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第1章
第21話
しおりを挟む学園生活もひと月経つと新入生たちも生活のペースを掴めるようになっていた。
そして、選択授業に出席しない生徒も出てくる。
「授業内容が思っていたのと違う」
「自分が目指す魔導師にあの授業は必要ない」
選択授業は単位を必要としない。
ただし、最後まで授業を受けなければその技術を修得できない。
教本をひと通り読んだからといって、それがその教科の全容ではない。
それだったら学園に通わず教本を読めばいいし教師はいらなくなる。
しかし、座学と実習は違う。
では授業で習った生徒から教わればいい……?
答えはNOだ。
教師たちの教室には、間違った魔法や魔力の過多は霧散するように造られている。
生徒たちのが過ごす寮の場合は、魔法自体が使えなくなっている。
授業で習った生徒、特に新入生が寮室で自慢するように魔法を使った事故が起きやすい。
教室の特製を知らない、教わっていても脳の引き出しに深く仕舞い込んでカビやきのこを生やしていたり、引き出しから取り出して忘却の川に流したり。
そんな生徒たちの中に覚えている生徒がいたとしても、仲間たちの手で強制的に引き出しを閉ざされる。
忘れた生徒たちは一緒に盛り上がり、善悪もルールも失って魔法を使った結果……部屋に設置された魔導具によって魔力は吸い取られて昏倒。
目を覚ましても完全回復まで数日は要する。
反省室に隔離されつつ謹慎兼回復、魔力が半分回復すれば学園内のトイレ掃除という罰を受ける。
反省室の独房から出たときに初めて知るのです。
自身の評価が地に落ちて、留年が確定したことを。
中には家族に退学が通達され、転校届か退学届が出されて受理されていることも。
「一度のミスで留年だなんて……」
その言葉を口にすれば、『反省の色はなし』と見做されて退学になる確率が大きくなる。
留年が決まり残りの数ヶ月は授業を受ける資格はない。
そんな穀潰しは学園にとって邪魔な存在でしかなく、授業を受けるほかの生徒の足を引っ張ることもあり得る。
そのため自宅待機、学園に居座られても邪魔だから実家に強制送還されて、今後の対応は家族で話し合ってもらう。
誰もが真っ先に留年決定第1号はバグマンだと思っていたが、バグマンは親や周囲に恵まれず躾を受けなかっただけで、周囲からの注意を反発しながらも受け入れている。
「そっちの階段はダメだって!」
「こっちの方が近道だろ……っ、ってえええええ!」
「…………だから、『その階段の手すりが緑色だから下り専用だ』っていったじゃないか」
バグマンが移動中に踊り場で階段を間違えたらしく、今まで上ってきた階段を下りていく。
それがまた1階直行便だったことで、13階まで辿り着いていたバグマンは……
「負けてたまるかあああああああ!!!」
根性で下り階段を駆け上っていた。
「バグマン、減点1。ホーククラス、全員で罰掃除」
「「「せんせー! 何卒お慈悲をー!」」」
「却下」
踊り場まで戻ってきたバグマンは、上から降りてきた男性教師に逆走が見つかって減点を受けた。
さらに逆走を止めないどころか応援をしていた現行犯として、一緒にいたクラスメイトも同罪と見做された。
「どんだけ階段があると思ってるんだよおおおお!!!」
「「「……すまん」」」
「申し訳ない」
ホーククラスの生徒が与えられたのはメインフロアにある階段の掃除。
バグマンは手すりに乗って駆け上がったのを見られた。
その手すりを磨くように命じられたのだ。
巻き込まれた36人のクラスメイトに頭を下げて謝る4人。
ここ最近はこの4人の誰かが問題を起こして、クラスメイト全員はそれに巻き込まれて罰を受ける。
そんなことが数週間に1回、前回は地下にある球技場の観覧席を壊した。
「あれはバグマンの魔力が多すぎたからよね」
「でもさ、ハイテンションになったからって魔力まで増える?」
「「「バグマンは規格外だからさ」」」
「あのときはすまなかった」
バグマンは普通の子たちが遊んだゲームですら初めてだった。
同じく幼い頃から家業を継いでいたため球技を知らないアリシアだったが、コントロールはあるもののバグマンほど魔力が多くないため、観覧席の破壊行動は起こしていない。
ちなみに授業はドッジボールだった。
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