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第一章
第8話
しおりを挟む生きのびたからといって自由にはなれない。
処刑された彼らの遺体を北の国へ運ばされた。
ひとりふたりを背負って山を登り、火口から遺体を投げ落とす。
そして休む間もなく麓までおりてまた背負い登っていく。
半数はその火の山から帰らなかった。
足を滑らせて、背負った遺体とともに火口の中へと落ちていったからだ。
その度に火の山はゴゴゴッと音を響かせた。
生きた者を受け入れて喜んだのか怒ったのか、それは分からない。
生きて帰った半数は、火の山の灼熱で姿が変わった。
美しかった髪は焼けて傷み、陶磁器のように真っ白な肌は赤黒く乾き。
何より窪んだ両の目は何の感情も表してはいなかった。
その後の彼らは表舞台から消えた。
彼らのその後を知るのは調査部だけだろう。
不利益となる存在となれば行き倒れとして消すためだ。
死後に北の山へ運ばれた大罪人の中にいたかは分かっていない。
「お嬢様ぁ、そろそろ帰りましょうや」
「なに言ってんのよ。これからが本番よ。私の先祖は何百人いらっしゃられると思っているの。それにここが終わったら、今度はお母様のお祖母様のご実家よ。あちらには冤罪で亡くなられたお祖母様の妹君と婚約者様が待ってらっしゃるわ」
「もうイヤですー」
「仕方がないでしょ。『ご先祖の霊を一人でも多くあの世にお送りしましょう』が最終学年の課外授業なんだから」
「まだ一週間しかたってないじゃないですかー」
「もう一週間もたったのよ。さあ、次のご先祖様はどなたかしら。おいでになったらどなたか調べて日記を探して……」
「出た出た出た出たー! 北の廃墟がー!」
「ああ、あれは300年前の……」
廃墟になっていた北の別邸が夕陽を浴びて鮮やかなオレンジ色の壁を映し出す。
同時に再建された別邸。
その二階の端のテラスに立つ憂いを帯びた女性に、私は父の書棚から300年前の当主の日記を抜きとった。
「ああ、なんてお美しい……」
「毎回惚れるけど、相手は過去の魂だからね。ちゃんとあの世に送ってあげないとアンタの未来で出会えないわよ」
幽霊を怖がるくせにフェミニストなこの執事。
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「あんただって我が家の幽霊なんだからね。最終日にはあの世に逝きなさいよ」
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