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第六章
第175話
しおりを挟む「急に静かになったな」
「皆さん、今度は仕事抜きで来るんだって」
「そうだね。エリーやキッカたちは冒険者だから、ダンジョンに入りたかったみたいだよ。「次は絶対にダンジョンに入る」って言ってた」
そう、エリーさんたちは調査で来ていたため、ダンジョン都市での調査が終わると都市を去って行きました。
「そういえば、エリーさんやシシィさんは大丈夫ですか?」
驚いたことに、エリーさんやシシィさんに絡む男たちが現れたのだ。どうやら、私の店で並んでいる時にユージンさんが発した「そこらの男性より稼ぎが多い」というセリフを聞いた誰かから漏れたらしい。
「エミリアちゃんの苦労がわかったわ」
そう言ったシシィさんは、言いよってきた男たちを一撃で倒してしまったらしい。
「他国の王都守備隊の隊長に手を出すなど言語道断だ!」
男たちは守備隊の詰め所にある地下牢に入れられて、シシィさんのことを教えられると青ざめた。そして、シシィさんに泣きながら謝った。しかしシシィさんから「女みたい」と笑われて、フィシスさんから「だったら、女になってもらいましょうか」と言われてしまった。
たった一日で捕まった男たちは十八人。そのうち犯罪を犯していない十一人は男娼館へ。残り七人は以前にも同じことをしていたため、去勢されて女性にされてから男娼館に入れられた。
ユージンさんは失言を注意されたものの、買い物の代金を支払ってもらったこともあり、罰は受けずに済んだらしい。
「それで良かった、なんて言えないんですよ。エイドニア王国に戻ったら理不尽な罰が待っていたりします」
「……エイドニア王国?」
「はい、俺たちが所属している国です」
「……たしか、私の作ったものを代行販売してもらっている商人ギルドがエイドニア、というところだったはずです」
「え? ポンタのところで売ってるの?」
私の言葉に、エリーさんが驚きの声をあげた。
「えっと……。私、ここの商人ギルドと職人ギルドと揉めたんです。どちらも何度も。だから……」
「そういえば、エミリアちゃんを使って金儲けしようとした連中がいたわね。エミリアちゃんがレシピを公開していない商品があるから、それをエミリアちゃんに作らせて、売上のほとんどを奪い取ろうとした」
「何よそれ」
「元々、賄賂を貰ってたらしいです。それで私に冒険者を辞めさせて職人ギルドの作業部屋に閉じ込めて、毎日ノルマを設定して無理矢理作らせて、ノルマに達成しなければ食事を抜く。作らせた商品は貴族たちに優先的に売るって。それが嫌ならレシピを寄越せって。私の店もですが、貴族は入れないので買えないんです」
「それで、エミリアは両ギルドを訴えて抜けたんだ。どっちも大騒ぎになったな。よそのギルドマスターまで駆けつけて、集団で脅して。当時の記録ならエミリアが証拠として情報部に送ってたな。俺はここに来てからの情報はすべて残している」
「私も全部残してる。たぶん、この都市の人は全員残してると思うよ。自分が同じトラブルにあった時の対処法として。見たいなら後で送るけど、どうする?」
「あ、じゃあ送ってくれる? どんな情報でも必要だから」
ルーバーさんやミリィさんだけでなく、都市の皆さんが今までの記録を残してるのには驚いた。しかし、同じことを繰り返された時の教材に残すのは大事だろう。
「まあ、その中にはピピンたちの写真のために残した冒険者もいるだろうな」
「記事を消したら写真も消えちゃうからね」
情報部の出すニュースは、写真だけを残すことが出来ないので、そんな設定にしてるらしい。有料だけどバックナンバーを取り寄せることもできる。そういえば、ピピンたちの写真集が欲しいという要望があったらしい。
「もちろん却下しました」
ピピンたちの写真で儲ける気はないと、情報部は誓約してくれた。
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