そりゃあ、そうだな」

まだダイバが都長をしていたときの頃だったがダイバも納得していることもあり、妖精たちは自由に庁舎へ入っていた。
今は鑑定の魔導具が設置されていて、職員は出入りの際にチェックをしている。

「これで疑いが晴れるならありがたい」

職員たちにとっても、身の潔白が証明されるのだから喜ばしいことだった。
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