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第4話
しおりを挟む「んなっ! 無礼者、離せ! 私を誰だと思っているんだ!」
「私の娘を殺そうとした愚か者のブラッケン元公爵」
父が1枚の上等な巻き紙を縦に開く。
そこに現れたのはフランソワ様の父、現国王陛下の勅旨が書かれている。
遠くて読めないけど、父が内容を簡単に代読する。
公爵位を剥奪し、すべての責任を問う。
そんな内容です。
「そんな……ウソだ」
「勅命です」
「いやだ……ア、アーシャ、助けてくれ、アー……」
「馴れ馴れしく呼ばないで。これで何度目ですか? 殺人犯フランソワ」
私の突き放したセリフにフランソワ様の動きが止まる。
「あなたの共犯者のひとり、グラセムはすでに当家との養子縁組が白紙となり実家に戻されました。今ごろ王城前広場でほかの仲間たちと仲良く並んでぶら下がり、あなたの到着を今か今かと揺れて待っていますよ」
「嘘だ! なぜ私たちが……! 死んで、死んでいないじゃないか!」
「死ななかったら何をしても許されますの?」
「俺は王太子だったんだぞ! それがアーシャを巻き込んだというだけで王太子から引き摺り下ろされたんだ! 罰はそれで十分じゃないか!」
「十分じゃないから、接近禁止令で娘との接触を禁止されたのです。それが破られた場合、あなたには生命で償ってもらう。そのために公爵に臣籍降下させて王族との縁を切られたのです」
父である国王陛下に見捨てられた。
それに気付いたのだろう、フランソワ様の顔に絶望色が強く浮かぶ。
フランソワ様は分かっていないのでしょう。
私に毒が盛られ、倒れたのは事実。
直接ワインを運んだ給仕や管理責任者に会場責任者。
数々の責任を問われて処刑された方々がいらっしゃられることを。
『殺人犯フランソワ』
それは私への殺害未遂ではなく、巻き込まれて責任を取らされた何十という方々に対してのこと。
処刑会場まで、罪人は自らの足で歩いていきます。
この別荘から徒歩で20日。
罪人に与えられるのはコップ1杯の水を1日に数度のみ。
待っているのは絞首刑。
飲食を断ち、体内を空にすることで処刑後の後処理を楽にするため。
そして脱走を阻止するためでもあります。
足を止めても、馬上の騎士に引き摺られるだけです。
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