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古池悠久
お試し期間
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翌日、朝からため息をついていた俺を、ツォーはかなり心配していた。勉強にも身が入らないのを見て、そっと溜息をついた。
「会いたくないのでしたら会うのを断っていいんですよ?」
そう図星を突かれて、俺は動揺する。
「あーでも、いずれ会うんだから、さっさと嫌なことは済ませておきたいというか…まあ、俺はちょっと対人スキルが低いからいろいろやらかすかもしれないけど、ツォ―に迷惑かけるかもしれないけど…頑張ってみるから。」
そう告げるとツォーは涙ぐんだ目をして俺を見た。
え!??
なんでそこで涙目に!?
「ハルヒサ様はずばらしい方です。王が失礼を少しでも働いたらすぐ追い出しますから安心してください。」
にっこりと、底冷えのする笑顔で請け負ってくれたのだった。
…ツォーって王様に敬意払ってないよな…
「神子殿、お会いしとうございました。」
部屋に入って膝をついて礼をする。
「あ、あの…よくいらっしゃいました、どうぞ、席へ…」
俺は慌てて椅子を勧める。王様って最上位の人じゃないか。神子ってそんなに偉いのか?
俺は神子である実感は全然ないのだけど。
にこりと王様は微笑んで席についた。ツォーは香り高い紅茶を淹れてくれて、俺の後ろに下がった。
「神子殿は事情を一通り、お聞きになられましたか?」
一口お互いに紅茶を飲むと、王様が話し始めた。
「はい。あの、王様。俺に敬語は要りません。俺もかしこまったしゃべり方は苦手なので、許して下さい。」
俺がそう言うと、王様は嬉しそうな顔をして頷いた。
「では、テオ、と呼んで欲しい。神子殿、出来れば神子殿のお名前を教えてほしい。」
あれ?名乗ってなかったのか。
「ハルヒサです。その、俺は神子にふさわしくないと思うんですが、神子ってチェンジできたりしませんよね?」
「ちぇ?…」
王様の顔が豆鉄砲食らった鳩、みたいになった。チェンジの意味がわからなそうなので説明する。
「神子様、神子様のほかに神子様はいません。清浄な聖気が神子様から溢れています。貴方様以外、神子たりえません。」
後ろからツォ―が俺に諭すように言ってくる。
「ハルヒサ殿、貴方が来てからは、天変地異はなりを潜め、穏やかになってきた。魔物の出現も減ってきていると聞いている。貴方が神子である証拠なんだ。」
そう言えば神子がいるだけでこの世界は安定するって聞いたな。
俺は息を長く吐き出した。
「わかった。なら俺は神子なんだね。王様、俺が伴侶でいいのかな?」
ああ、卑屈だ。断われよ、っていう気持ちが言葉に滲んで、とげがある口調になっている。
「もちろん。ハルヒサ殿が神子殿でよかったと思っている。すぐにでも一緒に暮らしたいくらいだ。」
身体をこちらに乗り出してきた。王様、本気なの?このおっさん相手に、俺より若そうな王様が、俺を伴侶にしたいの?本当に?
「陛下。性急すぎます。」
ツォ―が怖い。
「…じゃあ、お試し期間ということで、王様、ここへ通ってくるかい?」
俺はなぜだか、思っていたことと別の事を言ってしまった。
「「は??」」
王様とツォ―の声が重なった。
王様がスキップをするように帰ってからツォ―が目を吊り上げて怒った。
「ハルヒサ様、まさか寝所に招き入れるとか、しませんよね?」
こわい。後ろに般若が見える。
「だ、だって、先送りしても仕方ないでしょう?王様が、決めればいいよ。俺は、受け入れるから。こんな俺でも、伴侶にしたいんだったらさ。」
まあ、知識だけはある。あるんだけど、あれ?もしかして大勢の前でしなきゃいけないとか、ないよな?そうだ、立場聞いてなかった。
「ハルヒサ様…こんなとかおっしゃらないでください。嫌なことはしなくていいといったではありませんか。」
懇願するようにツォ―が俺を見る。
「ツォ―は優しいね。うん。嫌なことかどうか、知りたいんだよ。俺経験ないしさ。」
言った途端、恥ずかしくなって赤くなった。うわー顔がほてる。デブのおっさんの赤面て誰得なんだよ。
「ハルヒサ様…出来るだけ、補助いたしますので、一応これを。」
ツォ―が俺に小瓶を渡してきた。
「潤滑剤です。王は突っ走りそうなので、突きつけてください。怪我だけは、しないようにお願いします。」
肩が震えている。凄く怒ってる!!
「ハルヒサ様は素晴らしい方です。私はそう思っています。ご自分を必要以上に卑下なさりませんように。」
それからゆったりと時間を過ごして、食事を済ませてお風呂もゆったりと入って、ツォ―に手入れしてもらって、もうそろそろ寝る時間、という頃に王様がやってきた。
「ハルヒサ殿、遅くなって申し訳ない。」
王様は昼間見た時より、略式の衣装を着ていた。重ね着なしの恰好だった。
「いいえ。お疲れでしょう。お風呂に入りますか?」
王様は頷いて俺を見た。なんとなく昼間見た時より視線が熱を帯びている気がする。
「こちらへ。」
ツォ―が浴室へ案内しようとした。
「あの、出来れば案内は、ハルヒサ殿にお願いしたいのだが。」
ツォ―の表情を見ることができなかった。
「わかった。こっちへどうぞ。」
浴室に案内して寝室に帰ろうとした。その手を掴まれる。
「王様?」
引き寄せられて後ろから抱きしめられた。なに、これ?
「ハルヒサ殿。出来れば一緒に入りたいのだが。」
耳元で囁かれて顔に朱が昇る。なんだこれー!!おっさんにはハードル高いんですが!!
男なんだよ、俺!!
「あ、あの、俺もう入っちゃったんで、次の機会にお願いします。」
上からのぞいたら髪が薄いのばれるじゃないか。あ、覗かなくてもハゲだけどさ。
「しかたない。明日は一緒に入って欲しい。」
離されると俺はひきつった笑顔を返した。
「善処します。」
速攻でリビングに戻った。
「ハルヒサ様。こちらにご用意いたしました。」
ツォ―がリビングのローテーブルを示す。俺が頼んで用意してもらった晩酌セットだ。この世界のお酒はやっぱり葡萄酒がほとんどだという。それを何本かと、俺用にはジュース。軽いおつまみを何品か。
「ありがとう。もう下がっていいよ。」
心配そうに俺を見るツォ―ににっこり笑う。
「大丈夫だよ。いざとなったら逃げるし、ツォ―を呼ぶよ。」
はーっと息を吐きだして頷いたツォ―はわかりました、と言って下がっていった。
あ、王様、一人で放置したけど、まさか一人でお風呂入れないとかじゃないよね。
そう思って本を読みながら待っていると1時間くらいで王様が現れた。
さっぱりした様子で、あったまったせいか肌が色づいていた。用意された寝巻を着て微笑みながら現れた。
「初めてこちらの浴室を使ったけれど、なかなかいいお風呂だった。薬湯だとは思わなかったよ。」
俺はにっこりと笑った。
「それはよかった。王様、一杯どうぞ。」
俺はワイングラスにワインを注いだ。用意していたジュースのグラスを掲げる。
「俺の国では乾杯という習慣があるのですが、こちらでは?」
王様はグラスの枝を持って掲げて見せた。
「もちろんあるよ。ハルヒサ殿の降臨を祝って。」
「え?」
グラスを近づけて王様はワインを呷った。
「ハルヒサ殿。私の事はテオと、呼んで欲しい。」
強請るような目で俺を見る。なんだか、ドキドキしてきた。男でも美形の破壊力ったらない。
「…テオ、様。」
呼ぶと嬉しそうに微笑んだ。凄く優しそうで、演技してるとは思えない。俺は本当に歓迎されているのか?
「ハルヒサ殿、様はいらない。」
うわー、なんだこれー!!俺場違いな気がするよ。
「では、俺の事もハル、と呼んで欲しい。」
「ハル、ハルか。うん。嬉しいよ、ハル。」
ちゅっとこめかみにキスをされた。横並びにソファーに座ってしまったのは間違いだったのか。俺は真っ赤になった。
「可愛いね。ハル…」
顔を覗き込むようにされて、俺はますます赤くなった。王様、超美形なのにこんなに至近距離で見るのは初めてなんだって。し、心臓が…。
そっと頬に置かれた手が俺を上向かせる。ますます顔が近付いて、唇が重なった。
うええ!???
「ッ…」
そっと触れあって、チュッとリップ音がした。少し角度を変えられて、また吸い上げられる。
段々深く、唇が重なり合って、吸い上げる強さも増していく。王様の舌先が俺の唇の合わせ目をなぞる。
くすぐったさに思わず口が開くと舌が入ってきた。そろりと上あごを撫でられて、吸い上げられる。俺の舌を見つけると擦り合わせてきた。舌の根元から裏側を舐めあげるようにされて、ざらつく表面を擦り合わせてくる。
俺はパニックを起こしていた。
(な、なに、俺キスされてる!?ディープな奴!!!)
さんざん王様に貪られて俺は腰を抜かしてぐったりしてしまった。
「ハル…」
唇を微かに触れ合わせたまま、俺を愛しげに呼ぶ声音が甘かった。ぞくりと背筋が震えた。
「…あ。…ま、待って…その、待って。」
やっと息が整って、王様をそっと手でおしやった。
「…こ、ここまでに。お願い。」
やっと涙目で訴えてみたら、しゅんとした顔で引いてくれた。ちょっと胸が痛んだ。
「もう少しお酒飲んだら寝ましょう?その、明日は少し庭の散策に付き合って欲しいかな。王様としてのお仕事が忙しいと思うけど。」
しゅんとした顔から喜色満面の顔になる。その落差がおかしくて笑みが出た。
何で俺のような男の言葉一つで一喜一憂しているんだろうか。犬のような反応でクールなイケメンなのに、可愛いと思えた。
その後は少しつまんでお酒を二杯ほど飲んだ王様を、ベッドに連れ込んで、一緒に寝た。
…ベッドが一つしかないから仕方なかった。
寝る時に額にお休みのキスをされて抱え込まれたほかは何もなくて…待て、ちょっと待て。なんだかおかしい気がするが、とりあえずスルーだ。ともかくその後はちゃんと寝た。
寝たんだよ。
「会いたくないのでしたら会うのを断っていいんですよ?」
そう図星を突かれて、俺は動揺する。
「あーでも、いずれ会うんだから、さっさと嫌なことは済ませておきたいというか…まあ、俺はちょっと対人スキルが低いからいろいろやらかすかもしれないけど、ツォ―に迷惑かけるかもしれないけど…頑張ってみるから。」
そう告げるとツォーは涙ぐんだ目をして俺を見た。
え!??
なんでそこで涙目に!?
「ハルヒサ様はずばらしい方です。王が失礼を少しでも働いたらすぐ追い出しますから安心してください。」
にっこりと、底冷えのする笑顔で請け負ってくれたのだった。
…ツォーって王様に敬意払ってないよな…
「神子殿、お会いしとうございました。」
部屋に入って膝をついて礼をする。
「あ、あの…よくいらっしゃいました、どうぞ、席へ…」
俺は慌てて椅子を勧める。王様って最上位の人じゃないか。神子ってそんなに偉いのか?
俺は神子である実感は全然ないのだけど。
にこりと王様は微笑んで席についた。ツォーは香り高い紅茶を淹れてくれて、俺の後ろに下がった。
「神子殿は事情を一通り、お聞きになられましたか?」
一口お互いに紅茶を飲むと、王様が話し始めた。
「はい。あの、王様。俺に敬語は要りません。俺もかしこまったしゃべり方は苦手なので、許して下さい。」
俺がそう言うと、王様は嬉しそうな顔をして頷いた。
「では、テオ、と呼んで欲しい。神子殿、出来れば神子殿のお名前を教えてほしい。」
あれ?名乗ってなかったのか。
「ハルヒサです。その、俺は神子にふさわしくないと思うんですが、神子ってチェンジできたりしませんよね?」
「ちぇ?…」
王様の顔が豆鉄砲食らった鳩、みたいになった。チェンジの意味がわからなそうなので説明する。
「神子様、神子様のほかに神子様はいません。清浄な聖気が神子様から溢れています。貴方様以外、神子たりえません。」
後ろからツォ―が俺に諭すように言ってくる。
「ハルヒサ殿、貴方が来てからは、天変地異はなりを潜め、穏やかになってきた。魔物の出現も減ってきていると聞いている。貴方が神子である証拠なんだ。」
そう言えば神子がいるだけでこの世界は安定するって聞いたな。
俺は息を長く吐き出した。
「わかった。なら俺は神子なんだね。王様、俺が伴侶でいいのかな?」
ああ、卑屈だ。断われよ、っていう気持ちが言葉に滲んで、とげがある口調になっている。
「もちろん。ハルヒサ殿が神子殿でよかったと思っている。すぐにでも一緒に暮らしたいくらいだ。」
身体をこちらに乗り出してきた。王様、本気なの?このおっさん相手に、俺より若そうな王様が、俺を伴侶にしたいの?本当に?
「陛下。性急すぎます。」
ツォ―が怖い。
「…じゃあ、お試し期間ということで、王様、ここへ通ってくるかい?」
俺はなぜだか、思っていたことと別の事を言ってしまった。
「「は??」」
王様とツォ―の声が重なった。
王様がスキップをするように帰ってからツォ―が目を吊り上げて怒った。
「ハルヒサ様、まさか寝所に招き入れるとか、しませんよね?」
こわい。後ろに般若が見える。
「だ、だって、先送りしても仕方ないでしょう?王様が、決めればいいよ。俺は、受け入れるから。こんな俺でも、伴侶にしたいんだったらさ。」
まあ、知識だけはある。あるんだけど、あれ?もしかして大勢の前でしなきゃいけないとか、ないよな?そうだ、立場聞いてなかった。
「ハルヒサ様…こんなとかおっしゃらないでください。嫌なことはしなくていいといったではありませんか。」
懇願するようにツォ―が俺を見る。
「ツォ―は優しいね。うん。嫌なことかどうか、知りたいんだよ。俺経験ないしさ。」
言った途端、恥ずかしくなって赤くなった。うわー顔がほてる。デブのおっさんの赤面て誰得なんだよ。
「ハルヒサ様…出来るだけ、補助いたしますので、一応これを。」
ツォ―が俺に小瓶を渡してきた。
「潤滑剤です。王は突っ走りそうなので、突きつけてください。怪我だけは、しないようにお願いします。」
肩が震えている。凄く怒ってる!!
「ハルヒサ様は素晴らしい方です。私はそう思っています。ご自分を必要以上に卑下なさりませんように。」
それからゆったりと時間を過ごして、食事を済ませてお風呂もゆったりと入って、ツォ―に手入れしてもらって、もうそろそろ寝る時間、という頃に王様がやってきた。
「ハルヒサ殿、遅くなって申し訳ない。」
王様は昼間見た時より、略式の衣装を着ていた。重ね着なしの恰好だった。
「いいえ。お疲れでしょう。お風呂に入りますか?」
王様は頷いて俺を見た。なんとなく昼間見た時より視線が熱を帯びている気がする。
「こちらへ。」
ツォ―が浴室へ案内しようとした。
「あの、出来れば案内は、ハルヒサ殿にお願いしたいのだが。」
ツォ―の表情を見ることができなかった。
「わかった。こっちへどうぞ。」
浴室に案内して寝室に帰ろうとした。その手を掴まれる。
「王様?」
引き寄せられて後ろから抱きしめられた。なに、これ?
「ハルヒサ殿。出来れば一緒に入りたいのだが。」
耳元で囁かれて顔に朱が昇る。なんだこれー!!おっさんにはハードル高いんですが!!
男なんだよ、俺!!
「あ、あの、俺もう入っちゃったんで、次の機会にお願いします。」
上からのぞいたら髪が薄いのばれるじゃないか。あ、覗かなくてもハゲだけどさ。
「しかたない。明日は一緒に入って欲しい。」
離されると俺はひきつった笑顔を返した。
「善処します。」
速攻でリビングに戻った。
「ハルヒサ様。こちらにご用意いたしました。」
ツォ―がリビングのローテーブルを示す。俺が頼んで用意してもらった晩酌セットだ。この世界のお酒はやっぱり葡萄酒がほとんどだという。それを何本かと、俺用にはジュース。軽いおつまみを何品か。
「ありがとう。もう下がっていいよ。」
心配そうに俺を見るツォ―ににっこり笑う。
「大丈夫だよ。いざとなったら逃げるし、ツォ―を呼ぶよ。」
はーっと息を吐きだして頷いたツォ―はわかりました、と言って下がっていった。
あ、王様、一人で放置したけど、まさか一人でお風呂入れないとかじゃないよね。
そう思って本を読みながら待っていると1時間くらいで王様が現れた。
さっぱりした様子で、あったまったせいか肌が色づいていた。用意された寝巻を着て微笑みながら現れた。
「初めてこちらの浴室を使ったけれど、なかなかいいお風呂だった。薬湯だとは思わなかったよ。」
俺はにっこりと笑った。
「それはよかった。王様、一杯どうぞ。」
俺はワイングラスにワインを注いだ。用意していたジュースのグラスを掲げる。
「俺の国では乾杯という習慣があるのですが、こちらでは?」
王様はグラスの枝を持って掲げて見せた。
「もちろんあるよ。ハルヒサ殿の降臨を祝って。」
「え?」
グラスを近づけて王様はワインを呷った。
「ハルヒサ殿。私の事はテオと、呼んで欲しい。」
強請るような目で俺を見る。なんだか、ドキドキしてきた。男でも美形の破壊力ったらない。
「…テオ、様。」
呼ぶと嬉しそうに微笑んだ。凄く優しそうで、演技してるとは思えない。俺は本当に歓迎されているのか?
「ハルヒサ殿、様はいらない。」
うわー、なんだこれー!!俺場違いな気がするよ。
「では、俺の事もハル、と呼んで欲しい。」
「ハル、ハルか。うん。嬉しいよ、ハル。」
ちゅっとこめかみにキスをされた。横並びにソファーに座ってしまったのは間違いだったのか。俺は真っ赤になった。
「可愛いね。ハル…」
顔を覗き込むようにされて、俺はますます赤くなった。王様、超美形なのにこんなに至近距離で見るのは初めてなんだって。し、心臓が…。
そっと頬に置かれた手が俺を上向かせる。ますます顔が近付いて、唇が重なった。
うええ!???
「ッ…」
そっと触れあって、チュッとリップ音がした。少し角度を変えられて、また吸い上げられる。
段々深く、唇が重なり合って、吸い上げる強さも増していく。王様の舌先が俺の唇の合わせ目をなぞる。
くすぐったさに思わず口が開くと舌が入ってきた。そろりと上あごを撫でられて、吸い上げられる。俺の舌を見つけると擦り合わせてきた。舌の根元から裏側を舐めあげるようにされて、ざらつく表面を擦り合わせてくる。
俺はパニックを起こしていた。
(な、なに、俺キスされてる!?ディープな奴!!!)
さんざん王様に貪られて俺は腰を抜かしてぐったりしてしまった。
「ハル…」
唇を微かに触れ合わせたまま、俺を愛しげに呼ぶ声音が甘かった。ぞくりと背筋が震えた。
「…あ。…ま、待って…その、待って。」
やっと息が整って、王様をそっと手でおしやった。
「…こ、ここまでに。お願い。」
やっと涙目で訴えてみたら、しゅんとした顔で引いてくれた。ちょっと胸が痛んだ。
「もう少しお酒飲んだら寝ましょう?その、明日は少し庭の散策に付き合って欲しいかな。王様としてのお仕事が忙しいと思うけど。」
しゅんとした顔から喜色満面の顔になる。その落差がおかしくて笑みが出た。
何で俺のような男の言葉一つで一喜一憂しているんだろうか。犬のような反応でクールなイケメンなのに、可愛いと思えた。
その後は少しつまんでお酒を二杯ほど飲んだ王様を、ベッドに連れ込んで、一緒に寝た。
…ベッドが一つしかないから仕方なかった。
寝る時に額にお休みのキスをされて抱え込まれたほかは何もなくて…待て、ちょっと待て。なんだかおかしい気がするが、とりあえずスルーだ。ともかくその後はちゃんと寝た。
寝たんだよ。
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