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第六章
第148話
しおりを挟む「よっと。ランチを持ち帰りで下さーい」
「お、エミリアちゃん。昼だけでいいかい?」
「夕方から屋台村でイベントだからね。とりあえず見て回るつもり。場合によってはダンジョンに入ってくるよ」
「先月のことがあるからなあ」
「・・・うん。あの後から、水の妖精は怖がって出て来られないからね」
毎月、屋台村では『お客様感謝デー』みたいなことをしています。定価の5割から無料サービスなど幅広く、その分、集客力も半端ないのですが・・・。スリや引ったくりなどの犯罪者も集まってきます。
そんな中、いつものように屋台を見てテイクアウトしたり妖精たちが気に入ったものを買っていた時に事件が起きました。『高さ15センチの長方形の卓上鏡』に妖精たちが姿を写して遊んでいたので、その鏡を購入した直後のことです。
次の店に行こうとした時、目の前に革袋が現れて、妖精を攫って走り去ろうとした。その時に攫われたのが水の妖精です。涙石から白虎が飛び出して相手を襲い革袋を取り返してくれました。この革袋は魔法吸収がかけられていて、中から出られなかったようです。革袋から出した水の妖精は恐怖からガクガク震えていました。助かったことより驚きが強く、私の肩口に飛び込んで大泣き。それと同時に、滝のような大雨。私は加護があるため濡れなかったけど、周囲は大騒ぎ。あっと言う間に地面に水たまりが出来、足首まで水に浸かりました。みんなで慰めて、水の妖精が泣き止んだ時には、水は私のひざの高さまで届いていました。だいたい50センチくらいでしょうか。
濡れていない私を見て、私が聖魔師だと言うことに半信半疑だった人たちは驚き、私を取り込んでピピンたちや白虎を手に入れようと考えていた不埒な連中は『妖精の怒り』に怯えて一目散に逃げて行きました。もちろん逃げ出した連中は『妖精たちの反撃』を受けました。水は捌けていません。普通に走って逃げられるはずがありません。守備隊と警備隊に捕らえられて厳重注意を受けました。
水の妖精が攫われたのは偶然です。犯人は『私の右肩に乗って飛び跳ねていたリリン』を狙ったのです。
「ダンジョン都市を混乱に陥れた」
「聖魔師に襲いかかった」
「妖精に危害を加えた男は貴族相手の闇ブローカーだった」
「ダンジョン都市を『妖精の怒り』で滅ぼそうとした黒幕はコイツだ!」
そんな見出しがついた電子新聞・・・のようなものがダンジョン都市の、主に冒険者を中心に駆け巡りました。その中で判明したのが犯人の処罰です。そして妖精ではなくスライムを狙ったことを自供したそうです。
だから、この都市に住む人で私が聖魔師だと知らない人がいないのです。
「それでリリンちゃんはどうだ?狙われたのはあの子だろ?」
「あの子も、外ではあまり出ようとしない。家やダンジョンならピピンと一緒に出てくるけど、都市の中では呼んでも一度で出てこない」
だから、先月から店を開けていない。私の店はフレンド取引の設定をしていないため、入浴剤や香水、ポプリやハーバリウムが欲しければ、店に直接来るしかないのです。店を開けられない理由をこの都市の住人は知っているため、「いつ開けるんだ」とか「売ってくれ」とは言ってきません。他の町から来て「わざわざ来たのに!」と言われたら、私服守備隊が迷惑行為で取り押さえて守備隊へ引き渡してくれます。
それでも懲りずに店に来てしまうと・・・。
扉に触れた直後に光の妖精のイタズラで『真っ黒け』になります。静電気です。静電気ですが、甘く見てはいけません。体内に溜まった静電気は、何処にも逃げ出すことは出来ず。たまたま『狐の嫁入り』か何かで僅かに降った雨が掛かってしまい・・・。
大丈夫です。『生きています』から。
そうなりたくなければ、近付かなければいいだけです。
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