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第1話
しおりを挟む私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。
隣には母が何かを言っているのか口を忙しなく動かしているけど……多分、耳までは届いていると思うけど脳までは届いていない。
何も反応を見せない私に、泣き虫な母の目から滝のような涙が流れた。
⁂
「ひ、久しぶりだな、アーシャ」
ぎこちない挨拶をされて私の心に残っていたフランソワ様への愛情が失われたのを自覚した。
「お久しぶり、でございましょうか。私が目覚めてからそれほど経ってはおりませんが」
私の言葉に肩を揺らすフランソワ様に心が冷えていく。
「アーシャ、実は」
「ブラッケン公爵、すでに私たちの婚約は破棄されております。名前、愛称でお呼びにならないでください」
目を見開いて驚いた表情のフランソワ様。
「私は婚約破棄したままにはしたくない!」
「……汚らわしい」
「アーシャ……」
「名前で呼ばないでください」
「アーシャ、そんなこと言わないで」
「ブラッケン公爵。あなたは自身が何をしたのか自覚していないのですか」
困ったように目が泳いでいる。
つまり自覚していないのか、1年前のことだから都合よく忘れたのだろう。
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