上 下
12 / 249
第一章

第12話

しおりを挟む




「大丈夫ですか!」

目を覚ますと同時にアリスティアラが飛びついてきた。

「コラ。絞め殺す気か」


ほどほどイケメンの男性に無理矢理引き離されるアリスティアラに苦笑しつつ周りを見回す。
あらまあ。美男美女だらけで目の保養♪


「もしかして・・・もしかしなくても。皆さん『神様』ですかね?」

私の言葉に最初は『もう。何言ってんのよ、この子は~』って気配だったのが一瞬で静止画像化。
慌てて姿を隠したけど「もう遅いですって」と笑ってたら、隣からため息が聞こえた。
ありゃ。この男神、アリスティアラと残ってるわ。
「えーっと・・・『創造神』でしょうかね?」と聞いたら『ピンポーン』とチャットで返信がきた。

「お初にお目にかかります。この世界では『さくら』と申します。ベッド上から失礼します」

「いやいや。ウチの女神が『大変』ご迷惑をおかけしまして。『本当に』申し訳御座いません」

ありゃりゃ。創造神から頭を下げられちゃった。
それに所々ですごい強調が出てたぞ。
またアリスティアラが泣きそうな顔をしてるし。

「所で・・・ここはどこ?」

アリスティアラに質問してみる。

「魔物たちを魔石に戻したのは覚えていますか?」

思わず『覚えてい~ますぅか~』と古い歌を歌いかけたらハンドくんに口を塞がれた。
だから首を上下に動かして首肯する。
創造神が私の頭に手を乗せると、『その後』の風景が第三者の目を通して見ることが出来た。



意識を手放した私をセルヴァンが慌てて抱きかかえ、何度も身体を揺すったりしていた。
ハンドくんに気付いたドリトスがセルヴァンに指示して、セルヴァンが私を抱えてハンドくんとドリトスに続いて廊下へ。
そのままどこかの部屋まで私を運びベッドに寝かせたら、2人はハンドくんたちに部屋から押し出された。


「そして神様たちがついていた?」

「世話をしてたのはハンドくんたちですけどね」

「精神的な疲れだったから、我々ではどうすることも出来なかったからな」

そういえば『あの時』たくさん現れたハンドくんたちは?

『この部屋の換気をしていたり、綺麗に掃除をしてたわよ』

『掃除と同時に監視魔法の解除とか』

『魔法アイテムの無効化とか』

『ほーんと』

『『『『賢い子たちよねー!!!』』』』


まったくです。




「どのくらい寝てました?」

「2日間よ」

貴重品ボックスを確認すると、魔石は305個。
そりゃあ疲れるわ。


「私の体内の浄化、してもらってたんですよね」

ありがとう御座いますと言ったら、創造神が目を丸くした。
だってあれだけの数を浄化し続けたのだから、それ相応のおりが体内には溜まったはず。
それが『たった2日』で回復するとは思えない。


「浄化は身体に負担がかかる。無茶はしないように」

「言っても無駄だと思うが」との呟きも聞こえたが聞かなかったことにしよう。


それでドリトスたちは?

『獣人は何度も部屋の前に来てるぞ』

『部屋全体に結界を張っているから、中には入れないし』

『魔法アイテムは無効化してるから、中の様子は確認出来ないし』

「それに関しては、レイソル国王たちにばちを与えておいたから心配はするな」

・・・何をしたんでしょう?

「なあに。『死んではいない』から気にするな」

気にはなるけど。
気にしないでおきましょう。


「・・・ああ。我らは一旦下がろう」

ん?誰か来ました?

「ああ。獣人とドワーフが此方こちらに」

じゃあハンドくん。と目を向けたらグッドサインを見せてくれた。

『ほーんと賢い子よねー!』

神々からの人気が高いわね~。
でもハンドくんは『私だけのお世話係』なんだからね。
誰にも『譲らない』んだから!




「・・・もう具合は良いのか?」

セルヴァンはハンドくんに部屋へ招かれた時は勢いよく部屋に飛び込んできたけど、私を前にしたら耳が垂れてるよ。
ドリトスの笑顔はあまり変わらないように見えるけど。
それでもやっぱりちょっと違うかな?
表情が固い気がする。

「よく寝たから大丈夫です。疲れただけだから」

だから心配しないで?と伝えるとセルヴァンに抱きつかれた。
よっぽど心配してくれていたんだね。
ドリトスを見ると、さっきと違いニコニコしてる。

『まるで飼い主に懐くペットだな』

確かに犬ですね。

『犬だな』

『犬ですね』



「今日はゆっくり休んで、明日にでも改めて話をしようかね」

ほら、ワシらはレイソルたちに明日の準備をさせるぞ。
ドリトスは私から離れようとしないセルヴァンを引き摺って部屋を後にした。

「あのドワーフは我らの存在に感づいていたようだな」

それって気配?・・・じゃないわね。
それだったら、今までもチャットやってるときに気付いていただろうし。


『空気・・・かしら?』

『少し前まで私たちが居たから』

『神殿と同じ『清浄』になってたかしら?』


確かにあれだけたくさん居たなら、この部屋は『神聖化』してたでしょうね。
・・・『この方』も居たし。


「オレか?」


はい。貴方ですよ。創造神さま。





「ところで『聖なる乙女』は、いつコチラヘ?」

ハンドくんが作ってくれたサンドウィッチをつまみながら創造神に聞いてみる。
ちなみにここは、エルハイゼンに用意された『私の部屋』。
王宮の中にある『貴賓室』が私の部屋としてあてがわれている。
広い部屋が3部屋。
応接室、リビング、寝室。
奥には広い浴室もある。

リビングの広い床にラグを敷いて、テーブルを置きくつろいでいる姿はマンションと似ている。
違うのは部屋に鉄扉があることだ。
鉄扉は開いていてマンションに繋がっている。
ハンドくんたちは、マンションで料理を作って運んでくれている。
今度、ドリトスとセルヴァンに食べてもらおう。
こちらの世界に似た料理があるのかとか、味覚が一緒なのかとか知りたいから。
ラノベだと『塩がない』とか『塩味しかない』とかあるからね。
逆に味覚が似てるなら、市井の屋台で食べ歩きも楽しいだろう。


「候補は見つけた」

だがキミが『改革』してる間は連れて来れないな、と笑われた。
確かに連中の恨みは私に向ける気でいるから、この場に乙女が来たら巻き込まれかねない。
それに『私が連中の態度に怒っていなくなる』事で、乙女が居なくなると困るここの連中の今までの乙女への接し方を改めさせるためだ。

「私がいなくなったら、また『乙女は替えがきく』って思われるのもムカつくなー」

何か『失礼な発言』があったら落雷とかを直撃させる魔法でも使おうかな~。
庭に落雷を落とすとか、外にいたら立ってる真横に落雷を落とすとか。
落雷も『雷属性』と『光属性』がある。

「ビリビリさせるなら『雷属性』だけど、周囲も巻き込まれるよなー。でも『同罪』で巻き込んでも良いかな?」

『光属性』は直撃すると危ない。
はっきり言って熱光線レーザーに近い。
直撃すれば『焼滅しょうめつ』しかねない
・・・この大陸では使えないわ。


「『直撃させない』なら使っても良いんじゃないか?」

ああ。脅しで使うなら良いかもね。
地面に『焼き焦げ』を作れば脅しに最適だね。

「彼女をあおらないで下さい!」

エー?
でも『視覚化』の脅しには最適だと思うよ?

「本当は火傷させたいんだけど」

『ホンネは?』

「レイソルあたりを一人、焼滅に・・・」

『よっぽど嫌いなんですね』

うん。『消滅』させたいくらいに。
満面の笑みで答えた私の向かいの席で、腕を組んで目を閉じている創造神がウンウンと頷いてるよ。


『天罰でも与えてやろうか』

『アヤツには運良く後継者もいるし』

『アレと似ず賢い子だよ』


じゃあ、レイソルの手足を一本くらい焼滅させても良いよね。
それくらいなら死なないし。
賢い子なら譲位させて・・・ああ。でも生きていたら口出ししてくるから邪魔だよね。

「やっぱりるか」

「ダメですって!」

必死に止めるアリスティアラの様子に、私や創造神、姿を隠してサンドウィッチを食べていた神々は大笑いした。




翌朝、ドリトスとセルヴァンが迎えに来てくれて、3度目となる『応接室突撃訪問』に向かった。
私はセルヴァンの腕の中。
「大丈夫だから」と言っても離れず、お姫様抱っこを拒否したため左腕で抱えられている。


『おいおい。完全に『猫っ可愛がり』じゃないか』

『これでこの大陸から離れたらどうなることやら』

『獣人を怖がらない『乙女』は初めてだからな』


・・・私は『乙女』じゃないけどね。

でも乙女が許すなら、一年に1~2回位の間隔でこちらへ戻ってこようかしら?


『そして』

『ストレス発散に』


脅しをドン!と。


『一国の王をストレス発散のターゲットにしないで下さい!』

『譲位させれば』

『後腐れなく』

脅しをドン!

『~~~~~!』

私と神々で声を合わせたら、アリスティアラが唸ってた。



最近、神々と一緒に『アリスティアラ『で』遊ぶ』ことが楽しくなりました。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

異世界に転移したので国民全員の胃袋を掴みます

りゆ
ファンタジー
じゅわわわわっっ!!! 豪快な音と共にふわふわと美味しそうな香りが今日もセントラル家から漂ってくる。 赤塚千尋、21歳。 気づいたら全く知らない世界に飛ばされていました。まるで小説の中の話みたいに。 圧倒的野菜不足の食生活を送っている国民全員の食生活を変えたい。 そう思ったものの、しがない平民にできることは限られている。 じゃあ、村の食生活だけでも変えてやるか! 一念発起したところに、なんと公爵が現れて!? 『雇いシェフになってほしい!?』 誰かに仕えるだなんて言語道断! たくさんの人に料理を振舞って食生活改善を目指すんだ! そう思っていたのに、私の意思に逆らって状況はあれよあれよと変わっていって…… あーもう!!!私はただ料理がしたいのに!!!! 前途多難などたばた料理帖 ※作者の実体験をもとにして主に構成されています ※作中の本などは全て架空です

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

処理中です...