おっさんが神子って冗談でしょう?

佐倉真稀

文字の大きさ
上 下
9 / 10
テオフィリル・シリル・ルウェリン

誘われた。

しおりを挟む
 目が覚めたら天使…じゃなくて神子殿がいた。私を見つめていた。どうやら一足先に起きたようだった。
「…おはよう、王様。」
 可愛い。朝から神子殿に挨拶をしてもらえるとはなんて幸せなことだろう。自然と笑顔になる。

「おはよう、ハル。王様でなくて、テオだよ、私は。」
 手を伸ばして神子殿を引きよせてチュッと口付けた。戸惑って赤くなった表情が可愛すぎる。ああ、もう政務なんか放り出して押し倒したい。

『無理やりはやめろ。』

 幻聴が聞こえた気がして抱きしめた状態から離した。神子殿からも苦しいといわれて仕方なくだ。その後午後が空いていると聞き、デートに誘った。神子殿が昨日散策に行きたいと言っていたから、散策に誘った。
 そうしたら、美しいと噂の神子神殿の中庭。神子と神殿の関係者しか入れないその庭に誘われた。嬉しすぎてまた抱きしめてしまった。早く政務を終えて来なければ。

 私は急いで王宮に戻り政務に没頭した。
 その様子を見て王宮では
『明日は天候が乱れるのでは。』
 と噂になったらしい。

 まだ神子殿が降臨されたことは一般には知らされていない。しかし、異常気象が当たり前の状況になりかけていた世界が一転穏やかになった。砂漠に雨が降った。雨の降り続いていたところは雨が上がった。荒狂う海は凪いだ。
 萎れていた作物が元気を取り戻した。魔物の襲撃が減った。

 そんな状況は神子殿のもたらしたもの、と言うほかはない。わかってしまうものなのだ。
 私の手元に来る陳情書が目に見えて減っていく。
 一息つけるかもしれない。一時は不作とされた予想が覆った。

 ありがとう、ハル。この世界に来てくれてありがとう。

 私はあなたを大切にする。絶対に。

 楽しみにしていたデートで、神子殿の不遇を知った。食事を満足に与えられなかった?だから背が伸びなかったのではないだろうか?仕事に追い立てられてたら体調も崩れて不摂生になるのは当然だ。
 でも神子殿は周りの人間を悪く言わない。自分が悪かったと思うような人柄なのだろう。愛しくて胸が痛くなる。愛しく思えて言葉が口をついた。

 口付けは拒まれなかった。考えてくれると言ってくれた。今はそれでいいのだ。

 夕日に染まる庭園は綺麗で、世界に二人だけのようなそんな気がした。言葉は少なくても、見ている風景は同じで、心がそっと寄り添うような、そんな不思議な時間だった。

 夕食を一緒にとって、神子殿の所作が綺麗なことに気がついた。穏やかで音がしない。皿の上の食べ方も綺麗だった。好ましく思えてつい、神子殿を見てしまった。何故か、側仕えの少年から圧を感じたが気にしなかった。
 お風呂を一緒に入ってもらえるように強請ったら、許してもらえた。

 はっきり言おう、我慢できなかった。

 手で彼を洗って膝に乗せて堪能してしまった。どこもかしこもすべすべで柔らかい。可愛い神子殿は、“こんなふうに一緒にお風呂に入った人はいない”と言ってくれた。
 神子殿の初めては私がすべて独占したい。そう漏らしたら神子殿の返事は好意的なものだった。

「…いいよ。テオになら。そんな奇特な人、これから現れるかわかんないしね。」

 こんなふうに言われて暴走しない男がいたら私は尊敬する。唇を貪って、可愛い胸の飾りを弄った。どこもかしこも敏感で、可愛い彼の象徴はあっという間に達してしまった。
 お湯の中での行為で彼はのぼせてしまって、続きは寝室でするつもりで浴室を出た。

 それからの彼はもう可愛くて夢のような一夜を過ごした。
 あれほど気持ち悪くて忌避した行為が彼となら甘美な行為に変わった。早く一つになりたくて仕方がなかった。だが慣れていないというか初めてな彼のそこは私を受け入れるには難しくてしばらくは慣らしていくほかはない。

 それに気がかりなこともある。儀式は魔力を交換する。お互いの魔力がお互いの身体で混じり合い同化する。それには相手に魔力を注がなければならない。いや、注いでしまう。注がれるそれは快感となって、お互いを煽る。私が理性を飛ばしてしまったら、(いや多分飛ぶ)神子殿の許容量を超えてしまったら神子殿が危うくなってしまう。
 だから慣らしていく。私が理性を飛ばしてしまっても問題ないように。

 ゆっくりと二人で慣れていけばいい。時間はあるのだから。


 執務室に顔を出すと宰相がやってきた。

「お前、鼻の下が伸びてるぞ。」
 いきなり失礼な奴だ。
「少し関係が進んだからかな。上手くやっていけそうだ。」

 そういうと彼は片眉をあげて肩を竦めた。
「ほお、お前を受け止める器量は凄いな。お披露目を楽しみにするか。なんせ500年ぶりの降臨だからな。」
 神子殿を見せたくはないんだがな。減る。
 ああ、今日は謁見があったな、面倒な。視察予定もあるのか、神殿行くのが夜中になるんじゃないか?

「……い…」
 くっそ、書類を早く片付けよう。ああ、まだ神子殿の御業と思われる現象の報告だ。
「…おい!」
 揺さぶられてハッとした。顔をあげたらまだ宰相がいた。

「なんだ、手伝わないんだったら戻って仕事をしたらどうだ?」
 あ、ひきつった顔をした。
「…くれぐれも無茶はするなよ?」
 大人しく出て行った。毎度思うが邪魔しにくるくらいだったら手伝え。というか優秀な補佐官を雇いたい。

「お久しぶりです。陛下。」
 神官長の部屋で出迎えてくれた神官長は、手ずからお茶を用意して私をもてなした。

「いえ、その後、ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。猊下には今後の神子殿の公事に関して擦り合わせを行いたくお願いに参った次第ですが…このまま秘匿でもいいかと思っているのですが、いかがでしょう?」
 好々爺たる神官長の眉がわずかに寄った。

「その、お気持ちはわかりますが神子殿がこちらの世界に馴染めばいずれは関わることですので、神子殿が心安くお勤めを果たされるよう配慮したいと思っておりますが…。」
 あ、だめか。誰にも見せたくないんだが、仕方ない。極力身体を隠すような衣装を着てもらおう。見せたくないからな。
「何分かの御方は世界を超えていらした方。お身体がこちらの世界に馴染んではいらっしゃらない。安定してからでよろしいと思います。もともと魔力がない世界にいらした方なので魔力を持っていらっしゃらない。いまは神の御力と加護によって魔力の代わりにしているようですが、それが落ち着いてからになりますでしょうな。」
 私は驚愕した。それでは儀式は彼にとって負担ではないのだろうか。

「陛下、ゆっくりと魔力を与えてあげてください。それがあの御方のためになります。あの御方の選んだ伴侶にしかできないことです。あの御方は陛下を受け入れているようです。陛下にしかできないのです。あの御方をどうか、この世界に馴染ませてください。」
 頭を垂れて私に懇願する神官長に私は頷くしかなかった。その後、大まかな計画を話し合った後、私は神官長の部屋からお暇をした。

 夜遅く、神子殿の部屋を訪れた。神子殿は恥ずかしそうにしながらも私が来るのを待っていた。
「ハル、寝ていてくれてもかまわなかったのだが…眠いだろう?」
 神子殿ははにかんだ顔のまま首を横に振った。

「俺が待っていたかっただけだからいいんだよ…」
 抱きしめてしまったのは仕方ないことだろう。そのまま寝台にもつれ込んだ。
「テオ、その、疲れてるだろう?無理はしなくていいよ?…テオの仕事、俺にも手伝えたらいいのにな…。」
 そっと神子殿は背を撫でてくれた。癒される。何だろう、可愛くて癒される。天使だ。チュッと唇にキスを落とす。

「ありがとう。仕事か。ハルにもいずれ手伝ってもらう仕事はいっぱいある。その内お願いしたいな。…たしかに疲れてはいるがハルの顔を見たのとといたわりの言葉で、疲れは吹っ飛んだ。…抱いてもいいだろうか?」
 だめだ。理性が吹っ飛びそうだ。恥ずかしそうに真っ赤になった神子殿の顔は究極に可愛い。興奮した股間を彼の股間へと押し付けた。ピクリと彼の股間が反応する。可愛い。

「…ん…テオ、…も、もちろん…いいよ?」
 恥ずかしそうにうなずく彼に口付けをして、ゆっくりと魔力を流していく。
 今は意識をしてコントロールしている。私の魔力量は膨大で下手に放出すればそれだけで災害になるほどなのだ。彼の身体から力が抜けてとろんとした顔になる。身体の芯が熱くなった。

「ん、キス、好き…」
 ぼうっとした様子でぼそっと洩らされた言葉に嬉しくなる。すぐにお互い裸になって、あますところなくキスを落とす。股間にキスをしたら彼は涙目で恥ずかしがった。彼の肌に赤い所有印を刻んでいく行為に私は自身の独占欲を強く感じた。

 彼の胸の飾りを吸い上げると彼の股間の可愛らしい象徴がピクリと跳ねて蜜を零す。後孔を潤滑剤で解していく。狭いそこがゆっくりとうねって指を締め付けるのに、雄が昂るのを止められない。指からも少しづつ、内部に魔力を流すと、彼は震えて象徴を昂らせた。

 内部の敏感な場所を刺激するとあっけなく果ててしまった。息を乱して力なくベッドに寝そべる彼はとても色っぽい。

 この日も、彼とはまた素股で愛しあって、後孔を少し慣らした。彼の気持ちと身体の準備が終わるまで、繋がるのはお預けだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。

みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。 事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。 婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。 いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに? 速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす! てんやわんやな未来や、いかに!? 明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪ ※同タイトルの簡易版を「小説家になろう」様でも掲載しています。

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

処理中です...