私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第五章

第105話

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「エアちゃん?これは何?」

「輪っか」

「えっと・・・。それはそうなんだろうけど」

「リング」

「そ、そうね」

フィシスさんたちが手にしているのは白金プラチナ輪っかリングです。

「だって・・・。皆さんが指輪がいいのか。ブレスレットがいいのか。ネックレスやペンダントがいいのか。わからなかったから」

そうです。どのアクセサリーが好きなのか分からなかったし、ブレスレットも腕時計みたいにキュッと締めるものやチェーンのように緩く服の中に入れられる方が好きだったり。好みは人其れ其れそれぞれで違います。

そのため、皆さんに選んで欲しかったのです。

「じゃあ、私は指輪がいいわ」

「だったら、める指にリングを通して下さい」

「こう?」

フィシスさんが自分の左手中指に直径10センチのリングを通すと、シュルシュルと指の大きさに縮んでいきました。

「指輪の幅も緩さも決められますよ」

「じゃあ。もう少し細めて緩めましょ」

指で指輪をアレンジしていきます。

「エアちゃん。これでいいわ」

「じゃあ、『固定』」

私の言葉に指輪が光って完成しました。そのままフィシスさんの指に嵌っています。

「これは・・・宝石?」

「はい。紫水晶アメジストです。精神を安定させる効果がありますが『魔除け』になります。そして『覚醒』の効果もあります」

「エアちゃん。・・・それって」

「皆さんのリングも固定させたら宝石が現れますよ」

「エアちゃん。鎖のブレスレットに出来る?」

「腕に通して表面を撫でれば」

アンジーさんは、言われた通りにリングを腕に通して幅を決めてから表面を一周撫でました。

「エアちゃん。これで決定してくれる?」

「はい。分かりました」

アンジーさんのブレスレットを固定すると、シシィさんとエリーさんも指輪にきめたようです。

「ミリィさん?」

ミリィさんはリングを凝視して何故か悩んでいるようです。

「壊れたら直してもらえる?」

「壊れても元に戻るようになっていますよ?」

ちょうど『形状記憶合金』のようになっています。単純に金属、このリングは白金プラチナですが、『状態回復』をかけて錬金しました。そのため壊れても『記憶させた形』が続くようにしたのです。その記憶をさせるために魔法で固定させるのです。

ミリィさんは蔓草つるくさのブレスレットを選びました。

「じゃあ、これ飲んで」

そう言って、皆さんにコップ一杯の水を出しました。誰ひとり疑いもせずに口をつけます。それと同時にアクセサリーが光りました。

「なに・・・いまの?」

「エアちゃん?何したの?」

「・・・具合は?」

「何ともないわ」

「え・・・!?ちょっとエアちゃん!この水って・・・!」

「はい。あの『あやつり水』です」

エリーさんに笑顔で返事をすると、エリーさん以外は驚き、エリーさんは「エアちゃん・・・」と呆れています。

「とりあえず、フィシスたちは落ち着いて。で、エアちゃん。これはどういうこと?」

「・・・そういうこと」

私の言葉に、エリーさんはガックリと項垂れてしまいました。

「エアちゃん・・・。私たちに何をさせたいの?」

「お尻フリフリ」

「ちょっ!?エアちゃん!?」

「・・・というのは冗談で」

私が笑いながらそう言うとアンジーさんに背後から抱きしめられました。

「だあれ?私たちを揶揄からかって楽しんじゃってる子は」

「はーい。此処の私でーす」

笑いながら右手を上げると「揶揄うのはフィシスとエリーだけにしてね」とシシィさんに笑われました。やはり、この二人は気付いているようです。

「エアちゃん?『操り水』って、みんなが操られた水のことよね」

ミリィさんの目が泳いでいます。

「大丈夫よ。ミリィ。エアちゃんがくれたブレスレットが光ったでしょ?」

「・・・え?ええ」

「それがね。エアちゃんのアクセサリーの効果なのよ」

アンジーさんから離れてミリィさんの首に抱きつくと、「エアちゃん?」と戸惑っています。

「今度からね。二度と操られたり食中毒事件が起きないようにってアクセサリーを作ったの。でも、口で言っても実感できないでしょ?・・・だから実際に体験してもらったの」

「・・・もう。エアちゃんったら」

ミリィさんは苦笑してから、私を優しく抱きしめてくれました。あの事件からひと月。やっと、納得できるアクセサリーを作れたのです。だから、真っ先にミリィさんたちに贈りたかったのです。

「ありがとうエアちゃん」

私のせいで、皆さんが大変な目にあいました。死にかけた人もいたのです。・・・だから。二度とあんなことが起きて欲しくありません。

私のせいで、誰にも傷ついてほしくありません。
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