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第1話
しおりを挟む貴族として、まあ、これで最後だと私は開き直ってでたパーティー。
王家主催だから断れなかったと言う理由もある。
これを最後に、私は貴族籍から抜ける。
だって、第二子だもん。
兄が次期当主で、私は来週の卒業式をもって貴族からも卒業する。
その先は領地に戻り、錬金術師の祖父のもとで修行が始まる。
それなのに、ウザい連中に囲まれた。
この薄っぺらい連中には面倒な連中が混じっている。
そして彼らは三文芝居を始めたのである。
「アムゼイ王子殿下、お久しぶりでございますな。前回は……そう、レイドリック皇太子の歓迎パーティーでご挨拶して以来となりますな」
「ああ、アダマン伯爵。二年ぶりであったか」
「はい、ところで殿下。そちらの御令嬢を紹介していただけませぬか?」
なんと失礼な。
私のデビュタントから何年たっていると思っているのか。
それをこの伯爵は『知らぬ娘だ、紹介してくれ』と言っているのだ。
先日白紙になったが、私はルービン王子の婚約者だった。
彼は好きな道に進みたいため王族であることを放棄する意思を正直に話し、多大な慰謝料を自身の私財より支払った。
誠実な態度により、婚約が白紙になっても互いに問題は起きていない。
そして二年前、友好国である皇国から皇太子夫妻が外交と称した新婚旅行でお見えになられた際にご成婚の祝福も兼ねた歓迎パーティー。
そのときのホストは王家であり、私も王子殿下の婚約者として表と裏両方に参加していた。
……そのときにアダマン伯爵と挨拶を交わしている。
つまり、『侯爵家令嬢の顔を覚えていない』ということ。
友好国とはいえ伯爵風情がワンランク上の侯爵家を堂々と侮辱したのだ。
それをアムゼイも指摘しない。
私は侯爵令嬢として形式ばった挨拶をした。
しかしそのことに二人の無能は気付かない。
それどころか、ここで茶番まで始めるらしい。
アムゼイが私に近寄りルービンとの婚約の白紙になった謝罪をしてきたのも、この茶番のためだろう。
だいたい、ほかの王族が不在にもかかわらずアムゼイがひとりだけいることが何よりおかしい。
「そうでございましたか。遠目からも仲睦まじく」
「そのようなまだ確定していないことを申されても。周りが本気にしてしまいますよ」
「それこそ吉事ではございませんか。我らはその方が嬉しく存じます。どうです? ここで皆様にそう宣言なされたら」
「それは……私には、まあ。ですが、これは私の一存では決められません」
「あなたはどうです? 将来、王太子妃になれるんですよ? あなたにも、あなたのご家族にも悪い話ではない。そうじゃありませんか?」
「……如何でしょう、私と婚約していただけませんか?」
やっぱりこういうことか。
心の中で唾を吐く。
伯爵を使って、ついでに息のかかったアムゼイ派に周囲を固めさせて、私が『アムゼイのプロポーズを断れなくする』魂胆だったようだ。
アムゼイもアムゼイだ。
私たちの『婚約白紙による契約書』の内容を知らないはずがない。
王子だからなんとでもなる、と思っているのか。
返事をしない私に痺れを切らしたのか、アムゼイが私の左手を持って跪く。
「大丈夫です。何も心配いりません。私のプロポーズを受け入れて、この指輪をしていただけたら」
そう言いつつ勝手に指輪を嵌めようとする。
もう限界だった。
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