私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第四章

第81話

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調合ではないのですが、ただの水に『洗浄』の魔法を使ったら『きよらかな水』が出来ました。それと薬草を使って調合したら『いやしの水』が出来ました。・・・たしかゲーム内では、これと麻糸を調合すれば『癒し効果』の服飾品が出来たはずです。この清らかな水や癒しの水を料理にも使えないでしょうか?そうしたら『食べるだけで心身が癒される』と思います。
・・・何より、私の気持ちが落ち着くようになればいいのです。

まず、自分の飲み物で試してみましょう。
紅茶を清らかな水を沸かしてれてみた。

「・・・美味しい」

雑味はなくなり、紅茶本来の味が出てて美味しいです。でもそれだけ。何も効果はありません。味を引き立てるのが効果でしょうか。
次に癒しの水を使って同じ方法で紅茶を淹れて飲んでみました。すぅーっと気持ちが軽くなり、胸のつかえが少し消えました。

何方どちらもレシピ登録の表示が出たので登録しましたが『清らかな水を料理に使う』と『癒しの水を料理に使う』というレシピ名でした。内容を確認すると、何方の水も料理や飲料に使うことで使用料が発生するようです。
ちなみに清らかな水は料理レシピ。癒しの水は調合レシピに登録されました。清らかな水のレシピは悪用防止のため、ポンタくんだけレシピの使用料免除にしました。職人ギルド全体を対象にすると中には転売や高値で売りつけるとかする人が現れそうですから。それに貴族たちが脅したりして無理矢理作らせる可能性があります。実際に私の薬師や料理人としての価値に目をつけて、悪用しようとしている貴族たちが何十人もいます。だから、貴族に対抗出来るポンタくん以外に許可を出さなかったのです。

・・・一応、その旨をポンタくんにチャットで伝えました。ポンタくんからも『トラブル回避のためにもそれで十分です』と返事を貰いました。清らかな水をポンタくんが作って、豆腐屋や製麺所などに無償で提供するそうです。
私が作りまくっている万能薬や各種回復薬もポンタくん経由で商人ギルドにおろされることになりました。『祝福を受けた薬師』の作った薬は、通常の10倍の値段で販売されるそうです。作った薬をポンタくんに渡して効能などを調べて貰ったら、それだけの価値があったそうです。売れた場合、商人ギルドと職人ギルドに1割ずつ。残りの8割が私の取り分だそうです。
通常の回復薬(小)は300ジル。それが私の作った回復薬(小)だと3,000ジル。各ギルドには通常の回復薬を売った金額と同額が入るのです。
何故冒険者ギルドで売らないのか尋ねたら、『貴族たちが買い占め出来ないようにするため』と言われました。貴族たちと貴族に仕えている人たちは商人ギルドと職人ギルドでの購入が出来ないという取り決めが成立しているのと『散々迷惑かけておいて購入しようなんて図々しい』とのことでした。
そして購入代行者対策として『一度に購入出来る上限は総数10個まで』だそうです。身分証で支払えば記録に残ります。そのため、何方かで購入したのに、もう片方のギルドで『二度目の購入』が防止出来るそうです。高額になるため現金払いは少ないでしょう。さらにズルをすれば長期で10日間、そのギルドで購入が出来なくなるそうです。

『誓約により貴族たちやその使者たちは二度とエアさんに迷惑を掛けることはありません。連中は職人への接触が出来なくなりました。もちろんエアさんは商人ギルドと職人ギルドの両方に所属しているので、二重の誓約で身柄は保護されています』

ポンタくんの説明で気付きました。その誓約で二度と『聖女探し』に巻き込まれないのではないか、と。そしてレシピ無償提供の強要にも貴族たちが絡んでいるため、結構な人たちが接触出来なくなったようです。あと残っているのは『宿屋併設の料理屋や酒場などの個人経営者』だけです。彼らは商人ギルドに所属しています。そのため、シェリアさんが喫茶店への営業妨害などの事実を公表したため、人々が彼らの店に行かなくなったそうです。

「全員が広場で土下座して謝罪したけど・・・。喫茶店にもエアちゃん本人にも謝罪していないでしょ?だから『ただの集客パフォーマンス』として、さらに周りから見放されているわ」

集客パフォーマンスなら、私や喫茶店に土下座すれば効果あるのに。『当事者には頭を下げたくない』ということでしょうか。彼らは気付いているのでしょうか?レシピは『権利の神』の管轄なのだと。喫茶店は『商売の神』の管轄なのだと。そう考えれば、商売が上手くいっていないのは『神の罰』の可能性があることを。
そう指摘したら、シェリアさんから彼らに話してくれることになりました。

実は屋台ギルドが何か言ってくると思ったけど、そんなことはありませんでした。屋台ギルドは私のアイデアで作られた携帯コンロの恩恵を受けているため、「これ以上、欲を出してどうする」となったそうです。それに私のレシピを使っても『エア・ズ・カフェ』と比べられて、味が違ったりすれば酷評されて客足が遠のくだけです。

「屋台は客の評価で儲かりますし廃業します。エアさんのレシピで商売するなら使用料を支払って当然です」

アジトの応接室にシェリアさんと一緒に面会に来た屋台ギルドのマスター、ジリアーノさんとサブマスターのモーラスさんは屋台ギルドで携帯コンロを使って商売する旨を伝えに来てくれました。
その際に、失礼を承知でレシピのことを聞いたのです。そして「その気はない」と返事を頂きました。

「大丈夫よ、エアちゃん。この二人は『義に厚いドワーフ族』よ。そして商人ギルドの元スタッフだったの。だから、その・・・信じてもらえるかしら?」

シェリアさんの言っている意味が分かりません。そのため小首をかしげると「あの・・・エアちゃん・・・?」とシェリアさんが恐る恐るおそるおそる聞いてきました。

「シェリアさん」

「なっ、なに?!」

シェリアさん。ビビりすぎです。

「シェリアさん・・・不審人物みたい」

「ちょっとぉ!エアちゃん、ヒド~い!」

「シェリア、悪い・・・。私もそう思った」

「俺も」

「えええっ!ちょっと!なんでー?!」

「シェリア。エアさん相手にビビり過ぎ」

シェリアさんを『不審者扱い』って、私だけではなかったようです。

「ねえ、シェリアさん。私も『商人ギルドの加入者』ですよね?」

「ええ。そうね」

「そして、シェリアさんは『商人ギルドのマスター』ですよね」

「そうよ」

「屋台ギルドは商人ギルドに所属しているんですよね」

「ええ・・・」

「だったら『屋台に関することは、この二人に一任するわ』で良くないですか?」

「そうなのよね。シェリアってギルドマスターなのに、時々気が弱くなるところが難点なのよね」

「だって!エアちゃんは、レシピで貢献してくれているのよ!エアちゃんのレシピの売り上げはダントツなのよ!エアちゃんのレシピの売り上げがギルドの『頼みの綱』なのよー!」

・・・最後に本音爆発ですか。

ジリアーノさんとモーラスさんも呆れて見ています。シェリアさんは自分の失言に気付いていないようです。

「私・・・レシピを登録するの、止めようかな」

「え?!ちょっとまって!なんで?!」

「シェリア。いま『商人ギルドは、エアさんの存在より彼女のレシピにしか価値はない』って言ったのよ・・・。気付いていなかったの?」

「えっ!ち、違うの!エアちゃ・・・!きゃあー!」

立ち上がったシェリアさんを飛翔フライ魔法で浮かせてから『空気の膜』で覆いました。屋台ギルドの二人は目を丸くしています。

「エアちゃん!出して!」

「や・あ・よ。アクア~。マリン~。おいで~。『おもちゃ』だよー」

応接室の扉を開いて廊下に声を掛けてみました。普通の声ですが、あの『耳がいい』二人は「「はーい!」」と言いながら応接室まで駆けて来ました。

この二人。私やエリーさんたち。『鉄壁の防衛ディフェンス』の皆さんにマーレンくんとユーシスくん兄弟。つまり『二人が大事だと思う人たち』の居場所が分かってしまうようです。
そのため、『私のお迎え組』に入って『森の中の木の上』にいた私を見つけられたのです。

「おねえちゃん!おもちゃ?」

「アレがそうだよ」

観音開きの扉を大きく開いて中が見えるようにしました。

「あー!シェリアだー」

「シェリアとあそんでいいのー?」

「いいよ」

「「わーい!」」

二人は重さが気にならないようで、ボールを軽々と持ち上げて、大喜びで廊下へ飛び出して行きました。

「い~や~~あ~~~!!」

シェリアさんの悲鳴が廊下に響いていますが、すでに姿は見えません。

「あの・・・エアさん。シェリアは、その・・・大丈夫なんでしょうか?」

「んー?あの子供たちがどんな遊びをするか分からないけど・・・。まあ、キッカさんたちが見守ってくれるので、遊び終わっても生きていると思いますよ」

「エアさん・・・。キッカならエリーと一緒に『交渉関係』で留守ですよ」

子供たちが向かったのとは反対、私の後ろから声が聞こえました。

「あらまあ。じゃあ・・・頑張って!」

ポンッと私の前に現れたサリーさんの両肩に手を乗せたら目を丸くされました。

「え?!オレ?オレが?ムリムリムリムリ!」

「大丈夫。シェリアさんが白目むいて泡吹いたら止めればいいだけだから」

「だから無理ですって!」

「・・・早く行かないと、大変なことになっていたりして」

「あー!もう!」

サリーさんは泣きそうな表情でアクアとマリンがいるだろう場所へ走って行きました。





「エ、エアちゃん・・・。シェリアは?」

「知らな~い」

走って来たのでしょうか。フィシスさんが息を切らせて応接室に入って来ました。

「それよりフィシスさん。お客さんいますよ?」

私の言葉で、やっと此処が応接室で、私の向かい側に二人座っているのに気付いたようです。

「あっ!・・・不作法をお詫びします」

フィシスさんが頭を下げると、ジリアーノさんが「フィシス。頭を上げて」と声を掛けました。シェリアさん経由のお友達でしょうか?

「え?!ジリアーノとモーラス?どうして二人が此処へ?」

「ああ。今日は『屋台ギルドの代表』として、屋台での携帯コンロの使用許可を頂きに」

「え?でもそれってシェリアと一緒に面会するって話だったハズじゃあ・・・」

「でも。今はアクアとマリンの『遊び相手』になってるの。だから、何処にいるか分からないの。サリーさんが一緒に居ると思うけど」

「そう。じゃあ探してみるわ。お騒がせしました」

フィシスさんは頭を下げて応接室を出て行きました。

「じゃあ我々も失礼させてもらおうか」

「そうね。使用許可を頂けたし」

「ではお気をつけて」

ジリアーノさんとモーラスさんを玄関まで送りました。きっと今からシェリアさんを探すのでしょう。

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