蒼銀の竜騎士

佐倉真稀

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戦争

発情期※

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 目が覚めた時、見慣れた部屋だ、とそう思った。

「クエン、目が覚めたか?」
 ドナート、ドナートだ。どくり、と脈打つ。
 発情期は初めてだが、本能でわかる。子種が欲しい。下半身の奥、卵室があるだろうところが、熱い。
「ドナート、戦争、は……」
 声が掠れた。喉が渇いている。
「竜騎士団はいったん下がって、休んでいる。代わりに師匠が前線に出た。」
 大魔導士が? 戦争には加担しないと、そう言ってなかったか?
「どう、して?」
「俺達に時間をくれた。王と掛け合ってクエンが怪我をしたから、復帰までに時間がかかるとそう言って、自分が代わりに抑えると言ってくれた。もちろん勝利も約束しなかった。俺達と竜騎士団が復帰するまで、負けも、勝利もしない程度に抑えてくれると言った。」
 私に水を飲ませてくれながら、ドナートは私をベッドの背もたれに寄りかかれるように、起こしてくれた。

「クエン、愛してる。」
 ドキリと、鼓動が跳ねる。

「ドナート……」
 強い瞳に貫かれるように感じながらその視線を見つめ返した。

「クエンが、死ぬようなことになってはいけないからと思って、言えなかった。でもそうじゃない。俺に覚悟が足りなかっただけだ。クエンが落下する姿を見て、死はすぐそばにあることを痛感した。師匠はいざとなったら、自分の祖国に来ればいいと、そう言ってくれた。だからクエン、俺と、添い遂げて欲しい。伴侶になってくれ、クエン。」
「ドナート……ドナート、ドナート……」
 嬉しくて、涙が出た。抱きしめられる。ふわっと、ドナートの匂いに包まれた。大好きな、ドナートの匂い。
「僕も、好き。ずっとずっと好きで、フィメルになりたかったくらい、好き。ドナートの伴侶になりたい。もうずっと前からそう思っていたけど、僕は王子で、立場も微妙だ。だから、諦めないとと、思ってた。覚悟が足りなかったのは僕だ。全部を捨てても、ドナートを選ぶ。いざとなったら僕と逃げてくれるのか? ドナート。」
 ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「もちろん。駆け落ちしよう。」
 思わず笑ってしまった。だからお互い言えなかった。責任を放り出して、国を捨てでも、お互いを選んでしまうから。
「愛してる、ドナート。僕を伴侶にして……」
 唇が降りてくる。浄化の魔法がかけられて、ドナートはそのまま、私に覆いかぶさった。

 お互いに服をもどかしそうに脱ぎ去って、貪るような口付けをした。
 噛みつくような肌への口付けに、普段残さない所有痕がつけられたであろうことを知る。ドナートの魔力が吹き込まれるようなそれは、口付けされた肌を熱くさせた。

「……あん、ドナート、気持ち、イイ……」
 ドナートの口腔に包まれて敏感なところを刺激される。精通してから、何度も繰り返された口淫はたちまち私の弱いところを責め立てて、あっという間に果ててしまった。
「ん、甘い。相変わらず、クエンのは甘い。」
 浮かされるような熱に頭が支配されようとしても、ドナートの言葉は羞恥を誘った。
「もう、いつも、それ言う。」
 涙声で掠れて、抗議の言葉が舌足らずになる。
「師匠が、相手の子種が甘いなら魔力の相性は最高だな、喜べっていってたぞ。」
「なんでそういうことグレアム師匠に話すんだよ! 馬鹿ッ……あん……」
 ドナートの手が、今まで触れなかった後孔へと伸びた。

 そこは中から潤滑液が降りてきていて、もうぐじゅぐじゅに蕩けていた。指が押し込まれるとそれがとろりと流れ出す。
「あんっ……あっ……ドナートっ……欲しい、ドナート、ドナート……」
「クエン、くそ、我慢できない……挿れるぞ。」
 足を抱えあげられて腰が浮く。見上げると逞しい、ドナートの昂りが血管を浮かばせてそそり立っていた。
「うん。欲しい、ちょうだい。ドナートのおっきいの……」
 ズン、と衝撃が来て、目の前に火花が散った。中に、ドナートがいる。奥まで一気に入った。

 ああ、やっと一つになれた。

「中いっぱい、嬉しい……」
 ぽろりと涙が零れた。それをドナートが唇で吸い取ってくれた。
「ああ、やっと一つになれたな……」
 嬉しそうに微笑むドナートに私も嬉しくてキスをした。

 激しい口付けを交わしながら、ドナートが動く。
 中いっぱいの昂ぶりを、逃すまいと内壁がきゅうきゅうと締め付けた。
 雁の部分がもっとも感じる場所を刺激すると、頭の中が白くなっていく。吐き出さないまま、何度も達した。

「く……」
 ドナートが低く呻くと奥に熱いモノが叩き付けられた。それからジワリとドナートの魔力が体に染みわたっていく。
 魔力枯渇で何度もドナートの魔力を手を繋いだ状態で、注いでもらっていたけれど、それとは比べ物にならないくらいの大量の魔力。
 それが体中巡って、感じたことのない快感を呼び起こした。

「……あッ……あッ……あああーーーーッ……」

 びくびくと仰け反って、快感に震える。でも内壁は別の生き物のようにうねり、搾るように締め付けた。一滴も、零すまいとして。
「もっと、いっぱい、欲しい。奥に、いっぱい。」
 足で、ドナートの腰を挟んで、逃げられないようにする。そして腰を押し付けて揺らした。

 中でまた、ドナートが大きくなる。
「ああ、いっぱい、嫌というほど、注いでやる。」
「嬉しい。嫌だなんて言うわけない。ドナートの子種は全部僕のものだもの……」
 背中に手を回されて引き起こされる。向かい合わせにベッドの上に座った。自重で奥深くまでドナートを咥えこんだ。奥に感じるドナートに嬉しくて思わず微笑む。

「綺麗だ、クエン……」
 チュ、っと口付けされる。慈しむような優しいキス。
「ドナートくらいだ。そんなこと言うの。」
 私は真っ赤な、照れた顔をしているに違いない。有象無象がそんなことをいっても嬉しくはないが、ドナートは別だ。ドナートがそう思ってくれるとすごく嬉しい。
「言わさない。そう言っていいのは俺だけだ。こんな色っぽい顔も、俺だけのものだ。」
 ドナートの言葉に嬉しすぎて、胸が苦しくなる。
 私の身体の奥も、切なくてどくどくと脈打つ。ドナートが、欲しい。腰が自然と動いた。
「……あん……あっ……」
 冷静でいられたのはお互いここまでで、それからは本能が体を突き動かしてお互い激しく求めあった。

 何度も体位を変え、私の方は出るものはなくなった。
 ドナートはずっと勃ち上がりっぱなしになっていた。時々意識が飛んでも、目が覚めると、腰が揺らぐ。水も食べ物もとらずにそれは一週間は続いたように思う。

「……あっ……あっ……あああッ……」
 もう、何度かわからない絶頂。きゅうっと締まる内壁。大量に吐き出された子種が、卵室に注がれていく。
 どくり、と何かが脈打つ。
 ああ。
 命の音。

 私とドナートの卵ができたと感じた後、私は意識を失った。
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