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84.
しおりを挟む注射と看護師の手が効いたのだろう。
開腹手術による痛みから解放された私は初めてぐっすりと眠れた。
人の気配がして目を開けると、何度もきていた看護師が立っていた。
「今、何時ですか?」
そう聞いたら、すぐに時計を確認して「深夜の1時を過ぎたところです」と教えてくれた。
「もう何日かたった朝5時ごろかと思った」
そういったら笑ってくれた。
腹部の痛みがなく部屋が明るくなっていて、そう思ったからだ。
病院だから窓の外が明るいのもそう感じた理由。
実は看護師がくる前に不思議なことがあった。
私には何度か起きて慣れたことだけど……
病室内が青白くなり、右側臥位で寝ていた私の背後に二人の気配があった。
「よく頑張ったわね。もう大丈夫よ」
優しい女性の声。
彼女は『異世界生活』に出てくるアリスティアラのモデル。
私に姿を見せてくれるのはこれで何度目かな?
背後にいるのに姿が脳裏にはっきりと浮かぶんだ。
彼女に寄り添うように、一緒にいるのは同じ小説のキャラ、創造神のモデル。
……相変わらず、無口だなぁ。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんも一緒?」
その言葉に返事はない。
でも頷いたのはわかった。
「二人とも、お見舞いに来てくれてありがとう。元気になったら、また小説の続き書くね」
「楽しみにしてるわ」
女性の声がして頭を撫でられた。
左の上腕、肩に近い場所に別の手が触れた。
男性の方だ。
滅多に姿を見せないし、喋らないし、もちろん触られたこともない。
「もう今までみたいな痛みはでない。……完全に痛みを取ることはできないが」
「うん、それで十分だよ。ありがとう」
女性に頭を撫でられながら目を閉じた。
男性の言葉通り、翌日から痛みのほとんどが消えた。
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