94 / 789
第五章
第107話
しおりを挟む「エアさん。何か食べますか?」
「いえ。・・・まずはコーヒーを」
「お姉ちゃん。カフェオレにする?」
「ユーシスくん。いれてくれるの?」
「いいよ。ミルクと砂糖たっぷりだね」
宿に泊まってる頃から、私のカフェオレやロイヤルミルクティーを淹れるのはユーシスくんの担当です。疲れている時は甘めで淹れてくれるなど、色々と気を使ってくれます。
「エアさん。今は何をやっているんですか?」
「私の持ってる貴石にはね。複数の属性を併せ持ったものがあるの。それも『火や水』という組み合わせや『光と暗』という反発しあう組み合わせなの。だけど、それが『錬金でどう影響しあうのか』を知らなければいけないでしょ?」
調べて見て分かったけど、それは属性通りにはならない。
「いま分かっているのは、例えば火属性の影響が大きく水属性の影響が小さい場合。武器と錬金すると『弱い火属性だけの武器が出来る場合』と『火属性の強い武器だけど弱い水属性を纏うことも可能』の二種類が出来るの。でも、どのような条件下で分かれるか。逆に弱い火属性と強い水属性の場合など、まだまだ研究中」
「文字通りではないのですか?」
「うん。違う。含有率も『多い』や『少ない』とあっても、少ないでも『5%』や『38%』とバラバラなの。普通がある貴石では『40%』や『60%』の時もあるわ。今回調べててわかったのが、含有率の表示が貴石によって違うの。『普通』があるかないかってことも、どのダンジョンでどの魔物から手に入れたかによっても違うみたい。ウサギのキバなしでも、普通枠があったりなかったりしてて・・・。これもまだ調査中」
私の説明に「うげー」「エアさん。ずっとそんなことしてたのか」と声が聞こえてきました。
「防具に錬金するとね。『火属性に強いが水属性もある程度防げる』のと『火属性にメチャクチャ強い』のが出来るの。後者の場合、水属性が火属性に強いのが理由だと思う。そして100%を超えると『ほぼ無敵』に近いみたいなの。・・・誰か装備して、エリーさんの『火の上位魔法』を受けてもらえませんか?」
「「「 無理です! 」」」
「「「 無茶です! 」」」
皆さんが二手に分かれて声を揃えて叫びました。
「死にますって!」
「一応、『大丈夫』って・・・」
「一応ってなんですか?!一応って!!」
「だって・・・。自分で確かめようとしたら、エリーさんに止められたの」
「仕方がないじゃない。エアちゃんが自分で装備して確かめようとしたんだから。全力で止めたのよ」
誰もが『エリー!良く止めてくれた!』と心の中で誉め称えたが、続けて発せられた言葉に悲鳴を上げた。
「だからね。今度『居残り特訓』になった人たちに、試してもらうことになったの」
「お姉ちゃん。カフェオレ持ってきたよ」
「あ、ありがとう。ユーシスくん」
ユーシスくんがカフェオレ2カップと共に持ってきたのはハムとチーズのサンドとポテサラサンドでした。
「いま無理して食べないで、持って帰ってあとで食べて」
「ありがとう。あとで頂くね」
持ち帰ることを前提として。それでいて胃に負担をかけないようにと考えてくれたようです。それも、ひと口サイズという気配り。
宿じゃないため、プレゼント機能が使えません。フレンド登録もしていないため、こうして直接渡すしかないのです。
カフェオレ1カップと二種類のサンドは収納ボックスにしまって、甘めのカフェオレに口をつけました。温めの優しい温かさが全身に回り、ほうっと息を吐き出しました。
「エアちゃん。一応聞いておくけど、武器や装備で何を確かめたいの?」
「暑さ寒さをどの程度まで感じるのか。今の時期なら、寒さも魔法と自然の両方から同じだけ守られるのか、などを調べたいの。『強い火魔法を受けても無効化出来た』としても熱さを感じたら意味がないもの。体内が熱くなって『人体発火』しちゃったら死んじゃいますよ」
私の言葉を聞いて、半数以上が有名な画家の作品『叫び』に似た姿と表情を見せていました。
「でもエアちゃん。そんなこと研究して、何かあるの?」
「うん。・・・・・・あるの」
「そう。・・・じゃあ、何も聞かない。そのうち教えてね。でも『何も言わないで突然実験』は止めてね」
「はい」
エリーさんが言っているのは、アクセサリーの件ですね。
「でも・・・見たかったなー。フィシスさんたちの『お尻フリフリ』」
「ちょっと、エアちゃん?!」
守備隊の詰め所で『お尻フリフリ』をさせていたゼクトたちは、水の効能が切れるまでの10時間ずっとお尻フリフリしてたそうです。気絶していてもフリフリ・フリフリとしていて、フィシスさんたちは記録して『操り水の危険性』を訴えたそうです。その操り水はレシピが公開されていなかったため、ゼクトたちの記憶から消されたそうです。
・・・そのレシピ、私も持っています。水を調べたら『何を使っていたか』が分かったので。
ですが、公開はしません。使った水も『前に回収した水』と言っています。改善して『自白剤』が出来たらレシピを公開しようと思っています。
85
お気に入りに追加
8,060
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。