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第五章
第118話
しおりを挟む「皆さん。頭は冷えましたか?」
「「「・・・ハイ。スミマセンデシタ 」」」
騒いでいた皆さんは大人しく椅子に座って俯いています。その頭の上には『高さ20センチの雪だるま』が乗っています。
「エアさん。・・・これは?」
「ポンタくんのところで販売している『氷嚢雪だるまバージョン』です。冬季限定商品で、通常通り冷凍庫などで凍らせて使います」
「エアちゃん・・・。その冬季限定を何種類作ったの?」
「私は作ってないですよ。職人さんたちが面白がって作っているだけです。ポンタくんなら把握してると思います」
「職人連中は『面白いネタ』があると盛り上がるからなあ」
「あの連中は下火になっても無理矢理盛り上げて再炎上させるからなー」
「しかし・・・。冬季限定とはいえ、雪の中を買いに行く酔狂な奴はいるんか?」
「・・・いるみたい」
エリーさんが誰かと連絡をとってると思っていたら、相手はポンタくんだったようです。
「現在販売されている『冬季限定商品』は約50品。すでに『春季限定商品』に着手始めた職人もいるらしい」
「あ・・・。『春色』の服を縫製部の人たちが作るって言っていました」
「春色?それはどんな色なんですか?」
「ピンクや黄色などの花の色から、草の緑色。晴れた空をイメージした水色」
「たしかに『春に似合う色』ですね」
そう言いながら誰もが思った。
『商魂たくましい』と。
王都内でも通称『レンガ通り』と呼ばれる主要域に敷かれたレンガは弱い火属性の魔導具です。そのため雪は積もらず往来するには問題はありません。建物の屋根にも魔導具が使われているため、雪は積もりません。そのため、商人ギルドへ行って野菜の購入など問題なく出来るのです。
ちなみに、農村にある商人ギルドが野菜をまとめ買いして保管庫に保管。野菜の購入依頼を受けて、其処から各地の商人ギルドへ転送するそうです。ただ、冬場は野菜が収穫出来ないため、1割2割は高値になっているようです。
ちなみに私やオルガさんたちは屋台の人たちから直接『フレンド購入』をさせてもらえています。パパさんも屋台の人たちと仲良くなり、フレンド購入が出来るようになりました。
「前みたいに王都が封鎖されても野菜不足問題は解消される」
屋台の人たちと当時の騒動の話をしてて、「じゃあフレンド登録で取り引きするか?」となったそうです。
「エアさんと知り合って、仕事など色々と向上している。ありがとう」
パパさんからも屋台の人たちからも、そうお礼を言われました。
ちなみに冬季の野菜不足解消のため、商人ギルドに『野菜の仲介』を提案したのは私です。そのため、シェリアさんと屋台ギルドのジリアーノさんとモーラスさんが来て話し合いをしました。期間は冬季限定。値段は一律。
それだけでも人々の生活が大きく変わるようです。
レンガ通りから外れたこの家の前は『土の道』ですが、地熱のせいか雪は道の端にいくらかある程度です。その代わり、道以外には雪が積もります。研究施設の周りも、今は雪で埋れています。防犯のために作られた『落とし穴』の上にも、今は雪が積もっています。ただし、誰かが落とし穴に落ちれば防犯用魔導具が反応するようになっています。
「以前にも覗きをした連中がいたからな。ただの落とし穴ではなく『防犯用』だと思えばいい」
ゼクトたちの事件で使った落とし穴を確認したアルマンさんが、防犯用として研究施設の窓の下に落とし穴を設置。底には泥を張って、わたし特製の眠り薬も入れてあります。
・・・防犯グッズの『雪だるま』は全力で却下されました。
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