私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第六章

第166話

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ダイバとアゴールをかしらとした警備隊と守備隊は、アウミを引き渡した当日には都市内にひそんでいた『アウミを探していた者たち』を捕縛していった。犯罪ギルドの捜索部隊が、アウミの回収に来ていたようだ。そのため、不審者を片っ端から詰め所に同行してもらったらしい。翌日からイベントということもあり、その行動は怪しまれなかったようだ。
もちろん、同行を拒否しても良いが、アウミを狙っていた連中は「ここで疑われるわけにはいかない」と思ったようだ。後ろ暗いことがなければ堂々とついて行く。そう思って大人しくついて行った。だいたい、イベント前の取り締まりであって、自分たちの『本来の目的』がバレるとは考えていなかった。
実はそこに、一つのがあった。妖精たちが男たちの頭部に座っていたのだ。そのため『頭部が光っている男たち』を中心に集めていったのだ。彼らには、妖精たちが別の記憶を植え付けた。

「豪商が購入した少女はダンジョン都市には来ていない」

実際、として隠されて入っていたため、門を通った記録はない。
そして、彼らをピピンが纏めて。数分後に吐き出された彼らは善良な人間となっていた。彼らは犯罪ギルドでは捜索部隊に入っていたため、情報などを集める部署にいた。しかし、自分の情報でたくさんの孤児をはじめとした人たちを人身売買にかけて奴隷にしてきたことに深く後悔した。

「すべてお話しします」

そう言って、彼らは自身の知る犯罪ギルドの情報を自供した。そして、知り得る限りの顧客情報も自供し、顧客リストを持つ者は提供した。その中には貴族だけでなく、国の中枢に立つ要人……王族までいた。運が良かったのは、このダンジョン都市シティが属するこの国の王族は顧客リストに入っていなかった。

「なんで顧客リストなんか持ってんのよ」
「ああ。どの顧客がどんな人材どれいを欲しているのかが書かれているんだ。それにあった人を見つけたらギルドに連絡すると実行部隊がやってくるらしい」
「そこには、年齢や容姿の希望、成功報酬まで書かれていました。一番多い要望は、聖魔師テイマーの捕獲です。次は白虎の捕獲。こちらは生死を問わず。妖精の捕獲などもありました」

アゴールの追加情報にカチンときた。

「……私の捕獲? 私って珍獣扱い?」
「たしかに珍しいですね。現在、この大陸には存在がわかっているだけでも一名。エミリアさんだけです」
「あれ? もう二人いなかった?」
「お一人は先日、無事に天寿をまっとうされました。もう一人は別の大陸に渡られました。バカな国のバカな国王が彼を手に入れようとして、船の使用を禁じたそうですよ」
「……禁じても、あの人って水の妖精がいるんだから、普通に水面を馬車でいけるよ? 風の妖精もいるんだから、馬車ごと飛んで運んでくれるし」
「はい。あっさり空を飛んで行ったそうです」
「あ~あ。さらに妖精たちに捨てられたー」

そう笑ったが、そんな甘いものではない。この大陸には私以外に聖魔師テイマーはいなくなったのだ。つまり、狙われるのは私一人。それも、全種属の妖精を連れているのは元々私だけ。亡くなったお爺さん聖魔師テイマーが連れていたのは地と水と火の妖精。大陸を去った男性も水と風の妖精だけだ。

「……エミリア。都市ここの警備はさらに厳しくする。守備隊の方も、今まで以上に強固なものとなるだろう」
「わかってる。ダイバたちは夕方からイベントなんだから無理しないで。こっちはイベントを回ったら家にいるから」
「エミリアさん。今回から毎日、最初の二時間はここの住人向け限定になっています。ですから、エミリアさんも毎日参加してお楽しみください」
「ありがとう。じゃあ、毎日回らせてもらうよ」
「コレが上手くいけば、定着させられるだろう。エミリアもこの都市の仲間なんだ。一緒に楽しもうぜ」
「そうだね。じゃあ、また夕方に」

私たちが一緒に楽しめるように。
そう、気を使ってくれるダイバたちに感謝して、イベント期間中は何も気にせずに楽しく過ごさせてもらった。
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