蒼銀の竜騎士

佐倉真稀

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終章

結婚と休暇※

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「ジェスロン兄上に、気を付けたほうがいいかもしれない。本陣にいた時にじっと君を睨んでいたからね。」


 兄が警告をしてきた日以降、大量に手紙が来るようになった。
 ほとんどは、ハディーに転送し、処理をしてもらっている。どうしても私が直接処理をしなければならない案件のみ、ドナートと二人で処理している。ハディーには結婚する旨を伝えた。
 もっと早く結婚するかと思っていたと言われて、バレバレだったんだと思った。
 竜騎士団の兵舎に一度戻って褒章を済ませ、新しい相棒を選んだ。プルシェの子供が産んだ卵だ。それを育てつつ、自分のお腹の卵を健やかに育てなければならない。
 湖は私の領地になった。とはいえ、税として渡せるものはない。仕方ないので、10年分は今までの騎士団でもらっていた給金から出した。
 建てた屋敷は小屋に近いものだったが、中は豪華だった。何せ、お風呂がある。
 大魔導士は私の作ったマジックバッグ一つと引き換えに、作ってくれたのだった。
 その隣に竜舎を作り、そこに孵った竜を住まわせるつもりだ。
 ドナートは、側仕えなんだから一緒に当然休暇を取れるものだと思っていたらしいが、そうはいかなかった。転移魔法陣を作ってもらって団長室に転移して毎日通っている。
 私も一緒に転移しているが、団員には内緒にしている。訓練や竜の世話などの時はドナートは一人で出ていくが、書類仕事は、一緒に処理をした。
 ウェザル兄の就任はいろいろあって半年後だという。早く竜に乗りたいという手紙が来ていた。

 ドナートに卵がいるかもしれないと告げた時はしばらく固まってて、そのあと大魔導士に連絡を取った。秘密にしたいからと言うと、大魔導士は薬師と医師の資格を持っていると言われて診察を受けた。ちらっと見るだけだったけれど、魔力が4つ混在していてお腹に二つあると言われた。
 双子、というのはそういうことだったのか、と腑に落ちた。

「師匠が、卵が中にいるときはできる限り魔力を注げって言っていた。」
 ドナートが必死な顔で言ってきた。
「ん?激しいのはダメじゃないのか?」
 首を傾げるとさらに迫ってきた。
「卵室が守るから大丈夫だって。もちろんお腹に物がぶつかったりしたら危ないけど、したほうがいいらしい。」
「それって……んっ……」
 キスで唇を塞がれた。
 性交を推奨するとか。もう、大魔導士はなにをドナートに教えているのか。
 ドナートの魔力が入ってきて気持ちがいい。

「子作り。というかしたい。毎日したい。」
 それ、多分卵とかなくてもそういう気持ちなんじゃないか?
「馬鹿。死ぬ。」
「死ぬわけないだろう。大切にしてるんだから。」
 間近で言われて顔が熱い。
「……ドナート。」
「なんだ、クエン。」
「ドナートは時々、僕を恥ずかしくて仕方ない気持ちにさせる。」
「恥ずかしい?」
「い、いい。そこ追及するな。」
 そう言っている間、ドナートは私を脱がせてしまっている。手はあちこち悪戯して、図らずも、体温が上がった。

「……あ……」
 ドナート触れていくところから魔力がうちに入ってくる。それは快感を呼んで、身の内を回る。奥がじんじんと熱くなって、中が濡れた。前も起き上がって、蜜を零している。
「もう、すぐ、欲しい、ドナート……」
 涙目で見上げると喉を鳴らす音がして、性急に足を抱えあげられて、中にドナートの大きい昂ぶりが入ってきた。ぐっと奥まで突きあげられて思わず仰け反る。
「あ、ああっ……」
 中がいっぱいになって、凄く気持ちいい。もっとかき回してほしくなって腰を揺らした。

「……ッ……クエン、気持ちよすぎる……千切られそうだ……」
「そんな、わけない……あん……あっ……もっと、奥……」
「奥だな……ッ……」
 ガンッと奥を抉られるような衝撃が来た。気持ちよすぎて目の前がちかちかした。激しく揺さぶられて意識が飛びそうになる。

「あ、イく……イくっ……あッ……あっ…ああああーーー……」
 きゅうっと締め付けると、奥に大量に熱いモノが吐き出される。魔力が奥へと注がれて、そこが熱くなって、激流のような魔力が私の身体を駆け巡り、過ぎた快感に意識を飛ばしてしまった。

 私たちの魔力の相性が良すぎて、余計に快感を拾うらしい。卵がすぐできたのもそのせいだと後から大魔導士に聞いた。

 少し落ち着いたころに、星が綺麗な夜に、湖のほとりにドナートが散歩をしようと言ってきた。手を繋いで星が映る湖面を見ていた。繋ぐ手に力が入って、顔を見あげた。
「クエン。愛してる。大切に大切にする。お腹の子も。だから、結婚式を挙げよう。師匠たちみたいに二人で。」
「ドナート……」
 私の指に指輪がはめられる。ドナートの瞳の色の緑の石が付いた指輪。
「師匠の故国では婚約の印に指輪を贈るんだとか。だからこれは婚約の印。結婚の印の指輪も、式を上げたら交換しよう。」
 ドナートはいつの間にやらいろいろと準備していたみたいだった。褒美がもらえるかわからなかったのに。それが一番嬉しい。
「嬉しい。ドナート、そうしよう。」
 嬉しそうなドナートの唇が降りてきて、私たちは長い間、抱き合っていた。
 後にアクアにからかわれた。

 王族が結婚するときは貴族を招いて盛大にするが、今回の私たちの結婚式はしないでいいと希望したのだ。戦争が終わったばかりで、賠償金はあれど、焼かれた村々の再生にお金がかかる。
 戦争で失った命は帰らないし、孤児もいる。だから、お金はかけたくないとそう言ったのだ。
 ドナートは、二人でと言ってくれて。
 そして教会でそっと式を挙げた。
 勇者と魔導士が挙げた教会で。見届け人はその二人。

「二人はともに歩むことを誓いますか?」
「誓います。」
「誓います。」

 あの時、見ていた私たちが今度は誓いの言葉を口にする。
 あの時もらった花束はもうないけれど、ジンクスは本当だった。

「師匠、ありがとうございます。あの時もらった花束のおかげかもしれません。」
「ああ、あれね。うん。それならよかった。おめでとう。」
 勇者は嬉しそうに笑った。

 二人はお祝いパーティーをしてくれて、出席者にハディーとミハーラが来てくれた。
 そこで、ハディーに卵のことを話すと大喜びしてくれた。
 そして皆で話し合った結果。
 卵が孵って一年くらいまでは勇者の屋敷で生活することになった。
 湖の屋敷にはだれもいないから、いざという時、困るからだ。
 ドナートは昼間、竜騎士団の仕事をするし、子供がある程度大きくなるまで子供ができたことを知られたくなかった。王にもだ。

 それからしばらくは国は安定していて、帝国も大人しい。騎士団が活躍するのは魔物対策ばかりで、平和だった。

 ただ、王の体調が、陰りを見せ始めていた。
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