私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

文字の大きさ
上 下
194 / 789
第七章

第207話

しおりを挟む

『おバカなオツムの仲間ホイホイ』は毎日元気にを作りだしていた。

「エミリア。連中には治癒も回復も効果がないが?」
「できないようにしたもん」
「都長もまっ黒こげになったが?」
「おー。おめでと~。私やみんなの期待を裏切らずに手を出してくれたんだ~」

手をパチパチ叩くと苦笑された。

「それで、アレの国が身柄の引き渡しを求めてきた。都長は引き渡したいようだったが……」
「国の奴を呼び寄せて、アレと対面させて。『聖魔士くずれの成れの果て』がどんなものか。たぶん知らないんだろうなあ」
「ああ。都長も理解していなかった」
「それでも引き取りたいというのなら頑丈な檻の用意をしてこいって伝えて」
「ああ、わかった」
「ついでに捕まったバカたちとバカ都長も一緒に、エサ兼給餌係としてつけて送り出してやって」
「それは都長補佐が喜ぶな」

すでに都長の信頼は流砂の中に落ちてどこかに流されて行方不明だ。そして今回、追放という形で外へ放流しようとして真っ黒になった。
髪が焦げてチリチリになった男たちは、男の横の公開用牢屋で仲間が増えるのを待ち望んでいた。そこに都長が現れたのだから歓喜する者までいたが、都長でも簡単に許されないということを理解した今は大人しくなっているらしい。そして、都長が黒こげになってから追随する者は現れなくなった。……つまんない。

「よくあんなのを解き放とうと考えるよね~?」
「仕方がないだろう。『聖魔士くずれ』は知られてなかったからな。先に捕まった連中も姿を知らん可能性が高い」
「お望みなら一緒の檻に入れてあげるけど?」

同じ見世物用の檻に入っているが、仕切りがされているため、隣にいる男の様子はわからない。見せてあげたら、二度と解き放とうとは思わないだろう。

「今はやめておけ」 
「じゃあ、後でのお楽しみにとっておく。せめて『ご対面たいめ~ん』はさせたいもん♪」
「もし引き取りに来るなら、封印を解除してもらう必要があるからな。やるとしたらそのときだな」
「引き取りに来なくても楽しませやらせてね」
「わかってる……というより、アイツらはか?」
「まだだよ。私の『お楽しみ』が黒こげあの程度で済むはずないじゃん」
「…………やっぱりか」

私が笑っていうと、逆に脱力する守備隊隊長のシーズル。ダイバやアゴールと同じ竜人の彼は『頑丈さが武器』というだけあって、少年期にオーガのこんぼう攻撃を素手で止めるという荒技を見せたこともあるらしい。

「ところで、聖魔士の連中はなんか言ってきた?」
「言ってはきていないが……」
「ああ。には来たんだ」

シーズルの視線の先には黒こげ集団。総数二十一人。都長以外全員は外から来た連中だ。その中に聖魔士や依頼された者がいるのだろう。中から外が見えないから、彼らは自分たちが見世物になっていることを知らない。
全員が全身真っ黒で、チリチリの髪の毛というお揃いの姿。誰が誰だかわからない。それを面白がっている人たちは、最近の娯楽として『どれが都長か?』というゲームをしている。

「じゃあ、あとはよろしく~」
「ああ、任された」

交渉関係は都長補佐がするだろう。ひと月ほどは特にトラブルもなく過ごせそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います

菜花
ファンタジー
 ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

【完結】略奪されるような王子なんていりません! こんな国から出ていきます!

かとるり
恋愛
王子であるグレアムは聖女であるマーガレットと婚約関係にあったが、彼が選んだのはマーガレットの妹のミランダだった。 婚約者に裏切られ、家族からも裏切られたマーガレットは国を見限った。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。