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第三章
第55話
しおりを挟む昨日は入浴後に寝室へ戻るとそのまま爆睡。思ったより体力がなくなっていたようです。
こんな状態でダンジョンに入れるでしょうか?ソロなので『自分のペース』で行ける点はメリットだと思います。
朝起きて、日中は三食時間通りに動いて、夜に入浴して寝る。その『基本動作』でも体力回復とスタミナ維持にいいはずです。
それでもダメなら、水泳でもしましょう。
そういえば、深さのある浴槽がありましたね。『立位浴』用だと言ってましたが。1メートルの深さがあり、長さは18メートルなので『プールの代わり』に購入しました。水量が半端ないので、まだ使っていません。温水プールのようにそこだけ区切ってしまえば、水を入れたままに出来ますね。それが出来るほど浴室は広いですし、隣に部屋を作って区切れば独立した『プール室』になります。
外に作りたかったのですが、本屋のおばあちゃんがくれた本の情報では、この国は雪が降るそうです。この亜空間も雪が降るのでしょうか?そうなったら、冬の期間中は寒中水泳でしょうか?凍った水面でスケートをしてて、氷が割れて寒中水泳になる可能性もあります。
温水プールの隣に『プールの熱を利用した温室』も作れそうですね。
とはいえ、無理は禁物です。
今日は、昨日作らなかったジャムを色々と作りました。イチゴジャムにママレード、ブルーベリーに似た果物のジャムなど。購入した果物は全種類を試してみました。これでスイーツを作り放題って思ったんだよね。リンゴのジャムは作ってすぐに『アップルパイ』も作りました。そして果実酢も作ってみました。完成する日が楽しみです。
カスタードクリームも、昨日の料理で『卵白だけ』を使ったため『卵黄』は残っていたから。それこそ『蒸しプリン』も作った。この2つの違いはカスタードクリームに『小麦粉を使う』のと、蒸しプリンに『全卵を使う』のと『バニラエッセンスは使わない』ってところかな?
そしてゆずは、砂糖を同等量用意して『ゆず茶』も作りました。これで寒い日も安心ですね。
今日は、昨日やめたジャムを作ったら私室のパソコンやタブレットを使う事にしました。
けっしてネットが使える訳ではありません。ですが、ダウンロードしたデータは残っています。デジカメの写真も。
でもそれを楽しむ訳ではありません。
では何をするのか。
温水プールや温室を作る計画を立てました。ですが、そのまま『思い描いた通り』に部屋を増やすのではダメでしょう。そのために、エクセルで設計図を作るのです。
ちなみに、浴室内も何処にどの浴槽を置くのか。深さはどのくらい必要か。隣の浴槽と近過ぎないか。中央部分にはどの浴槽を置くか。
さまざまなことを計画してから浴室を作りました。
温室は温水プールの熱を使います。そのために、『どうしたらいいか』を計画するのです。温水プールをやはり浴室の隣に作るのか。そうしたら、温室は何処に置くか。
このテントの間取り図は作ってあるので、今はそれと『にらめっこ』状態です。
テントは二つ。何方もプライベート用です。ちなみに来客用は二つ目のテントに作成。出入り口を入ったところに宿のシングルルームの『ふた部屋分』をひと部屋にして広く見せています。行き止まりになっていて、『テントの中』には入れません。そして『不審な行動』をしたら自動で追い出します。この機能は、エリーさんが言っていた『誰かのテントに泊まるのはマナー違反』と聞いたため、ステータスの『持ち物欄』からテントをタッチ。詳細を確認した時に『不審な行動をした来客者を自動で排除する』という機能も『不審者がテントの外にいる時に知らせる』探索魔法に似た機能もありました。『オフ』になっていたので『オン』に設定しました。
アクアとマリンが騒いだ時も、後者の機能が発動したのです。テントの外の様子を見るためにカメラ機能があるのも助かります。
「よし。温水プールと温室、完成!」
セカンドハウス側のシャワールームを温水プールに変更。防水・防湿・排水機能がそのまま使えるためです。ただ、部屋の位置はずらして海側へ。海から直接入れるように扉も付けました。テント側は壁にして見えなくしています。その代わりに反対側は全面が窓になっています。そして、海側の扉は二段階。扉と扉の間に1メートル四方の空間を作り、外気が直接プール室の中に入らないようにしています。逆にプール室の暖かい空気が外へ逃げ出さないようにするためでもあります。
そして、海側の壁には、元々あったシャワーもそのまま取り付けてあります。海水浴の後に冷えた身体を温めたり、海水を洗い流したりするのに使うためです。
そして、プール室から客室の手前まで、ガラス扉で区切った各種の温室。客室は出入り口から壁に囲まれています。居心地よくする必要がないからです。そのため、温室側も壁にして見えなくしています。
温室にはプール室から直接行き来も出来ます。これはテント側も窓になっているため、何時でも見られるようにしました。プールに近い方から温室内の温度が高め → 低めになって、最後はテントの外へ排気されていきます。
リュックの中に、コンビニのおまけで貰った『花の種』がいくつかあるので育ててみましょう。
「つ・・・疲れた・・・」
この世界に水着はないため、Tシャツと短パンで『初泳ぎ』をしました。18メートルを1往復しただけで疲れてしまい、あとはグルグル回って歩いただけなのですが・・・。プールから上がれなくなりました。
水面が縁の10センチ下で溢れないよう排水機能がつけてあります。そのため水面にぷかりと浮いてゴロリと転がって上がりました。直後に排水機能のために床より15センチ高くして溝も作ったのを忘れて落ちて擦り傷を作ってしまいました。・・・ステータスを確認すると『擦過傷3日』『打撲7日』と表示されていたため回復を掛けました。
そのため、すぐに両端に階段を取り付けて、安全に上がれるようにしました。
そして休憩用に、丸テーブルと左右にイスを並べた『プールサイドチェア』セットを置きました。もちろん『寝そべるタイプ』です。アルミ製で『防腐処理』されているので、傷む心配はありません。同じタイプで籐製の方は、草原に『日差し避け』と共に設置しています。擬似太陽のため日焼けはしないけど、昼寝する時に眩しかったためです。
風邪をひくと困るので、全身を乾かしてからイスに寝転び、ノンアルコールのサングリアをテーブルに出して、水分補給をしながら休憩。プールでの運動は結構ハードだと聞いていたけど、こんなに体力がいるなんて・・・。それとも、体力がなさ過ぎて動けなくなったのでしょうか。
状態回復をかけて筋肉痛予防はしましたが、後でまたプール運動をした方が良いでしょうか。それとも、毎日少しずつ運動をすれば良いでしょうか。
悩みつつ30分休憩すると、窓の外が『真っ暗』になっていました。ステータスの時刻を確認しても、今はまだ13時を過ぎたところです。そういえば、何方も夜景は『紺色』のはずです。
プール室を出て、もうひとつのテントに向かうと、此方も窓の外は『真っ暗』でした。
「・・・訳の分からないことを悩んでいても仕方がない。時間の無駄ね」
そして、何が起きるか分からないため、まずは昼食にしましょう。食事をちゃんと食べて、何時でも動ける態勢にしないと、いざという時に困るのは自分自身です。
食後に冒険者服へ着替えました。ステータス画面を表示しましたが、チャットもメールも届いていません。次にテントの外の映像に切り替えたのですが、やはり、窓の外は『真っ暗』でした。
この世界にニュース番組はなく、情報は『自分の目』で集めて確かめるしかありません。何が起きているか、自分で確認するしかないですね。
テントを出て、結界石とテントを収納してから部屋の窓を開けました。風が強く、髪の毛がバタバタと音を立ててはためいています。
鑑定のアミュレットが『虫の氾濫』だと教えてくれました。
「エアさん?!危ないから入って下さい!」
背後から聞こえた声は誰だろう?
そう思いつつ、そのままベランダから空を見上げていました。
「エアさん」
ああ。今度はキッカさんですね。さっきの人から呼ばれたのでしょうか?キッカさんは「危ないから入れ」と言わず、私の隣に立って同じように空を見ています。
「何が見えますか?」
「虫」
「・・・ああ。王都で話が出てた『アレ』ですか」
「キッカさん」
「はい。何でしょう」
「コレ。町の彼方此方で火をつけて煙で燻して。町全体を煙が覆うように」
部屋の中に『虫草』を1万本出しました。キッカさんに送ろうとしてもチャットが使えなかったのです。
ポンタくんたちが作っていたのは『個人を守るもの』ですが、いま必要なのは『町を守るもの』です。それがたとえ『一時的』だとしても。日本のキャンプでも、こうやって束にした虫除けの草に火をつけて燻していました。
キッカさんは「なぜ?」とは聞いてきませんでした。すぐに動かないといけない事が分かっているのでしょう。急いで部屋の中に入っていきました。
王都と違い、この町には『虫除け』や『魔物避け』の結界が張られていません。だからこそ、急がないと危険なのです。
大量の蜂が現れたその時に、『この町』が運動場で、『王都』が校舎内。すぐに対策しないと、多数の被害者が出てしまうのです。
「エアさん。部屋に入ってて下さい」
オルガさんに声をかけられて部屋の中に入りました。オルガさんはすぐに窓を厳重に閉めて虫の侵入を警戒しています。
「私は何も手伝わなくて良いのですか?」
「・・・貴重な虫草を大量に提供して頂いただけで十分ですよ。我々にも協力させて下さい」
「私は何をすればいいですか?」
「安全のためにテントの中に避難していて下さい。すべてが落ち着くまでチャットが使えないので心細いでしょうが・・・」
「・・・わかりました」
テントを出して、結界石も四方に置いてからテントの中へ入りました。キッカさんたちのテントから、アクアとマリンが様子を見ているのに気付いたので『逃げた』のです。
まだ、二人に関わりたくないのです。
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