上 下
220 / 249
第十章

第220話

しおりを挟む

〖 3人は『共闘のルール』は覚えていますね? 〗

「はい。右翼・中央・左翼に分かれて戦います」

「えっと。中央は一番強いパーティが受け持つ、だったと思う・・・ます」

「ルーナ。合ってるから自信持って。
パーティが4組以上の場合、戦闘をする3組以外は後衛になり、他方向から来る魔物の襲撃に備えます。
後衛には二番目に強いパーティが・・・」

「アハハ。珍しくスゥが間違えた~」

言葉を詰まらせたスゥを見て、さくらは楽しそうに笑う。

「ご主人様。
ルーナの回答から間違えていたのではないでしょうか?」

〖 では、シーナ。答えはなんですか? 〗

「前衛と後衛には、一番目と二番目に強いパーティが受け持ちます。
そのため、前衛に一番目のパーティが入ったら後衛には二番目のパーティが。
逆に前衛に二番目のパーティが加われば、後衛を一番目のパーティが受け持つ。
それは別の場所から現れた魔物が、前に立ち塞がる魔物より強い可能性があるからです」

シーナの答えにスゥは「そういえば・・・」と呟き、ルーナはシュンと落ち込んだ。

「スゥ。ルーナ。2人の答えは『本の中』での正解だ。
シーナはそこに『もし寄ってくる魔物が強かったら?』と考えて導き出した。
実戦ではシーナの回答が正解だ。
実際に戦闘の音が響けば『弱い魔物』は遠ざかろうと逃げ出し、肉食の強い魔物はたおれた魔物を横取りするために寄ってくる。
『横取り出来る強さ』を持っているんだ。
寄ってくるのは、そのフロアでも強い部類に入る魔物なのは間違い無いだろう」

さくらの言葉にスゥたち3人は黙って頷く。
ジョシュアとジョアンナも同席しているが黙って聞いていた。

「それではご主人が後衛で前衛が私たちですね」

「スゥは真ん中ね。左右は・・・」

「ちょっと待って」

ジョアンナがシーナの言葉をさえぎる。
彼女は信じられなかったのだ。
ヒナルクが獣人・・・右翼か左翼へ配置になるシーナとルーナより強いとは思えなかったのだ。

「残念ですが・・・私では、ご主人の足下にも及びません」

スゥの言葉に驚き、スゥとさくらを交互にみる。

「・・・すみません。
ヒナルクさんは高度の知識があるのは分かりましたが『強い』とは」

「そのうち分かります」

スゥの断言にシーナとルーナが頷くと、ジョシュアとジョアンナは困ったように顔を見合わせた。




ジョシュアとジョアンナの実力は・・・弱かった。
よくこれでこのダンジョンに入ったと思えるくらいに。
レベルの差はあるが、パーティになっていないため『パーティボーナス』はない。
自分たちで強くなってもらうしかないだろう。
魔法も一番弱いルーナと同じかそれ以下だ。

この程度の能力これで、よくこのダンジョンに入ろうと考えたな」

さくらの呆れた声に顔を真っ赤にして頷くジョシュアとジョアンナ。

「今までも、この程度のダンジョンに入っていたから・・・」

「でも『ボス戦以外』は戦ってなかっただろ?」

〖 そうですね。
『共闘メンバーが『隠密』の魔導具を持っていて、ボス部屋までそれを使っていた』と言っていました。
ボス戦は全員で戦います。
15人でボスと戦っていたんですよね?
それを『2人で出来る』と思える心情が不思議です。
どんな心境でそう思うのですか? 
是非ともご教授頂きたい 〗

「あ、あの・・・」

「私たちが愚かだったのです。
いま指摘されて気付きました。
・・・私たちは15人で『ズル』をしてきたのです。
そんな私たちが『今まで出来たから』と思い上がり、考えなしでダンジョンに入った結果・・・このようなていたらく。
本当に『愚か』としか言いようがありません」

「・・・お恥ずかしい限りです」

「そうだね~。
レベルも一番低いルーナよりさらに低いし、魔法も弱い。
それでよく『強敵の中』に入ったねえ~。
入り口付近で『実力に合っていない』って判断して出ていくよね。
・・・まあ、自力で頑張って強くなりな」

〖 そうですね。
今まで『だらけてきた』結果がこれです。
良かったですね。
これが『実力を過信した悪い見本』ですよ 〗

「いつもご主人さまや師匠が言ってる。
『実力を過信すれば死に繋がる』って・・・」

ルーナの言葉に恥ずかしさからか、顔を上げられない2人。
シーナは『過去の自分』を思い出しているのだろう。
パーティを解除された直後の自分を。
だからこそ、困惑した表情を見せていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

異世界に転移したので国民全員の胃袋を掴みます

りゆ
ファンタジー
じゅわわわわっっ!!! 豪快な音と共にふわふわと美味しそうな香りが今日もセントラル家から漂ってくる。 赤塚千尋、21歳。 気づいたら全く知らない世界に飛ばされていました。まるで小説の中の話みたいに。 圧倒的野菜不足の食生活を送っている国民全員の食生活を変えたい。 そう思ったものの、しがない平民にできることは限られている。 じゃあ、村の食生活だけでも変えてやるか! 一念発起したところに、なんと公爵が現れて!? 『雇いシェフになってほしい!?』 誰かに仕えるだなんて言語道断! たくさんの人に料理を振舞って食生活改善を目指すんだ! そう思っていたのに、私の意思に逆らって状況はあれよあれよと変わっていって…… あーもう!!!私はただ料理がしたいのに!!!! 前途多難などたばた料理帖 ※作者の実体験をもとにして主に構成されています ※作中の本などは全て架空です

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

処理中です...