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第6話
しおりを挟むスッと浮遊感を感じた直後に落下する。
私の意識は首に強い衝撃を受けたあともそのまま下へ、下へ。
どこまでも続く感覚が不意に消えた。
「殿下、お待ちしておりましたぞ」
「殿下で最後です」
気付くと縛られていた両腕が自由になっていた。
「ここは……ヒィッ!」
顔を上げた私の目に映ったのは……アーシャが、レイフォード侯爵令嬢が毒で倒れた直後に責任を追及されて処刑させた使用人や護衛騎士たち。
「お待ちしておりました」
「先に着かれた皆様はあちらでお待ちでございます」
指し示された先に、処刑台にぶら下がっていた側近たち。
そしてデドッスの運命の相手である伯爵令嬢の姿が。
「……ああ。ある意味『運命の相手』だった」
2人の関係を咎めてさえいれば、このように永遠に続く復讐を受けずに済んだだろう。
後悔など、そのときにならないと分からない。
私は連れて行かれる。
あの日を再現したパーティー会場に。
そして……毒を混入したひとつのグラスを避けて選ぶゲームに参加させられる。
毒を飲んで苦しむひとり。
そのひとりが動かなくなると会場から運び出され、残った者たちでまた毒入りワインを避けて選ぶ。
最後の一人になれば、また全員が復活する。
「さあ、今度は負けません」
「殿下からですわ」
「どのグラスを選ばれますか?」
序列によってグラスを選ぶこのゲーム。
終わる日は……こない。
〈了〉
反省しなければ終わりません。
使用人たちは「あの日を再現」しているのです。
「自分たちがあの日どのような間違いを犯したのか」を確認するために。
責任をとって処刑されたのですから当然でしょうね。
もし現世で彼らの名誉が回復されれば、この地獄から救われるでしょう。
それでも元凶たちに救いはありません。
彼らの名誉が回復されることはないのですから。
使用人たちが地獄から救われても、あの日のパーティーは続きます。
彼らが『やり直したい』のはあのパーティー。
ですが、2人の令嬢が彼らの下に現れることはなく、やり直せる日は来ないのです。
…………永遠に。
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