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第五章
第117話
しおりを挟むホブゴブリンの中に『回復系プリーストのホブゴブリン』がいたことを伝えると驚かれました。ついでに『ホブゴブリンのつえ』を出すと、私の言葉が真実だと分かってくれました。
「エリーさんにも伝えましたが、『回復系』とついている以上『治療系』がいるのか。すべて合わせて『回復系』と位置付けられているのか。『プリースト』がいるということは、攻撃や防御の魔法に特化したホブゴブリンなどもいると考えた方がいいか。さらに『こんぼうを持ったホブゴブリン』と行動を一緒にしていました。同族なら行動を共にするのか。それらの調査をエリーさんにお願いしました。ちなみに、エリーさんは『変異種』の可能性を口にしていました」
「ゴブリンに『回復役』がいる・・・。それはヤバい。それに攻撃系の魔法が使えるゴブリンがいるとしたら・・・」
「何時もエアさんがやってる戦い方が、オレたちに向けられるということか?」
この話は後発隊と待機組にも話していなかったことです。そのため、知らなかった情報が出てきて混乱状態になっています。
「エアさんがあの時魔法で倒したのは・・・」
「はい。後方につえを持ったホブゴブリンがいるのが見えたので。魔法を使うと思ったので、確認もしないで攻撃してしまいました」
「でも、俺たちは驚いて戦闘態勢に入る事も出来ませんでした」
「その通りだ。俺たちが危機感を持ったのは、エアさんが次の魔物の接近を教えてくれたからだ」
「ああ。・・・その後に『イノシシも接近した』んだったな」
「落とし穴に落ちて終わりました」
「エアちゃん。聞いた話だと、ただの落とし穴ではなかったみたいだけど?」
「はい。底には土で杭を作って並べました」
皆さん想像したのでしょう。ゾッとしたような表情で腕を擦っています。
「話をゴブリンの事に戻していいですか?」
「あ、はい。お願いします」
このままでは魔物のことをメインに話さなくてはなりません。今は『報告会』のため魔物のことは後回しにしましょう。
「皆さん。『回復系』の存在を認めていただけましたね?」
私の目の前に置かれた杖を見て、誰もが黙って頷いています。
「では・・・。『攻撃系』の魔法を使うゴブリンがいる可能性を疑った私の心配も分かって頂けましたか?」
この言葉にも全員が頷きました。
「それだけじゃねえ。エアさんが言っただろう?『雪が積もっているのにゴブリンが外を出歩くのか?』と」
「ああ。しかし、夜で雪が降っていなければ雪を崩しながら前へ進むのは簡単じゃ・・・」
「アホか。『雪の積もった月光の中』がどんな状態か分からんのか!」
アルマンさんはちゃんと理解しているのですね。怒鳴られたユージンさんを含めて、皆さんは悩んでいます。ですが、このまま時間をかけすぎていては、話が終わるのは深夜になるのではないでしょうか?
「皆さん。今夜、外に出て確認してくださいね。月の光は雪で反射します。『銀世界』の名の通り、月明かりだけでも明るいんです」
「『ゴブリンは明るい場所を避ける』とエリーが言っただろうが」
「「「 はい。そうでした」」」
「つまり、『雪の中を移動すること自体ありえない』と言うわけですか?」
「それだけじゃねえ。って言っているだろう」
「皆さん。自分の肩まで積もった雪を崩しながら前進してまで戦いたいと思いますか?」
「・・・いや。そうは思えない」
「そんなことをしてまで進む理由がわからない」
皆さんの話を黙って聞いていたキッカさんが「そう言うことか」とひとりで納得しています。
「おいキッカ。何、自分だけで納得してるんだ?」
「分かるように説明しろ」
「ん?ああ。ちょっと考えてみろよ。戦う時の武器の可動範囲は何処だ?」
「ん?剣なら腰から肩の高さか」
「槍は腰から脇の部分までだな」
「弓は・・・肩の周辺というか?」
「じゃあ。雪がその位置まで積もっているのに戦おうと考えられるか?」
「・・・・・・無理だな」
「それ以前に、雪掻きしながら前進なんかしたら、いざという時に戦えないだろ」
「だったらお前ら。雪を溶かす『火魔法を使える仲間』がいたらどうだ?」
アルマンさんの指摘に全員が驚き、次いでパニックになりました。
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