2 / 30
騎士を目指して
園遊会
しおりを挟む
私には兄が4人いる。
6歳年上のジェスロン、5歳上のモーデス、3歳上のメッシーナ、3歳上のウェザレル。
ジェスロンとモーデスに私は嫌われていて、何かというといじめられていた。
子供のすることで、髪を引っ張られたり罵倒されたりくらいだが、悪意に晒されるのは気持ちのいいものではなく、最初の頃は泣いていた。
しかし、私よりもドナートのほうが悔しそうにしたり辛そうにしてた。
私がドナートにそういう表情をさせているのかと思うと、もっと苦しいので、無視する方向にした。
できる限り兄たちに会わないようにし、あまり大きな反応をしないようにした。
思った通りの反応を私から得られないと、面白くなさそうに彼らは去っていくのだった。
それでも、王族の行事や公務などは避けて通れるものではなく、彼らの取り巻きとともに私への誹謗中傷は広まっていくのだった。
『地味な髪に目の色だし、だんまりで可愛くない』
『生意気だ。』
『兄に敬意を払わない。』
聞こえよがしに囁かれる悪意。お茶会や園遊会、誕生日祝いのパーティーなどでそれは拡散された。
「あいつら、クエンのこと、よくも。」
その度に憤るのは優しい幼馴染ドナートで。
「大丈夫だから。鳥がさえずっているくらい思っておけばいい。」
私がそういうと、ドナートはくしゃりと表情を崩して、私の髪を乱す。その手が心地よくて、嬉しくなる。
「クエンは器が大きいな。俺はダメだ。あいつらは許せそうにない。」
顔を赤くして言うドナートはかわいらしくて、私はこんな幼馴染を持てて幸せだと思った。
「ドナートがそばにいればいい。有象無象の輩なんて路傍の石と同じことだ。僕にはドナートと、ハディーと、世話をしてくれる優しい彼らがいればいい。」
私は薄情だ。自分が大切なものは大切にするが、そうでないものは切り捨ててもいいと思う。無関心さが兄たちの癇に障るのだろうか?
ドナートは心が柔らかくて優しいから、傷つく。私のために傷つくのはダメだ。
だから、彼らの事は気にしなくていいんだ。
私とドナートは勇者や魔導士のようになるために、修行や勉学以外に割く時間など、ないのだから。
私たちが10歳になる頃には、勇者と大魔導士は冒険者になってパーティーを組み、あちこちで活躍していた。
勇者を引退しても、民のために魔物を狩る仕事をするなんて、なんて民思いの人たちだろう。
アルデリアの貴族社会では決まって行われる行事がある。新年を祝う行事、市民と認められる5歳の鑑定式、成人を祝う夜会、毎年行われる収穫祭にともなう狩りや園遊会。
そのうちの園遊会は、子供でも主だった貴族が参加するもので、大人は狩りへ、狩りに参加しない大人と子供たちは園遊会へと全員参加しなければならなかった。
その年の狩りは勇者と大魔導士が参加していて、かなり盛り上がっていると聞いた。
「僕も、狩りに参加できる年になっていればよかった……」
園遊会で出されるジュースを飲みながら、庭園の木陰で私とドナートはため息をついていた。
「多分、18くらいでもまだ参加はできないと思うな。」
ドナートはこくりとジュースを飲んでから顔を上げた。
あちこちに敷布を広げて話に興じている貴族たちがいた。
ここは王族の直轄地で、狩りと園遊会は毎年この別荘地で行われる。
王族の荘園と、精霊湖、狩りのできる豊穣の森。
国費で暮らしている王族ではあるが、私的な財産もあった。それがここだ。
王都に隣接する丘陵地帯。なだらかな丘と森林が、恵みをもたらし、森ではたくさんの動物が暮らしている。
魔物はあまり出ず、出たとしても定期的に騎士団が狩っていた。
特にこういった狩りが催されるときは獲物以外の危険な魔物は先に討伐されている。
15歳の成人を迎えれば、狩りにも参加できる。しかし、狩りという名の社交という場であるそれには成人したからと言っておいそれと参加できるものではなかった。
16歳と15歳の兄たちも、参加したがっていたが宥められて園遊会に参加している。
不機嫌な様子は見て取れたので、避けていたが、ドナートの視線の先に彼らがいた。
私たちに気付いて近づいてくる。
避けようとしたが、叶わなかった。
「クエンティン。暇そうにしているな。私たちに付き合え。ボート遊びをしよう……」
ジェスロンとモーデスは、側近候補の取り巻き達を引き連れて目の前に陣取った。
私たちは諦めるしかなかった。
「はい、兄上。」
------------------------------------------------------------------------------------
修正 一部分を削除しました。この後のお話で矛盾があったためです。ストーリーに
変更はありません。
6歳年上のジェスロン、5歳上のモーデス、3歳上のメッシーナ、3歳上のウェザレル。
ジェスロンとモーデスに私は嫌われていて、何かというといじめられていた。
子供のすることで、髪を引っ張られたり罵倒されたりくらいだが、悪意に晒されるのは気持ちのいいものではなく、最初の頃は泣いていた。
しかし、私よりもドナートのほうが悔しそうにしたり辛そうにしてた。
私がドナートにそういう表情をさせているのかと思うと、もっと苦しいので、無視する方向にした。
できる限り兄たちに会わないようにし、あまり大きな反応をしないようにした。
思った通りの反応を私から得られないと、面白くなさそうに彼らは去っていくのだった。
それでも、王族の行事や公務などは避けて通れるものではなく、彼らの取り巻きとともに私への誹謗中傷は広まっていくのだった。
『地味な髪に目の色だし、だんまりで可愛くない』
『生意気だ。』
『兄に敬意を払わない。』
聞こえよがしに囁かれる悪意。お茶会や園遊会、誕生日祝いのパーティーなどでそれは拡散された。
「あいつら、クエンのこと、よくも。」
その度に憤るのは優しい幼馴染ドナートで。
「大丈夫だから。鳥がさえずっているくらい思っておけばいい。」
私がそういうと、ドナートはくしゃりと表情を崩して、私の髪を乱す。その手が心地よくて、嬉しくなる。
「クエンは器が大きいな。俺はダメだ。あいつらは許せそうにない。」
顔を赤くして言うドナートはかわいらしくて、私はこんな幼馴染を持てて幸せだと思った。
「ドナートがそばにいればいい。有象無象の輩なんて路傍の石と同じことだ。僕にはドナートと、ハディーと、世話をしてくれる優しい彼らがいればいい。」
私は薄情だ。自分が大切なものは大切にするが、そうでないものは切り捨ててもいいと思う。無関心さが兄たちの癇に障るのだろうか?
ドナートは心が柔らかくて優しいから、傷つく。私のために傷つくのはダメだ。
だから、彼らの事は気にしなくていいんだ。
私とドナートは勇者や魔導士のようになるために、修行や勉学以外に割く時間など、ないのだから。
私たちが10歳になる頃には、勇者と大魔導士は冒険者になってパーティーを組み、あちこちで活躍していた。
勇者を引退しても、民のために魔物を狩る仕事をするなんて、なんて民思いの人たちだろう。
アルデリアの貴族社会では決まって行われる行事がある。新年を祝う行事、市民と認められる5歳の鑑定式、成人を祝う夜会、毎年行われる収穫祭にともなう狩りや園遊会。
そのうちの園遊会は、子供でも主だった貴族が参加するもので、大人は狩りへ、狩りに参加しない大人と子供たちは園遊会へと全員参加しなければならなかった。
その年の狩りは勇者と大魔導士が参加していて、かなり盛り上がっていると聞いた。
「僕も、狩りに参加できる年になっていればよかった……」
園遊会で出されるジュースを飲みながら、庭園の木陰で私とドナートはため息をついていた。
「多分、18くらいでもまだ参加はできないと思うな。」
ドナートはこくりとジュースを飲んでから顔を上げた。
あちこちに敷布を広げて話に興じている貴族たちがいた。
ここは王族の直轄地で、狩りと園遊会は毎年この別荘地で行われる。
王族の荘園と、精霊湖、狩りのできる豊穣の森。
国費で暮らしている王族ではあるが、私的な財産もあった。それがここだ。
王都に隣接する丘陵地帯。なだらかな丘と森林が、恵みをもたらし、森ではたくさんの動物が暮らしている。
魔物はあまり出ず、出たとしても定期的に騎士団が狩っていた。
特にこういった狩りが催されるときは獲物以外の危険な魔物は先に討伐されている。
15歳の成人を迎えれば、狩りにも参加できる。しかし、狩りという名の社交という場であるそれには成人したからと言っておいそれと参加できるものではなかった。
16歳と15歳の兄たちも、参加したがっていたが宥められて園遊会に参加している。
不機嫌な様子は見て取れたので、避けていたが、ドナートの視線の先に彼らがいた。
私たちに気付いて近づいてくる。
避けようとしたが、叶わなかった。
「クエンティン。暇そうにしているな。私たちに付き合え。ボート遊びをしよう……」
ジェスロンとモーデスは、側近候補の取り巻き達を引き連れて目の前に陣取った。
私たちは諦めるしかなかった。
「はい、兄上。」
------------------------------------------------------------------------------------
修正 一部分を削除しました。この後のお話で矛盾があったためです。ストーリーに
変更はありません。
11
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。


30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる