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第一章
2.持ち歩かなくていいのは便利だ
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過去には冒険者たちがパーティに加えようとしたり、国や貴族が取り込んで国を守る結界を張らせようとしたこともある。
冒険者パーティの方は本人の許可を得ていないことがバレて僕に多額の迷惑料を、ギルドには違約金を支払って除名と追放処分。
もし違約金が支払えなかったら、重科罪で労働刑務者になっていただろう。
ギルドから追放されても冒険者として生きることはできる。
素材の売却や旅に必要な食料や武器・防具などは商業ギルドでも可能だ。
ただ依頼が受けられないため高額な成功報酬はない。
そして月1で編成される大掛かりな魔物の討伐隊などには加われない。
国家の政策だとしても、主体は冒険者ギルド。
冒険者としてのランクが高かろうと、信用を失した追放者に仕事は与えられない。
僕に絡んだパーティは、ひと月も経たずに全滅した。
国策でひと月に1回は討伐隊が組まれるくらい魔物が凶化するフィールド。
よほどの自信がなければ、冒険者たちは討伐後の半月の間しかフィールドに出ない。
唯一魔物が引き起こす凶禍が起きないのはダンジョン内だけだ。
そのため、冒険者たちの中にはダンジョンに入ってフィールドに展開する魔物が討伐されるのを待つ。
ただ、フィールドにあわせて魔物が凶化するダンジョンがある。
彼らはそのダンジョンに入ってしまったらしい。
冒険者ギルドに所属していないため行方知れずになっていたが、数ヶ月後に目撃者がいたことが分かり動向が知られた。
どこのダンジョン内の魔物が凶化するかはわからない。
凶禍に一番近いにも関わらず、魔物は想定内の範囲で強くなったけど凶化に至らなかったダンジョンもある。
しかしフィールド上の魔物が引き起こす凶禍がダンジョン内では起きないため、フィールドにいるよりはマシだ。
フィールドで起きる凶禍で代表的なものは、討伐直後に死臭で数百メートルが死滅することだろうか。
僕の結界は決して破られることはない、死臭も結界に触れれば消滅するから。
ここで僕の結界の話をしよう。
結界師という滅多にない天恵を受けた僕の作り出す結界は、魔法や魔導具による結界とは違う。
僕個人でも、テントや宿の部屋や家、村も町も国も。
結界を張ったら解除するまで半永久的に有効だ。
そしてこれは僕にだけ有効だけど、僕を覆う結界に触れれば一瞬で消滅する。
それは僕の結界が天恵によるもの……つまり『神が作り出す聖魔法』のため、魔物はともかく冒険者も貴族も国王も。
誰も僕に触れられない。
触れて消滅したら僕には経験値が入る。
ドロップアイテムは自動でカバンに入る。
カバンには結界が張ってあって、なんでも入れることができる。
中に手を突っ込めば、中に何が入っているか表示される。
問題は、僕が知らないうちに結界に触れた魔物が入っていたり、襲いかかってきた冒険者や貴族の護衛や国の兵士たちが結界で消滅して、彼らが持っていたアイテムやお金をドロップアイテムとして手に入れていること。
誰かの所有物だったとしても、すでに所有権は僕に移っている。
襲いかかってきた慰謝料として受け取って、いらない物なら売り払うだけだ。
「今日はそろそろ休もう」
土壁のダンジョンを抜けて階段を降りた先は草原だった。
天は高く、雲も陽の光もある。
木は植わっているものの、完全に身を隠せる場所は見当たらない。
それは魔物が近付けば分かると同時に、魔物からも此方の様子が分かるという状態。
一番いいのは複数のパーティで集まって寝ることだろう。
そうすれば、見張りは1回で済む。
多ければその見張りの時間も短くて済むのだ。
小さな窪地を見つけて、中に誰もいないことを確認する。
カバンの中から手のひらに乗るくらい小さな僕専用のテントを取り出すと地面に置く。
小さくて置き物みたいだけど、これは持ち歩ける自宅だ。
地面に置けばすぐに二階建てのコテージになる。
天井が低いダンジョンだろうと、狭い洞窟だろうと。
僕の結界に覆われたこのコテージは空間魔法で覆われているのと同じで、見た目が三角テントのように小さく見えてもコテージの中は何部屋もあって広い。
今は僕の部屋とキッチン、風呂やトイレの水回りと物置きがあるだけ。
荷物のほとんどはこのコテージに置いているため、持ち歩かなくていいのは便利だ。
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