不貞の末路《完結》

アーエル

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前編

愛情の違いよね

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私の婚約者様は、学園に入学してからオツムのネジがピンッピンッととんでいったようだ。
そして今では、同じようにオツムのネジと下半身の蝶番が壊れた女性たちを侍らせて、同じく下半身の蝶番が壊れた股間を開いて両膝に一人ずつ座らせている。

「ソファーに座って、人間ソファーになって女生徒を座らせて……。ねえ、あの足って痺れないのかしら?」
「ちょっとまって。指摘するのはそこ⁉︎」
「え? 気にならない?」
「たしかに……気になるけど」
「それよりあれは如何なものかと」

私がこの事実を知っても動かないから、婚約者も図にのっている。
そんな私に、待ちに待っていたものが届いた。

「マチルダ・アールス様、お手紙が届いております」
「ありがとう」

手紙を受け取り、チップとして鉄貨を一枚メッセンジャーに渡す。
メッセンジャーは奨学生、もしくは一般の生徒が学生課で小遣い稼ぎとして働いている。
ただし、成績が落ちれば一発でクビだ。

「ありがとうございます」

メッセンジャーはそう言って勢いよく頭を下げると、次の届け先へと早足で離れていった。
差出人は、私の実家と婚約者の実家。
同じ内容の手紙を送ったが、なんて判断したかが楽しみだ。
まず最初に、婚約者の実家から届いた返事を開く。

『浮気程度でグダグダいうな! 結婚したらお前は奴隷同様にこき使ってやるから覚えてろ!』

「あら、まあまあ。私を奴隷に使うんですって」
「「「…………はああ?」」」
「ちょっと待ってね。実家からの返事を読むから」

便箋一枚に脅しと実家への金の無心をしてきた婚約者の実家とは違い、厚さがあるため封筒にマチができてテーブルに立っている私の実家からの手紙。

「相変わらずね、あなたの実家からの手紙」
「愛情の違いよね」

親友たちが、立てた状態で手前から数枚ずつまとめられた便箋を読んでいく。
すべて読み終わり、数枚残してあとは封筒に戻す。

「ちょっと行ってくるわ」
「そのまま帰る?」
「そのつもり」
「じゃあ、この手紙は預かるわ」
「よろしく」

すでに決定が下されたこの報告を、嬌声を上げる女性に気を良くしているにお知らせしましょう。
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