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第六章
第178話
しおりを挟む「……ちょっと、みんな。ニュースで『砂塵に帰した王都があり、その数三十を上回る』とあるんだけど?」
《 えー⁉︎ 》
《 八じゃなかった? 》
《 そうだよ。王都が八で王都以外で三十一 》
なぜか、増えているんだけど……
「内訳は?」
《 貴族たちの国も潰してきた 》
「だから多いのか」
それで納得した。とは言っても……
「王都を潰すのはやりすぎでしょ。いつもなら事前に警告を出すじゃない」
そう、この国でも繰り返し警告を出しても対応をしなかったため、王都は妖精たちによって砂にされた。以降は何度も砂にされている。
《 大丈夫。警告してないだけで建物を砂にしてきただけだから 》
《 そうそう。次は住人以外を吹き飛ばす予定だから 》
その吹き飛ばす中には、様々な財宝……国宝から貴族などの個人所有物までが混じっている。妖精たちが保管して、所有権放棄になってから私の収納ボックスの中か、倉庫と化している素材置き場に入れるのだろう。そして、素材置き場の管理はピピンやリリンがしている。私が錬金室に入っている時はピピンかリリンしか入れないため、部屋の外に残っている方がその時間を使って素材置き場の武具から素材を抽出している。
「最近、見覚えのない武具が多いんだけど?」
《 あー、アレね 》
《 砂漠や荒野に落ちていたのを拾ってきたんだよ 》
「あんなものが落ちているはずないでしょ」
《 けっこう落ちているもんだよ 》
《 そうそう。砂漠や荒野って、壊れた馬車やそれに積まれた荷物がよく見つかるんだ 》
「……そういえば、流砂で流された遺体がはるか先で見つかった事件が時々あるよね」
情報部のニュースは、主にダンジョン都市内部……最近は私や妖精、聖魔たちが関わったニュースが大半だ。しかし、国内外のニュースも取り扱っている。その中で多いのが、流砂に飲み込まれた行方不明者が何十キロも離れた場所で発見されたニュースだ。
《 地中にね、『砂の川』ができているんだよ。エミリアがいう流砂って、その砂の川が地上の砂をのみこんで表面化したものなんだ。止まって見ればわかるけど、移動していたらわかりづらいと思う。特に、表面上は砂が乗ってるけど、重さが加わればボコッて沈むんだ。たまに魔物たちものみこまれるよ。流砂でのみこまれた人は砂の川を流れていくんだ 》
「地下に川もあるんじゃなかったっけ?」
《 あるよ。でも、流砂と地下の川は別物だよ 》
妖精たちの話だと、この世界の流砂は川のように砂が流れているそうだ。
「……で? それで見つかるのは遺体だけ?」
《 だって、物は沈んだらそれっきり。浮かんでこないでしょう? 》
《 だから、私たちが見つけて拾ってくるの 》
《 それをエミリアにあげているんだよ 》
《 別に、拾ってくるのはそれ以外にもあるけどね 》
《 落ちてるんだもんねー 》
妖精たちは、王都を砂にして風で吹き飛ばしている。その時にフィールドで見つけた様々な物を拾ってきているのだろう。
……間違っていない。間違ってはいないし、詳細には妖精たちのことは出ないし、所有権放棄後に私が手に入れたことになっている。何か問題が起こりそうなものは、ピピンやリリンが真っ先に素材にしてしまうため、どんな装飾品についていたものかを知らなかったりする。
《 大丈夫だよ、エミリア。もし犯罪に関わるものなら、間違いなくピピンが教えてくれるから 》
光の妖精の言葉にピピンが上下に揺れる。
《 それ以前に、不正行為を行ったら、ピピンが触手で『おしおき』してくるから 》
《 うん。ピピンは怒ると…… 》
パッシーン!という音を立てて、ピピンが触手で床を叩く。
《 しない! 二度としないから! 》
「二度と……?」
私の呟きはピピンの触手が床を打ちつける音でかき消されたようだ。それでも白虎には聞こえたようで、「気にしないで」という風に頬を舐められた。
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