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本章

王都の外で自分の墓穴掘って入ってろ!

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すでに決まったことを何とか撤回しようと無駄な足掻きをするのが二人。
デデとゼアの新婚賎民夫婦だ。

「イヤです、お父様! 助けて、お兄様!」
「父上! なぜ……オーラシア、お前は俺が好きだったはずだ! 結婚してやる! だから俺に侯爵家を寄越せ!!!」
「アホ、バカ、クズ。お前なんか誰が好きになるか」
「ンなっ!」
「ハッキリ言うわ。女を見れば無理矢理襲う男なんてけがらわしい。爵位があろうがそんなこと関係ない。女イコール性欲のはけ口にしか見ないゲス野郎を受け入れるはいない。キモいんだよ! まさか自分は女にモテるとでも思っているの? その発想自体がアリエナイだよ。そんなこともわからんか、このクズ! 生きる資格なんかないんだ。賎民がイヤなら今すぐ王都の外で自分の墓穴はかあな掘って入ってろ!」

カタカタと震える二人。
私がデデとゼアの二人と対面した時点で彼らは賎民。
それは、今この場でという事実に結びつく。
今まで自分たちがしてきたとおり、殴り飛ばし、蹴り飛ばし、階段から突き落として、犯して、たまに殺す。
それがになり、いまも裁判もなく不敬罪で処刑されてもおかしくない。

「ようやく自分たちの立場を理解したか。この場に不似合いな連中を身ぐるみ剥いで放り出せ。その服でも慰謝料の足しにはなる」
「下着も取り上げて頂戴。洗浄したら糸に戻して新たな製品に再生できるから。……コイツらと違ってね」
「はっ!」

私兵たちがデデとゼアの腕を掴んで部屋から連れ出す。
彼らは抵抗もせず俯いて出ていった。

「最後まで元家族に謝罪しなかったわね」
「そんな殊勝な連中タマか」
「ちょっとは期待したんだけどね」
「愚かだから、これが今生の別れだというのが分かっていなかったかも知れないな」

パーティションの裏から『もうひとつ片付ける課題』が余計な口を開いて姿を現した。


「しかし、最後に感謝の言葉を贈ってやりたかったな。『婚約破棄してくれたおかげで私がオーラシアに求婚できる』と」

そう言って私のそばに寄ってきたのを父が立ち上がって塞ぐ。
部屋に残っている、先ほどまで加害者側に立っていた二家族も、私兵たちや侍従侍女たちもウリエラに憎しみの目を向ける。

「これはどういうことかね? 私は第三王子だよ。このような無礼が許されると思っているのかな?」
「貴様は殺しても罪に問わん、と国王陛下より許可をもらっている。そう言いましたよね。黙って死ねや、このクズ」

ウリエラは見下すように私に目を向ける。

「オーラシア。この無礼を許されたければ私のプロポーズを受けろ」
「あなたは、さっき私がデデに言った内容を理解してビビっていたではありませんか」

まっすぐ向けた彼の目が揺れる。
そう、震えていたのはデデとこのウリエラ。
ウリエラも今まで誰彼構わず権力をもって身も心も犯してきた。

「……何を言っている」
「貴様もデデと同じ存在クズだということだ」
「ちち、うえ……? なぜ、こ、こに」

開いたままの扉から入ってきたのは国王陛下。
父親の姿を見て、ウリエラの声が震えて声が途切れる。

「なぜ? 部屋で謹慎しているはずのお前がルーブンバッハ家に向かったと聞いたからな」
「父上、私はこのオーラシアを愛しています!」
「私は愛してなどいない。気持ち悪い、汚物」
「無礼だぞ!」
「無礼なのは貴様だ!」

陛下の言葉にウリエラだけが狼狽えた。

「父上、私は第三王子で」
「婦女暴行でどれだけたくさんの女性を傷付けた?」
「私は尊い存在で」
「尊い存在? 誰が? まさかこのクズが? 陛下、このクズを幽閉にするという約束、反故にしやがった以上は国を滅ぼされても文句はないですよね」
「無礼だぞ、オーラシア!」
「…………へえ。貴様は私と間違えて双子の姉を犯して店の金を奪って。それでも私に愛されていると本気で思っていたのか?」

ウリエラは目を大きく見開く。
唇が震えているが声は出ない。
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