7 / 18
本章
バカよねえ。双子のどちらと婚約したかもわかってないんだから
しおりを挟む「ポーリシア、そっちはどう?」
「そろそろなくなりそう」
「あら、じゃあグレン。奥に乾燥させた薬草があるから持ってきなさい」
「ハイ、喜ンデ♪」
奥の部屋へと入っていくグレンの後ろ姿を見た客の一人が、感心しながら見送る。
「さすが、繁盛店ねえ。あれって最新の人工生命体なんでしょう?」
「ええ、人型だそうです。行動制限もあるんですけど。ほら、ここにはガードロボもいるでしょう? だから試作品を試してほしいと」
「ルーブンバッハ家の人工知能の研究が成功したおかげで、小国として独立が許されたんですもの。今では小国にも関わらず近隣国一豊かな国として認められ、私たちも豊かな生活ができるようになったわ」
「国民思いの素敵な女王様で本当によかったわ」
ルーブンバッハ領は独立して小国として成り立っている。
ユーレシアは旧リッツン領で領地経営を任されていた執事たちと共に領を繁栄させ、アインは好きな錬金術から派生させた人工知能を開発し、人工生命体を作り出した。
アインの研究はポーリシアのため。
彼女は確かに湖に身を投げた。
王族である以上、私たちには暗部が付いている。
私たち姉妹の暗部は我が家の私兵だ。
ポーリシアが襲われたのちに父が付けてくれた。
王家の暗部は見守り報告するだけで助けることはない。
それをポーリシアの一件で暗部に開き直られて、父は激怒して暗部を叩き潰した。
今は父の認めた者だけだ。
そのおかげで、湖に身を沈めたポーリシアを救い出してくれた。
私たちは『ポーリシアは湖に沈んだ』と言ってはいたが、ひと言も死んだとはいっていない。
あの一件以降、ポーリシアは男性恐怖症になっている。
しかし、店には男性の手も必要だ。
ガードロボは半長円形の切断面を下にして立てた姿。
お掃除ロボットは円盤形。
受付・販売員は女性タイプに制服を着せている。
荷運びには向いていない。
そこで、人工生命体の登場だ。
身長が190センチもあるのは、グレンにはポーリシアの手足になってもらうためだ。
……ポーリシアは生命は助かったものの、呼吸が止まって脳に酸素が回らず、手足に若干の後遺症が残ってしまった。
一番の問題は内臓。
心臓をはじめとした内臓が弱って、そのままでは長くないと診断された。
すでに不貞を行なっていたデデを使って婚約破棄をおこなう計画をたてた。
それによって次期当主が私と一緒に住んでも問題がない土台を作るためだ。
その調査中に気付いた、ゼアが妊娠していることを。
すべてを知ったリッツン侯爵は今後の領地繁栄のためデデの廃籍を決めた。
しかし、このままデデを廃籍すれば、いま貴族間で起きている『子息たちによる集団婦女暴行事件』の実行犯による子息たち……第三王子の金魚のフンの大量処分に含まれてしまう。
いや、実際には実行犯の一人だけど……
それが表沙汰になってしまえば、共同事業をしているルーブンバッハ家にとって多大な被害が起きる。
それを別の形で大事にすることで、デデの廃籍を正当化させた。
「デデってバカよねえ。双子のどちらと婚約したかもわかってないんだから」
「私たちの名前もわかってなかったわよ」
「今回はそのおかげで助かったわ」
そう、デデの婚約者は姉のポーリシア。
次期当主のポーリシアと結婚すれば、両家の結婚合併でルーブンバッハ領ではなくリッツン領が残ったはずだった。
それほど蔑ろにされてきたのだ。
22
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
それについては冤罪ですが、私は確かに悪女です
基本二度寝
恋愛
貴族学園を卒業のその日。
卒業のパーティで主役の卒業生と在校生も参加し、楽しい宴となっていた。
そんな場を壊すように、王太子殿下が壇上で叫んだ。
「私は婚約を破棄する」と。
つらつらと論う、婚約者の悪事。
王太子の側でさめざめと泣くのは、どこぞの令嬢。
令嬢の言う悪事に覚えはない。
「お前は悪女だ!」
それは正解です。
※勢いだけ。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
【完結】私の婚約者を奪おうとした妹は、家が貰えると思っていたようです
しきど
恋愛
妹が私の婚約者と一夜を共にしました。
もちろん純愛ではありません。
妹は私がお父様から継いだ財産を独り占めするため、婚約者はこの屋敷を乗っ取るために私より妹の方が組みやすしと考えたため。つまり、お互いの利害のための情事にすぎなかったのです。
問い詰めると妹は案外あっさり浮気の事実を認め、その代わりとんでもない事を言い出しました。
「アズライ様の事は諦めますが、その代わり慰謝料としてこの屋敷の所有権を頂きます!」
……慰謝料の意味、分かってます?
戦術家として名を馳せた騎士の娘、男爵家の姉妹のお話。
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
夜桜
恋愛
【正式タイトル】
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
~婚約破棄ですか? 構いません!
田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~
殿下が真実の愛に目覚めたと一方的に婚約破棄を告げらて2年後、「なぜ謝りに来ない!?」と怒鳴られました
冬月光輝
恋愛
「なぜ2年もの間、僕のもとに謝りに来なかった!?」
傷心から立ち直り、新たな人生をスタートしようと立ち上がった私に彼はそう告げました。
2年前に一方的に好きな人が出来たと婚約破棄をしてきたのは殿下の方ではないですか。
それをやんわり伝えても彼は引きません。
婚約破棄しても、心が繋がっていたら婚約者同士のはずだとか、本当は愛していたとか、君に構って欲しかったから浮気したとか、今さら面倒なことを仰せになられても困ります。
私は既に新しい縁談を前向きに考えているのですから。
滅びの大聖女は国を滅ぼす
ひよこ1号
恋愛
妹の為に訪れた卒業パーティーで、突然第三王子に婚約破棄される大聖女マヤリス。更には「大聖女を騙る魔女!」と続く断罪。王子の傍らには真の大聖女だという、光魔法の癒しを使える男爵令嬢が。大した事の無い婚約破棄と断罪が、国を滅ぼしてしまうまで。
※残酷な描写が多少有り(処刑有り)念の為R15です。表現は控えめ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる