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第六章
第155話
しおりを挟む《 エミリア~ 》
《 そろそろ寝ないとダメだよー 》
「もうちょっと~」
《 ダメだって 》
「調合窯に入ってるのがあと10分で完成するから」
《 じゃあ危ないから。ほら、座って『お片付け』して・・・ってぇぇぇぇ!言ってるそばからぁぁぁぁ・・・ 》
妖精たちに促されて、いつものように『終了宣言』されて椅子に座らされる。それと同時に意識を手放してしまったようだ。
《 あーあ。だから言ったのにぃ 》
《 今日は『倒れなかった』だけでもマシじゃない? 》
《 そりゃあ、そうだけど 》
エミリアは座る直前に意識をなくしていた。そのため崩れるように、椅子に凭れるように腰かけたのだ。
記憶をなくしたエミリアの精神は普通の人より弱っている。ステータスでも『弱体化』しているのを『非公開』にして隠しているのだ。
そりゃあそうだろう。『知らないから』で済めば警備隊や守備隊は必要がない。そのため、エミリアは家の外にいる時はかなり精神を削っているのだ。体力もかなり弱っている。
しかしエミリアは『限界に気付かない』。夢の中のエミリアはかなり無茶をしていたようだ。
それにあわせて動いてしまうため、倒れては何日も寝込んでしまっている。
《 エミリアを寝室に寝かせてくるわ 》
《 コッチは調合が終わったら私が片付けるわ 》
バウッ!
《 白虎たちはエミリアと一緒にいて。何かあったら呼んで 》
ガウッ!
白虎は背にリリンを乗せて、暗の妖精に浮かべられて運ばれるエミリアの後を追って行った。ピピンは調合窯の前まで来て調合が終わるのを待ってくれる。
《 今日は何を作っていたの? 》
《 癒しの水よ。私たちが飲むだけじゃなくて錬金でも料理でも使うから 》
《 私たちでは作れないものね 》
《 ・・・うん。エミリアを手伝ってあげたいけど、錬金や調合って私たちの力は通じないから 》
そう。昔の妖精たちがイタズラしてたから、イタズラ防止として妖精の力が無効化される。完成しても調合窯は開かない。
《 ピピンみたいに鉱石の抽出作業を手伝えたら良かったのに 》
水の妖精が、ピピンが触手を操って調合窯からピッチャーに移していく姿を見て愚痴をこぼす。
《 ねえ。それに近いことなら私たちにもできない? 》
《 ・・・え? 》
《 ほら。水は『使う水を出してあげる』の。エミリアは自分で水を出してるから、その分だけでも負担を軽く出来るでしょ? 》
《 風は? 》
《 私?私は切断。たぶん、混ぜたり攪拌させたりも出来るよ。そして地とリリンは植物の葉や枝を出せるでしょ? 》
癒しの水をピッチャーに移し終わったピピンが、水の妖精に向けて身体を左右に揺らす。
《 え・・・?リリンと私たち妖精は、エミリアの『植物』を育ててる、ですって? 》
《 そうね。私たちってエミリアの育てている植物を育てていたわね 》
風の妖精の言葉に上下へ揺れるピピン。
《 心配しなくても、私たちはちゃんとエミリアの役に立ってるのよ。だから、エミリアが無茶をして倒れるようなことが少しでも減るように見てなきゃね 》
ピピンが調合窯の内部を洗浄して水分を飛ばす。水の妖精が使い終わった乳鉢や匙を洗浄して同じように水分を飛ばす。風の妖精が触れない調合窯以外を定位置に片付けていく。
こうしてエミリアの手助けをしている自覚が妖精たちにはなかった。
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