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第六章
第138話
しおりを挟む背に2匹のスライムと6人の妖精たちを乗せた肩高1メートル。体長は2メートルほどの白虎が私の前をゆっくりと歩く。私が周囲を収納しながら歩くため、私の速度に合わせてくれている。この子は魔物の剣歯虎だが、生まれつき牙が猫の犬歯ほどしかなく色は白かったようだ。黒の縞も薄いが、これは成長すると少しずつ出てきたらしい。日本の動物園で見たホワイトタイガーそのもの。『大きな猫』と変わらず、家の中ではゴロゴロと喉を鳴らして甘えてくる。でも、外にいる時は今みたいに有能なボディーガードとして側にいてくれる。
《 親兄弟と違う姿だったから、生まれてそのまま捨てられたの 》
そんな見捨てられた白虎を地の妖精が救ってみんなで育てて来たそうだ。そのため狩りは出来ず。トラよりは飼い猫に近く、白変種のため野生では目立ってしまうために生きていけず。地の妖精たちが私を気に入って契約し、ついて行くと決めた。しかし、唯一の心残りが白虎だった。魔物のため『一緒に連れて行きたい』とは言い出せなかったらしい。
「じゃあ、白虎も一緒に行く?ただし、世話はみんなでやってよ」
魔物の世話は私には無理。そりゃあ、その時点でスライムのピピンとリリンが一緒だったけど、世話はしていない。
スライムは雑食のため、私があげるものなら何でも食べる。ダンジョン内で草や岩を見つけても食べる。そして・・・ピピンたちが『食べたあと』は、不純物などが取り除かれている。試しに金塊を与えたら、金と鉄、少量の銅とたくさんの砂鉄に分かれた。
・・・あれほど大変だった『抽出作業』がピピンとリリンのおかげでしなくて済むようになった。だからと言って、一度に大量の鉱石や鉱物を与えて抽出してもらうことはしない。そんなことしたら『今の関係が壊れてしまう』と思っている。
そして私との約束通り、白虎の世話は妖精たちがしている。私が持ってる大量の肉や魚介類が白虎のご飯として消費されている。私は白虎を、特に白虎のモフモフを愛でて撫で回している。
ちなみに私が最初に「白虎」と言ったため、それが白虎の名前になってしまいました。白虎自身が『白虎』という名を気に入ってしまったので、別の名前をって言っても変更は拒否された・・・。
ペンダントトップにした宝石の中には、テント同様プライベート空間が広がっているらしい。見たことはない。
この宝石は『人魚の涙』だった物だ。そのままではどうにも使えなかったため、錬金窯に人魚の涙と癒しの水を入れてみたら毒素が消えた。その代わり、紺碧色だった人魚の涙が水色に変化して『涙石』と名を変えていた。それをペンダントトップにしたら、聖魔師となった時にピピンとリリンが吸い込まれた。驚いて宝石を見たら『聖魔師と契約した聖魔の住まい。プライベート空間となっている』と詳細が変わっていた。
のちに妖精たちと契約した時に詳しく聞いたら、聖魔が快適に過ごせる空間になっているらしい。
《 不具合はないよ 》
《 白虎も喜んでいるよ。周りを気にしないで広い草原を自由に走り回れるもん 》
《 今だってピピンやリリンを背中に乗せて、嬉しそうに駆け回ってる 》
白虎は白い見た目のせいで、魔物たちに狙われやすいだけでなく、物珍しさから冒険者たちにも狙われていた。中には『サーベルタイガーの白い毛皮』目当ての商人や、商人に依頼された冒険者。貴族からペットにするため捕獲を命じられた従者や騎士も白虎を狙っていた。
今は聖魔師の私が白虎と契約しているため手出しは出来ません。大金を積んで白虎を手に入れようとして私に傲慢な態度に出た商人は『同業者に迷惑を掛けた』罪を問われ、取り扱っていた商品と所持金のすべてを私への迷惑料として渡した上、重労働の罰を課せられた。
この大陸の大半は荒野です。西部劇の大地です。そのため、水路を引いたり井戸を掘ったりする労働力が必要なのです。商人は、その重労働を20年間続けることになりました。
私は商品もお金も必要ありません。商品はともかくお金は十分にあるので。ですが、それがこの国の罰則なのです。何でもかんでも、『罰則は重労働。慰謝料は全財産』です。危害を加えたとか悪質なものになると、遠慮なく死罪です。この世界では公開処刑は『平民のイベント』です。特に処刑される者が貴族なら尚更。鬱憤の捌け口のためだ。
国も一度得た労働力を簡単に手放す気はないのでしょう。すべて奪い取って、人生を再生不可能に追い込むようです。今回の罪は商人ギルドによる罰で、聖魔師に対しての罰は含まれていません。国は『これ幸い』と罰を追加するつもりです。
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