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第1話
しおりを挟む3週間前……中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。
それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。
今回、招かれたのは若い女性だった。
王城に招集された私は、言い渡された決定を胸に王宮内を歩く。
ふと王妃様の大事にされている花園から甲高い笑い声が響いた。
共に聞き馴染んだ声は、私の婚約者で第四王子ノーマット殿下だった。
「王妃殿下のプライベート・ガーデンに? いくら王子といえど、許可なく入ることは許されていないのに……」
王族にはゆっくりできる場所がない。
そのため、花を好きな王妃殿下はプライベートの庭が与えられている。
ちなみに国王陛下はプライベートの図書室をお持ちだ。
私は先ほど入る許可をいただいている。
ノーマット殿下がどこにいるか分からないためだ。
ひどい話だけど、異世界から来た少女が「気に入った」との理由で、王妃殿下の許しを得ず勝手に入り込むことが多い。
それも王妃殿下が自ずから丹精に育てた薔薇を摘み、花弁の多い花を手折っては1枚ずつ抜いていく遊びをする。
注意をすれば、目を潤ませて「私は悪くないのに、なんでそんな酷いことを言うの?」と相手を悪くいい、私を含めた数十人に「虐められた」とありもしない罪を押し付ける。
いまではそんな涙に絆されたノーマット殿下を始めとした側近男性たちが親衛隊と化していた。
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