私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第四章

第93話

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エリーさんたちの『話し合い』が終わったのは、翌々日の午後でした。
キッカさんから料理のリクエストを貰い、それを纏めて送っていました。朝食分は夕食後にリクエストが来ました。その時点で送り、朝は遅めに起きれるようにしてくれました。



『エアちゃん。戻ったわよ。『報告会』をするから出てきて』

エリーさんから連絡が来たのは16時を回った頃。すぐにテントを出ると、多少疲れた表情をしたエリーさんが笑顔で立っていました。

「エリーさん!」

急いで結界石をひとつ取り、そのまま収納で結界石とテントを回収してからエリーさんに飛び付きました。エリーさんは私を抱きしめると、大きく息を吐きます。

「あー。やっと『終わった』って実感出来たわ」

「エリーさん。おかえりなさい」

「ん。ただいま」

私を抱きしめて、安心したような声で言葉を吐き出すエリーさん。何方どちらからも言葉を発することなく、ただ静かに時間が流れていました。
そんな時、荷台の後ろの幕が誰か捲られました。

「おい。エリー。報告会は俺たちのテントでいいな」

「私の邪魔をするな」

「あ、キッカさんおかえりなさい」

「ただいま戻りました。エリー。落ち着きたいなら、先に報告会をしてからにしろ。全員待ってるぞ」

「・・・・・・チッ」

渋々という感じで、エリーさんが抱きしめていた腕を緩めました。

「エリーさん?」

「色々と大事な話があるからね。エアちゃんが困ることにはならないから安心して」

「アルマンさんは?」

「大丈夫よ。アルマンはすでに『この国セイマールとは無関係』だから」

「これからも『冒険者のアルマン』さんですか?」

「そうよ」

「・・・よかった」

あんな『どうしようもない』人たちを追い出して、『王兄』のアルマンさんが王様にされたら困ります。



「じゃあ報告会を始めるわ。長くなるけど、終わったら『お疲れさん』の飲み会をするから」

「料理ならいっぱいありますよ?」

「じゃあ、用意するのは飲み物だけでいいな」

そんな会話から始まった『報告会』は、驚くことばかりでした。

「えー!この国は無くなるのか!」

「そう。『エイドニア王国私たちの国のセイマール地方』となるわ」

「こんな国を貰っても、国の利益にならんだろ」

「それなんだがな。エアさんが「なんでこの国の偉い人は神様に謝罪しないのか?」と俺に言っていたんだが・・・。そいつを、エアさんを監禁した連中に実行させた。王城内の神殿で声を出して謝罪させ続けたんだ。「生命をうしないたくなければ心の底から謝罪しろ」と脅してな」

「ああ。あれは滑稽だった」

思い出したのでしょうか?アルマンさんだけでなく、エリーさんとキッカさんも笑っています。

「エアさん。アルマンにそう言ったんですか」

「はい。『神様の罰』なんだから、神様に謝って許して貰うのが当然でしょう?王様が一番悪いのに、王様ってだけで辛い思いをしないで『関係ない国民が苦しめられる』っておかしいでしょう?お城の中は結構充実してましたよ」

「ああ。エリーに連絡をとってからエアさんと合流したんだがな。結界の中でエリーを待っていたんだが、その時に事情をよく知らんエアさんが、連中の前で『フルーツパフェ』を食ったんだ。・・・あの時の『おかしな顔』を写真で残してくれたんだが・・・。クククッ。あのアホ面、公開すると言ってやったら、神殿でも必死に謝罪してたぞ」

「え?」

「なんだ?」

「これがエアさんに見せた顔?」

最初驚いていた皆さんでしたが、すぐに笑いが広がりました。

「俺はちゃんと「公開する」と言ったぞ。それにひと言も『何かをしたら公開しない』とは言っていない」

アルマンさん。思わせぶりな言葉で、全員を操ったんですね。
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