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第十章
第246話
しおりを挟むさくらの魔法『ボーリング』は絶大な効果があった。
見たことのない魔法のため、魔物も魔獣も逃げることはない。
そしてボーリングの玉が集まった魔物や魔獣を吹き飛ばして『通路の清掃』が片付く。
・・・そう。さくらが転がすのは、さくらが見慣れた『ボーリング場の玉』なのだ。
あの小さなボールで大きなオークですら吹っ飛ぶのだ。
「あの球体が転がる先の魔物や魔獣が吹き飛ぶのは・・・まあ、納得しましょう。
ですが『空中にいる魔物や魔獣まで吹き飛ぶ』のは何故ですか」
必死に心を落ち着かせて質問するロンドベル。
今は結界を張った中で思い思いに休憩しているのだ。
「んー?ただ単に、吹っ飛んだ魔物や魔獣が飛んでる魔物や魔獣を巻き込むから」
さくらは『よく頑張りました』のご褒美で、チョコレートパフェを頬張っている。
確かに、最近のダンジョンは、狭くて戦いにくい通路に出る魔物や魔獣はさくらの『ボーリング』で一気に片付けている。
・・・それ以上に、広場などで戦闘が多いため問題はない。
通路もサクサクッと進めるため、ダンジョンクリアが約1日分早まっている。
「聞きなれた『ボーリングの効果音』を付けたかったけど・・・
それをしちゃうと、魔物も魔獣も寄ってきちゃうんだよね」
〖 そうですね。
『ゲームとは違う』と言うことで諦めましょう。
その代わり、帰ったら遊べる様に『ボーリング場』を作りましょうね 〗
「ヤッター!」
ロンドベルは幼いルーナが達観した理由が分かった気がした。
『さくらが喜ぶ』
そのためにハンドくんは『ボーリング場』なる物を作ると言う。
ふと気付くと、ハンドくんたちが平らな地面に板を敷いてせっせと何かを並べている。
〖 準備出来ましたよ 〗
「やったあ!ボーリング!」
さくらが喜んで駆け寄ると、ハンドくんはさくらが魔法で出している球体に似たものを渡した。
「いっきまーす!」
そう言って球体を胸の前で構えてから数歩進んで行く。
同時に球体を持った手を後ろに大きく振って、その勢いのまま前へと投げた。
球体が板の上を転がっていき、不思議な形の白い物に勢いよく突っ込んだ。
ズッシャーン!
どこからともなく不思議な音がしたと同時に、白い物体が吹き飛んだ。
「スットライク~!」
そう言って、ハンドくんたちとハイタッチをして喜ぶさくら。
球体に目がいっていて、今にも追いかけそうになっていた獣人の3人娘。
最初は目を丸くしていたが、興味を持っているジョシュアたち姉妹。
「・・・これは確かに。
全部倒せたら嬉しいですし楽しいでしょうね」
間違いなく、娯楽として人気が出そうだ。
ロンドベルはそう考えていた。
そして、その通り。
のちにロンドベルが。獣人娘3人組が。ジョシュアたち姉妹が。
・並べるものはすべて同じもの。
・ボールは同じもの
・両手で投げる(後ろに飛ばさないため)
そんな簡単なルールで、路上で遊べる遊びとして教えたら、子供だけでなく大人も気にいって、あっと言う間に国境を越えて大陸全土に広がったのだった。
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