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第二章
第4話
しおりを挟む「では出直しましょうか?」
「え⁉︎ どなたですか」
「しばらく会わない間に、私の声を忘れてしましましたか?」
そこに現れたのは私の愛しい婚約者様。
「なぜ……? 到着するのは明日だと」
「早く私の婚約者様にお会いしたくて。いえ、一秒でも早く私の愛しい奥様になっていただきたかった。顔を見たかった。抱きしめたかった。……こんなにもあなたに魅せられた愚かな私を、あなたはお笑いになられますか?」
「いいえ、いいえ。私も、私も早くあなたにお会いしたかった」
優しく抱きしめてくれるこの腕を私はずっと求めていた。
ずっと、いつまでも待っていた。
『お嬢様! 早くお逃げください! ギャアアア‼︎』
『いたぞー! この売国奴! 国を売り渡す気だな!』
『いえ、違います!』
『貴様が爵位を返したことが何よりの証拠だ!』
『この国を滅ぼすために! 国を捨てたんだ!』
『違います。私は明日嫁ぐために』
『フハハハハ。すでにお前の待ち人はここには来ない!』
『…………え? まさか』
『ああ、そうさ。お前を迎えに来たバカは俺たちが殺した! 馬車も火の車だ』
『そ、そんなことをしたら……』
『貴様の悪事もここまでだー!』
『キャアアアアアアア!!!』
脳裏に浮かんだ恐怖でギュッと抱きしめると優しく抱きしめ返してくれる。
この温もりは本物、私が待ち望んだ愛しい彼の。
あれは不安な気持ちが私にみせていた幻。
「待っていました。ここで、あなたが迎えに来てくださるのを」
「本当だったら、あのときひとりで帰すつもりはなかったのです」
「私は爵位を王家に返すため。そのために帰ったのです。あなたの腕に何もかも捨てて飛び込むために」
「フフフ。飛び込まれる前に捕まえてしまいました」
「ええ、飛び込む前にあなたの腕という鳥籠に捕われてしまいましたわ」
「後悔、していませんか?」
「後悔するくらいなら、ここで待たずに飛び降りていますわ」
「……そんなことを言われたら、怖くてこの腕を離せないじゃないですか」
「だったら、いつまでも閉じ込めていてくださいな。私が見ず知らずの誰かに奪われないように」
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