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第四章
第91話
しおりを挟む「ねえ、アルマンさん。この国の人たちってアタマ大丈夫?」
あ、アルマンさんは別よ?
そう言うと「分かってますよ」と笑いながら6個目の磯辺巻きを口にしました。アルマンさんの『兄弟喧嘩』は、アルマンさんの圧勝で終了しました。
・・・何故でしょう?『この国の王様』が床に転がっているのに誰もが放置しています。『ゴミはゴミ箱へ』という言葉を知らないのでしょうか?
この部屋にいる誰もが、『次なる悲劇』を招くことも知らずに。
いえ。アルマンさんだけは気付いていたのでしょう。その上で面白がって放置したようです。
「よその国みたいに『私の欲しいもの』をくれればいいだけなのに、なんでこの国は『後宮に入れてやる』とか『抱いてやる。ありがたく思え』とか言ってくるの?」
「理由は簡単ですよ」
「簡単?」
「はい。『バカばっかり』なんです。交渉の立場が下のくせに偉そうなことしか言わないのも。王太子の分際で、自国でも許されないのに他国で少女を誘拐し殺して捨てたのも。それに乗っかって『やりたい放題』してる周囲も。全部『バカが子供を産んで、バカが育てて、シツケも教育もされないバカがそのまま大人になって、さらなる大バカを産む』。その悪循環の結果、誰も『自分はバカだ』なんて気付かない。他国からは『セイマール国は相手にするな』と言われ、孤立していることにも気付いていない」
「そういえば、さっきパフェを出して食べていたら、口開けて涎垂らして見ていましたよ。あとでキッカさん経由で写真を送りますね」
「ああ。じゃあフレンド登録して貰えますか?」
ということで、アルマンさんと『フレンド』になったので直接写真を送ったら、お腹を抱えて足をバタつかせて大笑いしています。
「ほらね。国を導く立場の連中でもこんなバカなんだから、この国が『良くなる』なんて御伽噺の世界だ」
「ずっと気になっているんですが・・・。前の王様でも今の王様でも。偉い人たちでも。なぜ、神様に『ごめんなさい』ってしないの?」
「しませんよ。『バカ』ですから」
今の苦しい状態は国民が働かないからだ。農作業をサボっているから農作物が育たないんだ。すべて『下の者』が悪い。
それが国王たちの、国の中枢を担う者たちの思考回路だそうです。
ひとりでも真面な人がいれば良かったのだけど・・・。
「前王が常識を持った臣下を国外に追い出したからな。周りには耳触りのよい『おべっか』を使う・・・。いや、おべっかしか使わないバカしか残さなかった。それが30年も続いたからこそ、『今の現状』が広がっているのです」
「それに関して、いくつか気になっていることがあります。この『城の中』って・・・」
「あの・・・お話し中、申し訳ございませんが」
話の腰を折られて、瞬時に不快になった私に気付いたアルマンさんに「な?礼儀も知らないバカだろ?」と小声で言われて、小さく頷いて同意しました。
「あの薬の作り方を教えて頂けませんか」
「イ・ヤ」
私が即答すると、一瞬睨んでから「そこをなんとか」と食い下がった。
「私が断ったらすぐに睨んでナイフを掴んだ手を見せて脅しをかけるクズに、なんで懇切丁寧に教えないといけないの?だいたい、あれのレシピは公開されている。だから教える必要がない」
「キ・・・キサマ」
さっきのアルマンさんとの会話を聞いていたはずなんですけどねえ・・・。何故『お願いする側』の態度が大きいのでしょうか?
「おい。そこのアホ。背後を見てみろ」
アルマンさんがアゴで差すと、男は振り向いて腰を抜かしたのか床にへたり込んでしまいました。
男の背後には短刀を向けて睨んでいるアクアとマリンがいます。二人の後ろには苦笑しているキッカさんもいます。
「「アルマン。コイツ おねえちゃんをイジメた?」」
「おお。イジメたぞー。懐にナイフを隠し持ってて、今も隙を見てエアさんを殺そうとしているぞー」
あ、それ言っちゃいますか。
・・・アクアとマリンが殺気を纏っちゃいましたよ。
「あっ!」
「ナイフもってる!」
アクアとマリンが指を差すと、男は慌ててナイフから手を離し、両手を上げたけど・・・。
「それで おねえちゃんを さそうとしたー?」
「それで おねえちゃんを ころそうとしたー?」
「おいお二人さん。『素手で制裁』にしとけ。殺すなよ。痛めつけて二度とエアさんの生命を狙わないように『教育』てやれ」
「「はーい!」」
「キッカ。あずかって」
「アクアのも あずかって」
「其方の広い方で遊べよ」
「「はーい」」
二人が自分の短刀と取り上げた男のナイフをキッカさんに預けると、男を広く空いた窓際へ投げ飛ばしました。
「キッカー」
「なんか ころがってるー」
「「コレもやっつけていーい?」」
あ、アルマンさんの弟で此処の国王だ。さすがにダメでしょ。
「其奴はさっきエアさんを奴隷にして殺そうとしたぞー。それに王都でエアさんを追い回してイジメていた『ワルーい奴の父親』だ。一緒に遊んでやれ」
「「はーい」」
あ、それまで言っちゃいますか。
「エアさん。アレはエアさんが?」
「いや。俺だ。ああ。俺のことならエリーたちとキッカも知っている。他の連中は知らないから言わないでもらえるかな?」
「はい。分かりました。キッカさん。アルマンさんが『兄弟喧嘩』をした後、手当てもされずに放ったらかしにされているんです」
「バカ共がエアさんに回復薬を使わせようと考えているんだよ。コイツら、エアさんを見下しているからなあ。俺が「回復させる必要はない」と言った時に睨まれたなー」
「睨んだの?あの人たち。さっきまでアルマンさんを『王兄殿下』って言ってたのに」
「ええ。慌てて顔を逸らしましたが」
「エアさん。・・・ヤバいことになりそうです」
「どうした?・・・ん?エアさんもどうしました?」
「・・・。エリーさんの気配が・・・すごいスピードで近寄って来ているのですが」
「ああ。俺がエアさんの受けたことをエリーにメールしました」
「お、おい。アルマン」
「手っ取り早く解決させるには『エリーを呼ぶ』のが一番だろ?」
「まあ、確かにそうだが・・・」
「それに『面白そう』じゃないか。エアさんを散々見下して「愛人にしてやる」とか「専属の奴隷にしてやる」とか。さっきもナイフをチラつかせて「薬のレシピを教えろ」と脅した連中が再起不能になるのが『特等席』で見られるのは。だいたい、エアさんがこの部屋に監禁されているのも、バカに「不敬罪で俺たちを皆殺しにしてやる」と脅されたからだ」
「・・・エアさん。それは本当ですか?」
「はい。それに「冒険者なんか殺しても構わない」など言われました」
「言われただけじゃなく、実際に殺されかけたんだよな。彼処で転がっている国王の手で」
私たちの目は、アクアとマリンに蹴られたり、上に乗られて飛び跳ねられている男たちに向けられました。
「そういえば、後から来た人って誰ですか?」
「ああ。薬師長のようですね」
「私の薬の成分が調べても分からなかったみたいで『作った私を殺してでも作り方を吐かせろ』って・・・」
「アクア。マリン。ナイフを隠し持ってた方、エアさんをお前らから『奪おう』としていたようだぞ」
「もうすぐエリーが来るからな。その前に徹底的に潰しとけよ」
「「 はーい!」」
・・・キッカさんとアルマンさんが、二人をさらに煽っています。エリーさんが到着したら、さらなる悲劇が待っている気がします。
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