上 下
246 / 249
第十章

第246話

しおりを挟む

さくらの魔法『ボーリング』は絶大な効果があった。
見たことのない魔法のため、魔物も魔獣も逃げることはない。
そしてボーリングの玉が集まった魔物や魔獣を吹き飛ばして『通路の清掃』が片付く。
・・・そう。さくらが転がすのは、さくらが見慣れた『ボーリング場の玉』なのだ。
あの小さなボールで大きなオークですら吹っ飛ぶのだ。

「あの球体が転がる先の魔物や魔獣が吹き飛ぶのは・・・まあ、納得しましょう。
ですが『空中にいる魔物や魔獣まで吹き飛ぶ』のは何故ですか」

必死に心を落ち着かせて質問するロンドベル。
今は結界を張った中で思い思いに休憩しているのだ。

「んー?ただ単に、吹っ飛んだ魔物や魔獣が飛んでる魔物や魔獣を巻き込むから」

さくらは『よく頑張りました』のご褒美で、チョコレートパフェを頬張っている。
確かに、最近のダンジョンは、狭くて戦いにくい通路に出る魔物や魔獣はさくらの『ボーリング』で一気に片付けている。
・・・それ以上に、広場などで戦闘が多いため問題はない。
通路もサクサクッと進めるため、ダンジョンクリアが約1日分早まっている。

「聞きなれた『ボーリングの効果音』を付けたかったけど・・・
それをしちゃうと、魔物も魔獣も寄ってきちゃうんだよね」

〖 そうですね。
『ゲームとは違う』と言うことで諦めましょう。
その代わり、帰ったら遊べる様に『ボーリング場』を作りましょうね 〗

「ヤッター!」

ロンドベルは幼いルーナが達観した理由が分かった気がした。

『さくらが喜ぶ』

そのためにハンドくんは『ボーリング場』なる物を作ると言う。
ふと気付くと、ハンドくんたちが平らな地面に板を敷いてせっせと何かを並べている。

〖 準備出来ましたよ 〗

「やったあ!ボーリング!」

さくらが喜んで駆け寄ると、ハンドくんはさくらが魔法で出している球体に似たものを渡した。

「いっきまーす!」

そう言って球体を胸の前で構えてから数歩進んで行く。
同時に球体を持った手を後ろに大きく振って、その勢いのまま前へと投げた。
球体が板の上を転がっていき、不思議な形の白い物に勢いよく突っ込んだ。

ズッシャーン!

どこからともなく不思議な音がしたと同時に、白い物体が吹き飛んだ。

「スットライク~!」

そう言って、ハンドくんたちとハイタッチをして喜ぶさくら。
球体に目がいっていて、今にも追いかけそうになっていた獣人の3人娘。
最初は目を丸くしていたが、興味を持っているジョシュアたち姉妹。

「・・・これは確かに。
全部倒せたら嬉しいですし楽しいでしょうね」

間違いなく、娯楽として人気が出そうだ。
ロンドベルはそう考えていた。
そして、その通り。
のちにロンドベルが。獣人娘3人組が。ジョシュアたち姉妹が。
・並べるものはすべて同じもの。
・ボールは同じもの
・両手で投げる(後ろに飛ばさないため)
そんな簡単なルールで、路上で遊べる遊びとして教えたら、子供だけでなく大人も気にいって、あっと言う間に国境を越えて大陸全土に広がったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

処理中です...