153 / 789
第六章
第166話
しおりを挟むダイバとアゴールを頭とした警備隊と守備隊は、アウミを引き渡した当日には都市内に潜んでいた『アウミを探していた者たち』を捕縛していった。犯罪ギルドの捜索部隊が、アウミの回収に来ていたようだ。そのため、不審者を片っ端から詰め所に同行してもらったらしい。翌日からイベントということもあり、その行動は怪しまれなかったようだ。
もちろん、同行を拒否しても良いが、アウミを狙っていた連中は「ここで疑われるわけにはいかない」と思ったようだ。後ろ暗いことがなければ堂々とついて行く。そう思って大人しくついて行った。だいたい、イベント前の取り締まりであって、自分たちの『本来の目的』がバレるとは考えていなかった。
実はそこに、一つの目印があった。妖精たちが男たちの頭部に座っていたのだ。そのため『頭部が光っている男たち』を中心に集めていったのだ。彼らには、妖精たちが別の記憶を植え付けた。
「豪商が購入した少女はダンジョン都市には来ていない」
実際、荷物として隠されて入っていたため、門を通った記録はない。
そして、彼らをピピンが纏めて飲み込んだ。数分後に吐き出された彼らは善良な人間となっていた。彼らは犯罪ギルドでは捜索部隊に入っていたため、情報などを集める部署にいた。しかし、自分の情報でたくさんの孤児をはじめとした人たちを人身売買にかけて奴隷にしてきたことに深く後悔した。
「すべてお話しします」
そう言って、彼らは自身の知る犯罪ギルドの情報を自供した。そして、知り得る限りの顧客情報も自供し、顧客リストを持つ者は提供した。その中には貴族だけでなく、国の中枢に立つ要人……王族までいた。運が良かったのは、このダンジョン都市が属するこの国の王族は顧客リストに入っていなかった。
「なんで顧客リストなんか持ってんのよ」
「ああ。どの顧客がどんな人材を欲しているのかが書かれているんだ。それにあった人を見つけたらギルドに連絡すると実行部隊がやってくるらしい」
「そこには、年齢や容姿の希望、成功報酬まで書かれていました。一番多い要望は、聖魔師の捕獲です。次は白虎の捕獲。こちらは生死を問わず。妖精の捕獲などもありました」
アゴールの追加情報にカチンときた。
「……私の捕獲? 私って珍獣扱い?」
「たしかに珍しいですね。現在、この大陸には存在がわかっているだけでも一名。エミリアさんだけです」
「あれ? もう二人いなかった?」
「お一人は先日、無事に天寿をまっとうされました。もう一人は別の大陸に渡られました。バカな国のバカな国王が彼を手に入れようとして、船の使用を禁じたそうですよ」
「……禁じても、あの人って水の妖精がいるんだから、普通に水面を馬車でいけるよ? 風の妖精もいるんだから、馬車ごと飛んで運んでくれるし」
「はい。あっさり空を飛んで行ったそうです」
「あ~あ。さらに妖精たちに捨てられたー」
そう笑ったが、そんな甘いものではない。この大陸には私以外に聖魔師はいなくなったのだ。つまり、狙われるのは私一人。それも、全種属の妖精を連れているのは元々私だけ。亡くなったお爺さん聖魔師が連れていたのは地と水と火の妖精。大陸を去った男性も水と風の妖精だけだ。
「……エミリア。都市の警備はさらに厳しくする。守備隊の方も、今まで以上に強固なものとなるだろう」
「わかってる。ダイバたちは夕方からイベントなんだから無理しないで。こっちはイベントを回ったら家にいるから」
「エミリアさん。今回から毎日、最初の二時間はここの住人向け限定になっています。ですから、エミリアさんも毎日参加してお楽しみください」
「ありがとう。じゃあ、毎日回らせてもらうよ」
「コレが上手くいけば、定着させられるだろう。エミリアもこの都市の仲間なんだ。一緒に楽しもうぜ」
「そうだね。じゃあ、また夕方に」
私たちが一緒に楽しめるように。
そう、気を使ってくれるダイバたちに感謝して、イベント期間中は何も気にせずに楽しく過ごさせてもらった。
85
お気に入りに追加
8,060
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。