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第6話
しおりを挟む私の実の母は市井にある小さな店の看板娘でした。
父に見そめられて子爵家に嫁入りされたのです。
デイジー商会の前身は母の実家です。
そして、子爵家から追い出された私は祖父母を頼りました。
元父から不当な圧力を受けていた祖父母と相談して、一部の業種を祖父母の商会から切り離して商会名と名義をかえて私が会頭になりました。
そして少しずつ私の商会に譲渡する形をとり、半年かけて全部の名義を私に切り替えることに成功しました。
元父から『前妻の実家の商会を潰せ』と命じられていた人たちも協力してくれました。
名義がかわることで商会を潰すことにも成功します。
それは命令を完遂したことにもなるのです。
借金の帳消し、また不当な圧力で取り引き先を潰された人たちを使って祖父母の商会を潰させようとしたのです。
「あなた方は証文を交わしましたか?」
そう聞いたら不思議そうにされました。
そんなんだから足下を見られて犯罪に加担させられるのです。
誰かに気付かれて調査を受けても、実行犯の彼らに罪が問われます。
彼らが『命じられた』と訴えたところで証拠はないのです。
成功による褒賞もなかったのです。
そう説明したら、快く協力してくれたのです。
そして、成功直後に縁を切りました。
だって、簡単に元父を裏切ったのです。
私のことも簡単に裏切るでしょう?
元母は最初に訴えて慰謝料が一番少ない私には半年かかりましたが完済しました。
ですが、私の訴状の後に起こされたたくさんの訴訟と、カトレイヤの殺害未遂にフランソワの殺害。
明るみになった数多の罪により、仮釈放なしの終身刑が言い渡されました。
日々の労働は彼らの慰謝料へと消えているようです。
元父は私への慰謝料を支払い、三年の労働刑で解放されました。
それはフランソワの殺害に関わっておらず、死んだと思ったカトレイヤを捨てるよう命じただけだったから。
しかし刑期を終えて自由になったその日、物言えぬ骸と化して発見されました。
犯人は自宅で首を括っていました。
彼は祖父母の商会に関する一件で元父を裏切り、私に切り捨てられた内のひとり。
あの一件で自分の商会は信用を失い廃業。
家族も離散してしまい、最後に元父に報復して死に逃げた。
しかし知らなかったのか。
元父は罪を償った以上、罪人とはみなされないことを。
罪から逃げたがために、元家族が責めを負うことを。
その慰謝料は終身刑の妻に入り、訴訟の慰謝料へと使われた。
のちにその男は元の屋敷の近くに来ていたことがわかりました。
あの忌まわしい屋敷のあった土地は売り払い、国が買い取って公園となっています。
別の場所に新しい屋敷を建てたことが功を奏しました。
そうじゃなかったら、私かカトレイヤが凶刃に倒れていたことでしょう。
前の屋敷で働いていた全員には新しい屋敷に移っていただきました。
そして新しい屋敷でカトレイヤと一緒に過ごして送り出したのです。
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