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第六章
第135話
しおりを挟む私が開門と同時に入るのも、荷物持ちに選ばれようとする孤児たちに絡まれるからだ。もちろん直接の接触はしない。それすらも法で禁止されているからだ。
しかし「エミリア。何処行くの?」「ついてっちゃダメ?」と声をかけられるのだ。収納カバンを持っているため、私に荷物持ちは必要がない。それに『別の理由』もある。それをダンジョン管理部は知っている。
それでも、私にくっついてダンジョンに入ろうとした子がいた。もちろん関所で警備隊に取り押さえられて罪に問われたが。私で3人目・・・4人目だったか?ということで、私がダンジョンに入っている間に『鞭打ち刑』後に左腕に『追放印』を押されて都市を追放されていた。法で禁止されている以上、違反すれば罰をうける。罪を重ねれば、その分重くなる。ただ『追放処分』は別に犯した罪からだ。
捕まった少年は、仲間たちと一緒に私の家に忍び込もうとして捕まっていた。結界を張っていたため入れなかったが。もし入っていたら、盗みを働いた後に証拠隠滅のため放火するつもりで発火装置を所持していたそうだ。
「連れて行ってくれないなら、店の商品を盗んで売ろうと思った」
そう自供していたらしい。空き巣に窃盗、そして放火。未遂とはいえ重罪です。
孤児の排除を求める屋台経営者も多くいました。孤児による窃盗の被害が一番多いのが屋台だからです。中には調理前の食材ですら盗まれています。報復で屋台を壊された経営者もいます。私の家が狙われたのも報復からです。
最終的に、その少年と仲間たちを追放。他の孤児たちは神殿に造られた『孤児院』に押し込められました。孤児院と言っても朝夕の食事と引き換えに、神殿内外の清掃が午前と午後に二時間ずつあります。清掃をしないで関所に向かった子は『働かなかった』として夕食は抜き。ちゃんと荷物持ちとして仕事をした子は管理部から連絡が来るため食事が出されます。
そんな孤児院から逃げ出した子供たちは、ダンジョン都市外周部にある娼館や男娼館に売られていきました。脱走後の子供たちがするのは窃盗・掻っ払い・空き巣。罪を重ねたため、罰として売られたのです。
ダンジョン都市は、私が住んでいる『城壁内』だけです。城壁と外壁の間は『外周部』と呼ばれています。ですが、ダンジョン都市とは別です。
罪人はダンジョン都市に住めません。そのため、都市に住んでいて罪を犯した者は追放処分を受けて追い出されます。
そんな連中がよその町や村に入れるはずがありません。行き場がないため都市の周囲に住み着き、中には売春宿を営み始めた人たちもいました。都市を守る城壁には『魔物よけ』がついていますが城壁の外にいる人たちには通用しません。『エイドニア王国』のように城壁20メートルまで守られるのではなく、『壁の外』ギリギリまで魔物が来ます。そんな理由から、自分たちの身を守るため外壁が作られたのです。外壁には門番はいません。そのため、よそで問題を起こして追放された商人や職人も住みつくようになりました。
実は貴族は城壁内に入れますし、冒険者ギルドでダンジョン使用許可証を申請すればダンジョンにも入れます。冒険者でないため期間限定です。ですが、買い物が出来る所もなければ宿泊出来る宿屋もありません。そんな貴族は外壁内の『貴族でも泊まれる宿』かテントで寝泊りします。中には売春宿を好んで泊まる貴族もいるようです。家に帰っても、外周部で犯罪を犯していたせいで城壁内に入れなくなった貴族も多かったりする。
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