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前編:1
しおりを挟む私の世界の神を迎えるためと連れてこられた神殿。
そこに居並ぶ各国の代表者たち。
「これはどういうこと?」
周りを見回すと、祭壇の前に神官長が真っ白な法衣を着てニコニコして待っていたが、私の言葉を聞いて「おや?」と不思議そうな表情をした。
「どうもこうも、迎えに来られる神にこの世界に残ると申し出て、そのままライナス王子と結婚なさるとお聞きしましたよ」
「そんなこと言ってない!!! 私は帰る! 帰るわ!」
そう叫んだ私にこの国の王子が無理矢理抱きしめてくる。
「そなたを元の世界に帰したくない」
「離して……‼︎」
「私がそなたの家族の分まで愛する。それではダメか?」
「離して……」
「そなたを愛しているんだ。このまま私のすべてを受け入れて……」
〈いい加減にせぬか!〉
私を抱きしめて離さないライナス王子を突然姿を現したエンリーが引き離した。
いつものように私や神官長だけが見える姿ではなく、実体をもって降臨された状態のエンリーに周りは驚いた。
私がこの世界に召喚という形で連れ去られてから、ずっと私のそばでライナス王子たちから私を守り続けてくれたこの世界の神。
それがエンリーだ。
このままでは私の世界の神が近づけないと教えてくれて、私は神殿で保護してもらい世界の脅威を退けることに成功した。
神殿から私が見えない壁で出られないことが幸いした。
そして、誰も私を直接触れないことも。
さっきも私は卵型の透明の膜に覆われてライナス王子には触られていない。
ただ、エンリーに膜は効かない。
エンリーが私を守るために付けてくれた加護だからだ。
それがなかったら、私は既成事実のために襲われていたのだろう。
「何をする!」
〈何、だと? お前は何を言っているかわかっているのか〉
「私は愛している、離したくない。そう言っているだけだ!」
〈そんな都合のいい話があると思っているのか?〉
エンリーにため息混じりに言葉を吐くと、ライナス王子は今度は私を標的に選んだようだ。
「私を愛している。そうだろ?」
「ありえない」
「そんなことはない。お前は私に抱かれたいと願っているはずだ」
「そんなこと絶対ない」
「その男に騙されているだけだ。さあ、私の手を取って。『私を永遠に愛する』、そういえば今までの無礼をすべて許してやろう。さあ、今すぐ神の前でそう宣言しろ! 早くそう言え、私を愛したから元の世界に帰る気はないと」
ライナス王子が縋るように、甘えるように私に声をかけてくる。
しかし、エンリーが私を離さず、私もエンリーの腕から離れようとしないことに苛立っているようだった。
「帰して……私を家族のところへ帰して……」
「私がそなたのそばにいる。それではダメなのか⁉︎」
「……あなたが私の家族の、この世界が私の世界の代わりになると……?」
「ああ、そうだ」
「ふざけないで。あなたが、たとえ国王だろうと神だろうと、私の愛した家族の代わりになんかなるわけないじゃない!」
私の声が静かな会場に大きく広がった。
「なぜ、わからないの? 私を家族から、元の世界から誘拐して。帰られるってわかっていたのに、私の意思を無視して無理矢理結婚させようとして……」
「私はそなたを愛しているんだ。だから」
「私は、私は、あなたなんか好きでもない‼︎ この世界だって大っ嫌い! だいたい、私を誘拐した犯人たちを誰が好きになるもんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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