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後編
生まれてくる子は『罪の象徴』ではない
しおりを挟む他国の豪農、彼は我が商会の農業改革に興味を持って熱心に取り入れた変わり者。
新しいもの・珍しいもの好きで、何に使うかわからない物を手当たり次第に買っては執事から呆れられる日々。
「ほう、性的な虐待で慎みを知らぬ娘。それもマチルダの婚約破棄の元凶の一人か。…………そいつは面白い。このまま性の道具に落ちるか、常識を知り自分の愚かさを嘆き後悔するか」
「どうなっても国に戻せないからね」
「もちろん、うちで引き取ってやろう。うちの人間牧場でな」
彼のいう『人間牧場』とはいわゆる娼館・男娼館のことだ。
さまざまな過去を持つ人間たちが、借金の返済のためや自らの過去を悔いて身を堕とす場所。
娼館や男娼館は高級と低級に分けられる。
低級ランクではただ身を売るための場所だが、高級娼館となると飲食と舞楽の接待を二時間受けたのちに芸妓を選べる。
ただし、芸妓側も客を選べる。
接待の際に客の態度を確認しているのだ。
中には、接待は大人しくしているが、二人っきりになると態度を変える客もいる。
避妊という最低限のマナーを守らずにタネをばら撒きたい者もいる。
だからこそ、私の商会と……避妊薬や堕胎薬の取り引きがある。
「精をばら撒きたいなら低級か他所でやれ。女性を侍らせたいなら、それを業種とした店に行け。うちは罪悪感から自分の身を甚振ってそれを罰に変えたい者たちが集う最後の砦。その者たちを守るのが俺たちの役目だ。性に無頓着な女性たちが楽しんだ結果に妊娠という形で罪を償うのは自業自得だ。しかし、罰を与えていいのは自由奔放に女性を玩具か道具のように扱った男たちではない。生まれてくる子は『罪の象徴』ではけっしてない」
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