私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第六章

第177話

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「これを言われたときに八つ裂きにしたくなったんだけどね。アイツら、私を檻の中で飼うつもりだったんだぞ。全裸の私に着けた首輪に鎖をつけてペットのように四つん這いで王都を散歩させたいって。「金ならいくらでも払うからもう一度考え直してくれ!」と言われたんだけどさ。そんな『女を自分の嗜虐性と征服欲と性欲』を満足させる道具としか見ないバカに飛びついて喜ぶ女がいると思う? だいたい……妖精たちが許すと思ったの?」
「無理だな」
「アイツら。聖魔師テイマーと妖精の関係を使と間違っているんじゃないか?」
「それがさあ。断ったら「魔物との獣姦を許せば同意してくれるか?」とか「一緒に住める大きな檻を用意してやる」とか「足りないなら魔物を増やしてやってもいい」とか言ってきたバカもいたんだよ。……って、白虎は『心優しい女の子』なんだけど」
「…………それでよくで済んだな」

全員の脳裏に、妖精たちの反撃を受けた商人たちと貴族たちの姿が浮かぶ。
髪の毛がチリチリに焦げた者たち。頭頂部に一本から三本だけ残し、残り全部の毛を一本ずつ丁寧に抜かれた者たち。中には痛みで暴れた者もいたが、そいつらの髪は纏めて引っこ抜かれた。
その全員は、ズボンを半分くらい下ろされてお尻を突き出した状態でツタで吊られて、束になったツタで激しく『お尻ペンペン』されて泣いて謝っていた。……中には嬉しそうに泣いていた者もいたが、怪しげな趣味に開眼したか臨界の世界にでも達したのだろうか?

「みんなとは『何があっても殺してはダメ』って約束したから。……あっ!」

私の様子に、周りの視線が私に集中した。

「………………妖精たちが『五時までまだ時間があるから、ちょっとやっつけてくる』って……行っちゃった」

私の言葉で、全員が青ざめる。相手はこの国の貴族だけではない。国交問題になりかねないのだ。しかし、妖精たちにしてみれば、国交問題なんて関係がない。『敵か味方か』なのだ。

「いや、しかし……。『ダンジョン都市に手を出すな』って国内外に勅命を出してあるよな」
「『聖魔師テイマーに手を出すな』という大陸法に違反していたよな」
「…………自業自得、だよな」

警備隊と管理部の視線が交わり、ひとつの結論へと結びつく。『あとは国王に任せよう』というものだ。

「エミリア。とりあえず『殺すな』という約束はしてあるんだったな」
「……うん」
「今回のことは『殺さなければいい』としか言いようがない」
「手足をがれても……。まあ、妖精六人を敵に回したのに、よく生きてたなってところだよな」

震えながら言われても、聞いた方は更なる恐怖を感じるだけだ。

「……それにしても。バカたちの悲鳴が聞こえないな」
「……? 聞こえるはずないと思うよ。だって、妖精たちはを潰しに行ったんだもん」

私の言葉に全員の表情が青から白へと変化した。

「ちょっと待て、エミリア。アイツらがどこに行ったって?」
「バカな連中たちの国に」
「何しに?」
「潰しに」
「この大陸の、だよな?」
「んー? ……この大陸は後回し。まずは一番遠くの国から、だって」
「「「ヒエェェェェェェェ‼︎‼︎」」」

悲鳴をあげた者多数。他には絶句している者や眉間にシワを寄せる者もいる。頭痛がするのか、額に手をあてて大きく息を吐く者までいた。

「エミリア。今日はどこに入る気だ?」
「あ、もう五時?」
「もうすぐ、だ。妖精たちもそろそろ呼び戻しておけ。五時ちょうどに入れるようにしてろよ。バカ共が早朝なら警備が手薄になると思ってるようだからな」

スワットの言葉に受付に寄っていく。背後で「今の話は聞かなかったことにしよう」などと話し同意する声が聞こえた。


呼び戻した妖精たちは不満いっぱいだった。

《 あの大陸、あと一国で終わったのにー 》
「じゃあ、置いてくよ」

地の妖精以外はダンジョンの中に入れないのは確認済みだ。

《 えー‼︎ 戻るまで待っててよー 》
「や・あ・よ。そんなことしたら、今度は冒険者たちが絡んでくるじゃない」

そう。私に突っかかるのは貴族や商人だけではない。私の回数限定防御系アクセサリーを求めた連中が店を突撃し、私服守備隊と激突。私服守備隊は元冒険者だったため、あっさり鎮圧。連中はあっけなく気絶。サクッと守備隊に引き渡されて目覚めたら檻の中。
『連携』を覚えた妖精たちがを放っておくはずもなく……

《 冒険者をクビになって罪人になるんだから、その前にもいいよね~ 》
「……といってるが?」
「『妖精の罰』は俺たちに止める権限はないな」
「エミリアさんと違い、我々には妖精の姿が見えないんです。どんなことをしていても見えない以上、我々ではどうすることもできません。自業自得です。連中がどうなろうと我々には関知しません。我々が気にしないのですからエミリアさんも気にしないでください」
「まあ……連中には罰を受けさせる。けど殺すなよ。死んじまったら俺らのせいになっちまうからな。っつーことで、意識があって手足がついていれば何をしてもいいぞ」

そんなことを言っちゃったため、妖精たちは喜んで元冒険者たちに遊んでもらった。……元冒険者遊んだ、という方が正しいだろう。
元々、魔法で遊ぶ予定だったが、途中で『髪を一本ずつ抜くと地味に痛い』ことを知ったらしい。痛い思いをして全部抜かれる方がまだ良かった。というのも、妖精六人が遊びで抜いているため、飽きたり家に帰る時間になると途中でやめてしまう。妖精が抜いた部分は二度と生えてこないため、まばらな髪になってしまったのだ。あまりにみっともないため、坊主頭を希望するが、妖精たちは毛根自体も抜いてしまったため、短くした分目立つようになってしまった。
それを見て、妖精たちは『やる気』をだした。
二重丸や星型、三日月型にヨットに鳥居。そんな色んな形に髪の毛を抜いていくのだ。
裁判のために王都へ連行されていく彼らのヘアスタイルは、情報部が特集として取り上げたため、このダンジョン都市シティでは有名になった。
もちろん、「カッコイイ~!」という女性も「俺もマネしよう」という男性もおらず、王都までの道に笑いのタネをばら撒いていった。
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