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第8話
しおりを挟む彼女たちが地下牢から出された頃、点在する王領地には新たな国営の農場が出来ていた。
つくったのは施設を卒業した元貴族たち。
これから地下牢から出された罪人たちは点在している農場に農奴として従事する。
…………田も畑もない、更地。
見えるのは、広大な更地に遠くまで続く高い壁。
すでに鞭打ちで声を涸らした彼女たちは声を発することもできない。
もちろん、ここにも管理者はおり、少しでも怠ければ鞭がとんでくる。
いままでは親の爵位を笠に着て自ら動くことのなかった彼女たちは、素手で土に触れる。
虫が出てきてコンニチハと挨拶をされると声にならない悲鳴をあげていたものの、手が止まれば遠慮なく鞭がとんでくる。
唇を噛み締めて、鋤や鍬を手に耕している。
席に座れば出てくる料理の数々。
それが当たり前ではないのだと……自分には常識がなかったのだと後悔しても…………
すでに巻き戻ることの出来ない過去の自分を思い出して後悔する。
その中に、反省した者はいたのだろうか。
カナコは…………どこにいったのか。
誰も姿を見ていない。
ただ言えることは
「異世界人なんて研究対象になるでしょうに」
これまでは親衛隊だけでなく国王や重役を任された男性までもがカナコに夢中になっていた。
そのため手出しができなかったのだ。
「異世界人には我らに悪影響のある何らかの気を持っておるやも知れぬ」
国王たちがカナコにのめり込んだのもそれが理由かも知れない。
そう判断した新王によって、カナコには国家転覆を図った罪人というレッテルを貼り研究所に払い下げられた。
元から人権など存在しない世界。
カナコを…………神は何故選んだのか。
カナコは何故……神に選ばれたのか。
カナコを研究材料として扱っているけど、誰一人として罰を受けていない。
今回はこれが正しい接待だったのだろう。
それとも混乱を招いたことで、神に見捨てられたのだろうか。
神の真意は誰にも分からない。
(了)
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