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しおりを挟む私が自己を把握したのは手術後の手術室だろうか?
右側臥位の私は「便がでそう」と訴えていた。
子宮や卵巣をごっそりとったため、それまで筋腫で圧迫されていた腸が、取り出すときの先生の手による圧迫で誤解したらしい。
しかし、看護師たちはそう言わずオムツをあててくれた。
下腹部の痛みから人はどう動くか。
それは『上へ上へと逃げる』のだ。
私は病室でヘッドボードに頭をあててでも必死に痛みから逃れようとしていた。
人の気配がすると「痛い」と繰り返し、点滴に痛み止めを追加してもらっていた。
吐き気なんて生やさしいものではなく、無意識でガーグルに手を伸ばして嘔吐した。
最初の二回は薬剤のみだ。
しかし、三度目はそれまでの薬剤だけでなく胃液も最後に吐いた。
ナースコールを押したのはそれ一回のみ。
担当の看護師は私が訴えた「痛い」の言葉に注射になる旨を伝えた。
それでも痛みが和らぐのならよかった。
すぐに痛み止めの注射を用意して打ってくれた彼女は、「痛いといわれても、私には注射以外何もしてあげられない」と言いながら私の背中をさすり続けてくれた。
痛み止めの注射だけでなく、その優しい手が私の痛みを和らげてくれた。
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