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第四章
第78話
しおりを挟む朝起きてすぐ、セカンドハウスに向かいました。
そして、温水プールに一番近い温室『一号館』に前日購入してきた種や苗木を植えてみました。此処なら『高温多湿』という条件に合うんじゃないかと思ったのです。此処で育ちが悪かったら、隣の『二号館』に移動させましょう。それ以降の温室では、多湿という条件に合いません。
この世界には温度計も湿度計もないのですが、温室自体は一定の温度と湿度を保っています。
此処で使っている土は魔法で出した物です。ミミズみたいに土壌に良い生き物はこの世界にはいません。そのため、手探りで育てるしかないです。この温室を作った時に『四号館』で育て始めた『かすみ草』と『数種類のバラ』と『数種類のひまわり』ですが、これらは元気に育っています。
・・・いえ。訂正します。『元気に育ちすぎ』ています。
バラは通常は『樹木』ですよ?一般人が育てるなら苗木からです。私が担当している研究所で「バラの種を見たことがない?じゃあ分けてあげよう」と言われて頂いたものです。
バラは『親と同じバラに育たない』そうです。
「人間みたいだろう?親から生まれた子に個性があるように。同じ親から生まれた兄弟姉妹が違うように。双子や三つ子でも個性が違うように。バラにも個性があるんだよ」
だから、どんな子が生まれてどんな子に育つのかが面白い。と植物研究をしている所長さんは言っていました。そのため、いくつにも小分けした袋で分けてくれました。他の職員さんたちからも各々が研究している植物の種を譲られました。
ひまわりも、黄色だけでなく赤色やチョコレート色などカラフルな色があるそうです。
譲った種がこんな異世界で、それもテントの中で元気に育っているなんて知ったら、研究がしたくて、でも出来なくて。大変残念がっていたでしょう。
育ちが悪かったら、腐葉土を作ろうと思ったのですが・・・。魔法で出した土は栄養が含まれているのでしょうか?ただ、日本から持ち込んだ植物には十分栄養があるようです。
キッチンに移動して、昨日購入した『カリー』を使って、定番の『カレーライス』を作ることにしました。牛肉はもちろん、豚肉はブロック肉を使うタイプと薄切りタイプ。鶏肉は手羽肉。そしてシーフードとキノコを含めた六種類。
カリーは水で溶いて濃さを調節しましたが、辛さは中辛でした。福神漬けに辣韮漬けはまだ見つかっていません。
大根で作りたいですが、大根自体見つかっていません。冬と言ったら『おでん』ですよねー。出汁の染み込んだ大根、欲しいですよねー。美味しいですよねー。餅と油揚げはあるから『餅巾着』は作れますし、はんぺんやつみれは作ったし、ゆで卵は作ればいいし、牛すじはあるし。
冬が来て、行商人が滅多に来なくなる前に、大根を見つけたいですね。
エリーさんに鍋を六個と炊きたてのご飯を送りました。鍋の中はもちろんカレーです。
『昨日買った『カリー』で作った新作料理です。お昼にどうぞ。おかわりは沢山あります。夜にでも感想を聞かせてください。辛いので、アクアとマリンには小鍋に作ったカレー以外、食べさせないでください』
盛り付け方は自分用に皿に盛った写真を撮って送りました。『スプーンで食べてくださいね』というひと言を添えて。お昼前に送ったので、お昼ご飯に食べてもらえるでしょう。
ちなみに、二人のカレーは『すりおろしリンゴ』とハチミツと少量の牛乳を混ぜて甘口を作りました。ただ他にも『辛いものが苦手』という人もいると思うので二人には多い量を作ってあります。
私は少し早い昼食をとって、調合室で調合をしていると、アンジーさんから連絡がきました。
「アンジーさん?どうかしましたか?」
「エアちゃん。悪いんだけど何か飲み物もらえる?・・・カレーが美味しいんだけど辛くて。でも水では辛さが引かないのよ」
「分かりました。コップはありますか?」
「ええ。それじゃあお願いね」
アンジーさんの後ろで「辛えー!けど美味えー!」という声がいくつも聞こえていました。たぶん、皆さんも水では辛さが引かないでしょう。
アクアとマリンもいるため、牛乳をメインにノンアルコールのサングリアも混ぜた飲み物を送りました。「牛乳の匂いが苦手」という人もいるので、サングリアを混ぜることで匂いを消しているのです。
温めた牛乳に刻んだチョコレートを入れて溶かした『ココア』も作りましたが、カレーには合いません。ちなみにチョコレートは湯煎で溶かして砂糖と牛乳を混ぜて『ミルクチョコレート』を作りました。ちなみに砂糖を入れたのは、甘さのカケラが僅かしかないビターチョコレートのため牛乳だけでは甘さが足りなかったのです。一度溶かしたチョコをクッキングシートで作った箱に入れて冷蔵庫で固めただけです。
牛乳を入れた分、量が増えました。
・・・ちょっと得した気分です。
カレーは大人気で、カレーのおかわりはともかくご飯のおかわりまできました。甘口を食べようとしてアクアとマリンに「「ダメー!」」と断られたそうで、エリーさんから『甘口はあるかしら?』ときました。ちなみにハチミツは『ビー』のと『アントの甘いみつ』の二種類を作りました。私個人の意見で言うならアントの方が甘いです。・・・だから高価なんでしょうね。
王都に戻ってから、レシピを見たオルガさんたちから「なんてもったいない使い方をしてるんですかー!!!」と叫ばれてしまいました。
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