私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第六章

第131話

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この『ダンジョン都市シティ』に居を移して、店舗兼居住スペース付きの一軒家を手に入れた私は、楽しいダンジョンライフをしている。都市に名はない。というか『ダンジョン都市』が此処の名前だ。
都市自体は『ダンジョンに向かう冒険者向け』で、回復薬などを売っている店がほとんどだ。そんな中、私は『回数限定』をつけた防御系アクセサリーから宿屋や冒険者用の入浴剤やアロマオイルなどを販売している。ただし、営業は不定期。というのも、ダンジョンに採取や採掘に行くからだ。
この都市の大半は『貴族お断り』になっている。私が手に入れた店舗もそうだ。過去に『お貴族様のおたわむれ』で大きな騒動が起き、都市自体が『貴族排除』になったそうだ。国が仲介に入ったため都市は貴族が入ることを許したが、接客業は『貴族排除』を貫いている。店や宿屋のほとんどはもちろん、個人宅でも同様だ。


貴族たちは『元セイマール王太子たちがしたこと』と同じことをしていた。
女性を見れば腰を振り、個人宅に乗り込んで女性や少女を見つけたらその場で襲い、気に入った女性は自分が泊まる宿に連れ去り集団で襲う。店に押し入り商品の強奪に店員の誘拐。したい放題。ヤりたい放題。
そして伝家の宝刀バカのひとつ覚え「俺は貴族だ。だから何をしても許される」を発動。
何処のバカでもそれを『天下無敵の魔法の言葉免罪符』として使うが、通用するのは『自分の周りだけ』だ。
貴族たちは捕らえられたが、このダンジョン都市は冒険者と冒険者を相手にした商人、引退した冒険者たちで作り上げた都市のため、貴族の権力なんか一切通用しない。

男たちからフルボッコにされたバカたちは去勢され、素っ裸で高い杭の先に縛られて城壁のさらに外。外壁の外に並べ立てられて『貴族の権限』を使ってバカ息子を無罪放免にしようと駆けつけた父親たちを迎え討った。
抗議・・・というより武力行使もいとわない親たちだったがあっさり返り討ちにあい、息子同様に去勢されて全裸で杭の先に縛られた姿で後発隊の貴族たちを出迎えた。さすがに後発隊は『話し合い』を求めたが、外壁に『貴族よけ』の魔導具を設置されていて話し合いそれも叶わなかった。

ちなみに『去勢は罪人への最大の罰のひとつ』だそうです。

「こんな奴に子供が出来たら『同じことをする』だろう」

「女性に対して性的暴行が出来ないように去勢してしまえ」

そんな理由から、古くから続いている罰だそうだ。・・・それでも『懲りない』ようですね。
ちなみに女性は『アソコを縫う』らしい。

そして、貴族たちと一触即発の状態の中、仲介役として国王が現れた。
貴族の傲慢は自分たちにある。そう言って国王は頭を下げた。その上で事件を起こした貴族たちの爵位を剥奪。財産没収。領地は王領とし、一族は腕に罪人の印を施した後に国外追放。実行犯の貴族たちは王都にて公開処刑八つ裂きの刑のち、魔物討伐の撒き餌とする。被害者へはそれ相応の慰謝料を支払うと約束した。
それだけでは不足だと、ダンジョン都市側は自治権を求めた。『冒険者のことは冒険者が決める。国も貴族にも口出しはさせん』と。国王はそれを認めた。ただし『貴族よけ』の魔導具撤去を交換条件に。



この都市の面白いところは、『ダンジョンはひとつではない』点だ。ダンジョン都市の名の通り、此処には200個以上のダンジョンがある。そのほとんどにはカギがかけられていて、ダンジョンと都市を隔てる関所ゲートで申請してカギを受け取る。それをかざして「解錠」と言えばダンジョンへ転移する。別のパーティや冒険者が入って来れないようになっているのだ。カギは魔法で出来ていて、使うと勝手に関所ゲートに戻る。ただし『中に入った者が全員出るまで』使用出来ない。私みたいに『採取・採掘目的』の場合、他人がいない分『奪い合い』が起きないのがメリットだ。
もちろん、誰でも入れるダンジョンもある。フロアに入っている人数によっては入り口で入場規制されるが、1番から5番まではどんな冒険者でも入れる。
そして『ダンジョン』と名がついているが、この都市では洞窟と迷宮の何方どちらもまとめて『ダンジョン』だ。
ちなみに此処のダンジョンにいる魔物は『何処から現れるのか分からない』とのこと。しかし、ダンジョンの詳細を確認すると『魔物はダンジョンが生み出している』とある。・・・このダンジョンすべてが『巨大な魔物の巣』で、表層近くに現れた魔物がダンジョン内に取り込まれるようだ。
そのため、ダンジョンに不釣り合いな魔物が現れて討伐隊が向かうこともある。
このダンジョンエリアは完全に管理されているため、討伐隊も都市の『ダンジョン管理部』所属だ。



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