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14.
しおりを挟む2階の消化器内科に戻って受付を済ませた。
この時点で11時ちょうど。
混んでいる待合室で、電話をかけている薄い水色の作業着を着ている男がいた。もちろん、電話の使用は禁止だ。
「あれ、回し蹴りして壁に頭叩きつけてきていい?」
「やめなさい。看護師が見てるから」
そんな私たちの前に座っている2人の女性。
「あの頭、壁に叩きつけていいかな?」
「檻の中に入ったら面会に行ってあげるわ」
殺気に気付いたのか。数十分話してのちに電話を切った。
そして、席を離れて背後の通路側に移った。
しばらくすると、看護師に次回の診察と検査の予約などの話をされていたが、男の必死な声に誰もが笑いを堪えることとなった。
「病名はつかないのですか」
「検査をしないとつけられません」
「病名がないと保険屋からお金が出ないんです!」
「先生に確認してきます」
「病名をつけるように言ってください!」
「病名は先生がつけるので私たちではつけられません」
「なんでもいいです!」
一度離れた看護師。ブツブツと言ってる男。
私たちの中では『保険金詐欺』という単語が浮かんでいた。
戻ってきた看護師が男に告げた。
「『病名は付けられない』とのことです」
「いつつきますか! 今度検査を受けたらつきますか!」
「先生の話では『病名は永遠につかない可能性が高い』そうです」
そりゃあ、そうだろう。
電話で話していたのは「どんな病名でもつけば保険金がおりるから」という内容。それで「どんな病名でもいいからつけてくれ!」と騒いでいたわけだ。
「頭の悪さがすでに病気だよね」
男が去ってから母にそう言ったら、母の反対隣に座っていた男性が盛大に吹き出した。
男が座っていたのは脳神経内科の前だったからだ。
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