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第五章
第119話
しおりを挟む軽食休憩を挟み、やっと皆さんの頭は正常に働き出したようです。
「エアさんの懸念から、我々後発隊は『ヤスカ村が魔物に襲われた』という前提で動きました。その場合、一番問題だったのは『魔物がどうやって村に入り込んだのか』ということです」
「実はね。エアちゃんは村に設置されている魔導具が不具合を起こしているか魔石が壊れた可能性を考えて、私たちにそんなことがあるのか確認したの。もちろん魔石は消耗品よ。魔石に魔力を充填すれば使い続けられるけど・・・」
「でも、それを管理しているのは王城でしょ?だから王城に問い合わせたら・・・。ここ半年以上、調査も交換も。何もしていなかったの」
「半年・・・?」
エリーさんたち先発隊は「ひと月半前はゼクトたちの騒動が起きた頃だろ・・・?」と逆算して思い出そうとしています。
この世界は15ヶ月。その半年といっても7~8ヶ月になります。
私がこの世界に来たのが12ヶ月前です。ちょうど季節は春になった頃で、人々の流れが大きく変わる頃でした。王都から出ていく者。地方から王都に入った者。私はちょうど後者のひとりと思われていたようです。
私が王都にいたのはひと月弱。ルーフォートに移ってエリーさんと再会したのが二ヶ月後。10日後に町に戻ったら宿が無くなりました。それから5日後に『毒虫使いの女』が現れて、その10日後にプールと温室を作りました。『虫の襲撃』が始まったのは同日です。そして町が襲われていたのは約二ヶ月間。セイマール国騒動が終結したのはひと月半後。
ひと月ほどこの家にいて、王都内が落ち着いた頃に宿へ移動。ひと月ちょっとで雪が降り出して、宿が休業するためにまた家へ戻って来ました。
ゼクトたちが事件を起こしたのはそれから二週間後。ひと月後に手作りアクセサリーを皆さんにプレゼントをして、同時進行で魔物の調査もしてて・・・。そして、ヤスカ村と連絡が取れずに調査が入ることになったのは翌週。
「半年前というと、私たちがルーフォートに閉じ込められていた頃?もしくは王都に戻ってきた頃じゃない?」
「だいたいその頃ね。それで、エアちゃんが『魔導具の交換は可能か?』を聞いて来たの。それに関しては私たちが緊急事態だと王城に訴えて『魔石の交換』をすることになったの」
「さすがに『ヤスカ村と連絡が取れなくなった』ことで緊急事態だと理解したみたいで、最優先で魔石を渡してくれたわ。ついでに魔導具の故障も考えられたから、大至急で魔導具も預かったわ」
「だから、フィシスたちも後発隊に加わっていたのね」
「『魔物よけ』の魔導具に関しては守備隊の管轄だから。それに、エアちゃんの仮説では『村の守備隊が全滅した可能性』もあったからね」
「・・・・・・イヤな仮説が現実になっちゃいました」
「ですが、そのおかげで逃走しようとした魔物は到着した後発隊が討伐することが出来ました」
フィールドに逃していたら、さらなる騒動が起きていたでしょう。
「ヤスカ村の人たちはどうなったのですか?」
「ああ。スープを飲んでもらった人たちは、飲んでない他の人たちのために移動してもらった。そのおかげで魔物が正体を現した時は安全な場所にいて被害は出なかった。まあ、図々しく『二杯目を求めて並び直した貴族ども』は逃げ回ることになったし怪我もしたが。それは自業自得だ」
「被害者の調査はこれからになるわ。でも・・・ご遺体は数体見つかっているわ。たぶん、エアちゃんの仮説が正しいと思う」
「悪いな。俺が前に立って指示していたこともあって、俺が仮説を立てたことになっている」
「仕方がないわ。今回のことはエリーやキッカは何も出来なかったからね」
アルマンさんが苦笑しています。アルマンさんには迷惑をかけてしまいますが・・・。お願いしましょう。
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