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第七章
第204話
しおりを挟む超ド級砂嵐は、強風という形で影響をみせた時点から十三日かけて、ダンジョン都市をかすめて通り過ぎていった。
都市の被害は特になし。通常張られている都市の結界は『魔物よけ』。自然災害に効果はない。しかし外周部も一緒に守るため、結界石を置くという方法が取られた。
この国で砂嵐の被害がなかったのはダンジョン都市のみだった。大陸全体からみても、一切の被害がなかったのはダンジョン都市だけだ。
荒地から巻き上げられた砂も石も岩さえも、ダンジョン都市に被害を与えることはできなかった。結界を三重に張ったのも効果があったのだろう。
「ま~た、変な連中があふれているねえ……」
「今の都長が『いいカッコしい』だからな」
そう、一切の被害がなかったダンジョン都市に避難してきた人たちを『寛大な心』で受け入れようとしたのが都長だ。犯罪者排除の魔導具を止めてまで入れようとしたため、その場にいた全員から袋叩きになった。さすがに補佐の頭の回線はまともだったらしい。
「犯罪者は一人も入れないでください。なお、皆さんは避難民であるため、ここに一時的に滞在が許可されただけです。本来の住人に迷惑をかけた場合、全員が叩き出されることをお忘れなく」
実際に中へ入ることができたのは三割にも満たない。大なり小なりの罪を犯してきた者たちが多かったからだ。……特に貴族は。
彼らは外周部の外に滞在しているが、外周部には入ることができなかったのではない。すでに貧民街ができていたため、貴族が入り込める場所がなかったのだ。
まあ、自分たちは都市に入れると思って見下していたため、門で弾かれて入れなかった彼らは、さっきまで「地べたで這いずるムシ共が」と嘲笑った彼らと同じ場所にいることはできなかったようだ。
運よく中に入れた連中は最長三ヶ月という期限を切られているため、少しでも長く滞在できるように考え行動に移しだした。
「聖魔師の弟子にしてください!」
「店で雇ってください!」
「俺! 手先は器用です!」
「俺は聖魔士です! 他の連中より役に立ちます!」
全員、妖精たちに守備隊詰め所へと吹き飛ばされた。そりゃあ、もう……全力投球並みのスピードで。
「聖魔士なんて初めて見たよ」
「ああ。しかし、あれは頭に『自称』がつくな」
「口頭で言い張っても証明できないからな」
「私の聖魔たちはダメだよ。私と契約してるから」
私たち聖魔師と契約した聖魔は、他の聖魔師や聖魔士の頼みは聞かない。強制すれば逆に災いをもたらす。敵と見做されるからだ。
それは聖魔師や聖魔士だけでなく、一般の人たちも知っている。
「連中は明日にでも牢から出されるが」
「その前に、鉱石集めのダンジョンへ入ってこよっと」
「他にも色々な店に迷惑をかけているからな。『迷惑をかけたら全員を叩き出す』と都長補佐が宣言したとおりに動くだろ」
「……ついでだから、都長も一緒に出てけばいいのに」
「そいつは誰もが思っていることだ」
私の呟きに私服守備隊のみんなが大きく息を吐いた。
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