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第六章
第146話
しおりを挟む商人ギルドと職人ギルドを混乱に陥れた『依頼をした本人たち』は逆ギレ。中にはダンジョン都市まで殴り込みに来た『お貴族令嬢』もいましたが・・・。店は『貴族お断り』で近付けず。建物には結界を張ってあるため、情報部のニュースを見るまで私は外の騒動を知らなかったりする。
ちなみに令嬢は『店の前で着ていた衣装を脱ぎ捨てて全裸になったところで女性守備隊に連行された』そうです。情報部もしっかり全裸で騒いでいる写真を公開しちゃいました。
《 何にもしてないよー。真夏にゴテゴテの衣装着てたから暑くて脱いだんだよー 》
《 本当はさ。寒そうだから、私たちで『暑い風』を送ろうと思ったのに。ねえー 》
火の妖精が風の妖精と不満げに頷き合っています。
《 本当はあの衣装を『鎌鼬』で切り刻んでやろうと思ったけど・・・。エミリアは職人が一生懸命作った物を壊されるの嫌うでしょ?だから止めたんだ 》
「そう。偉いね。・・・でも、その令嬢。何がしたかったんだろう?」
《 『貴族排除の指輪』を欲しがる貴族・・・? 》
《 貴族の考えること、分かんないねー 》
分かるはずがない。
「『手に入らない指輪』って聞いたから欲しかった」
そんな理由だったと、後で情報部のニュースを見てみんなで笑った。『迷惑料』として、令嬢の私物が送られてきた。バカなことをした上に全裸になった。その時の記録も出回り拡散されて、令嬢の婚約者から『常識のない令嬢を妻に迎えることは出来ない』と婚約破棄されたのだ。
いつものように私の店の前には私服守備隊がいた。そんな彼らの前で全裸になったらしい。
「下着は身に着けてなかったの?」
「上は自分で外した。下は何も身に着けていない」
「・・・それこそ変よね。だって旅をしてきたんでしょ?家の中やテントの中以外では、ペチコートとズロースを着用していないと砂が入って肌を傷つけて痛いのよ。それにコルセットをしてるなら間違いなく宿かテントの外で人と会うつもりだったんでしょ?」
「ああ。やっぱり女性でもそうなんですね。服の中に砂が入るのは俺らだけかと思っていました」
その疑問は続報で判明しました。馬車でテントを広げて快適な移動をせず、貴族用の箱型馬車で移動していたのと・・・中で『致して』おりました。貴族のテントですから所有者は父親だったようです。不貞相手を登録してテントに連れ込むことが出来ないため、箱型馬車で移動して来たそうです。
「不貞相手というのが、護衛騎士全員だったんです」
「『令嬢の相手も仕事のうち』だったんでしょうか?」
「同行してた侍女と護衛騎士は全員クビになったらしい。『結婚前の火遊び』のようだ」
「えー。絶対、結婚した後も『人妻の火遊び』をしてると思うなー」
私の指摘に男性陣は何も言えず苦笑するしかなかった。
「それとな。「女性に人気の店ってことは店主は『いい男』に決まっているでしょ。だったら、私を抱かせてあげたらプレゼントということで色々くれるはずよ!」だそうです」
「・・・なに?そのイカレた発想」
「やっぱりそうなりますね。ええ。ちゃんと「店主は女性で、店が人気なのは香水や入浴剤などを取り扱っているからです」と伝えたら「そんなはずはない!」と発狂していました」
「そうそう。全裸になった理由は「店主に襲われた」と騒げば店は慌てるだろう。そうしたら此処で店を続けていけないで路頭に迷うだろうから『お抱え』で雇ってやる。とのことでした」
「・・・・・・迷惑」
「ええ。令嬢だけでなく親にも「娘が迷惑をかけたくせに謝罪もなしか⁉︎」と脅しをかけておきました。ついでに何方も『ただの冒険者の分際』『平民が何様のつもりだ!』という内容の暴言がありましたので、「聖魔師の店主を敵に回して何様のつもりだ!」と返しておきました」
「親は「自分は関係ない。娘がやったことだ」と騒ぎ、娘は「そんなこと知らない!なにも聞いてない!」と泣き叫んでいましたよ」
「仕方がないよな。この大陸には『聖魔師に手を出すな』って法があるんだ。このダンジョン都市に住んでいるのは知られているんだし。『大罪を犯した』んだからなあ」
「とりあえず、罪人として王都に送ったから、どう判決するかは報告待ちだ」
ですが、それはさらなる問題を引き起こし、妖精たちが『見た目の若さ』を奪ったのです。
《 全身『シワシワでボロボロ』なの。水分が枯れて保水出来なくしたんだ 》
《 王都でね、普通に生活してたんだ。なんかね、親が金を積んで揉み消したんだよ。「王都に送られたってことは罪を問わないということだ。だいたい娘は婚約を破棄された被害者だ。相手から慰謝料を支払わせたいのを許してやるんだ」って 》
《 あの女、通り掛かったお婆ちゃんを「シワシワでみっともない」って理由で突き飛ばして怪我させたんだ 》
《 ちゃんとボクが治してあげたよ。怪我は女に『返して』あげた 》
《 ・・・だからね。『シワシワでみっともない』姿にしたの。でも表面だけだよ 》
「うん。分かってる。『娘の若い体力はそのまま』なんでしょ?」
そう言いながら、水の妖精の頭を撫でる。優しいこの子が怒ったんだから、お婆ちゃんは酷いケガだったんだろう。
外に出られない姿になったこともあり、令嬢は何処かの女性修道院に終生入ることになった。それで私物と貯金をすべて送ってきたようです。親名義でたくさんの宝石や鉱石も送って来ました。
宝石も衣装の生地も最上級品です。すべて素材として使わせて貰うことにしました。くれるというのですから、遠慮なく頂きます。
・・・その性格が、別件で大問題になりました。
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